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アングル:悪材料続出でも株高継続、米政策の「時間差」狙う


伊賀大記

[東京 8日 ロイター] - 緊急事態宣言など悪材料が相次ぐ中でも、日本株はバブル崩壊後高値を更新し、一段と勢いを増している。原動力は、いつものように米株高だが、トランプ大統領支持者による議会占拠など米国も悪材料に事欠かない。警戒されていた「トリプルブルー」でも株高になるのは、米政策の「時間差」に強気派が焦点を当てているためだ。

<「疑似トリプルブルー」は最良の着地点か>

マーケットは、バイデン次期大米統領の民主党が議会の上下両院を制する「トリプルブルー」を警戒していた。財政拡大への期待が高まる一方、議会の「ねじれ」によって進まないとみられていた、富裕層や法人への増税、IT企業への規制強化など、株式市場が嫌う政策が実現する可能性が高まるためだ。

ジョージア州上院決選投票の結果、100議席ある上院は与野党50ずつとなった。ハリス次期副大統領が決定票を握ることになるため、「トリプルブルー」ではあるが、議席で同数という状況は、株式市場にとってポジティブだという。

ナティクシス・インベストメント・マネージャーズのポートフォリオマネージャー、Jack Janasiewicsz氏(ボストン在勤)は、50対50プラス1(共和党対民主党プラスハリス氏)は、バイデン氏の政策が何でも通るフリーパスではないと話す。

「景気刺激策を決めるには十分だが、思いのまま増税を決めるには足りない。ある意味、(適度な状態を意味する)ゴルディロックスとも言える、医師がマーケット向けに出した(最も都合の良い)処方箋かもしれない」と、Janasiewicsz氏は指摘する。

<財政と増税の「タイムラグ」>

米国では、恒久的な法律改正は、上院で60票以上が必要だ。このため、国民のイデオロギーに関するような社会政策は、超党派での合意が不可欠となるが、個人や法人への増減税は、現在、財政調整法によって過半数でも可決が可能になっている。

「歳出大幅増と増税の組み合わせによって、経済的格差を縮小させることを、民主党が目指しているのは間違いない。法人税の引き上げを含めた増税は今後2年間のアジェンダに乗ってくる」と、JPモルガン証券の債券調査部長、山脇貴史氏は指摘する。

ただ、財政調整法の乱用を防ぐための「バード・ルール」の存在などもあり、米国の政策決定プロセスやルールは極めて複雑だ。50対50の拮抗した状況では、法案の1つの文章表現でも、もめる可能性がある。1人の造反で民主党優位は崩れる。米国には日本のような強い党議拘束はない。

民主党が主張する大規模な財政政策においても、この複雑な政策決定プロセスを免れるわけではない。しかし、米国においても新型コロナウイルスの感染拡大が続いており、12月ADP民間雇用者数が予想外に減少するなど雇用にも再び影響が出てきている。コロナ対策としての財政出動は、両党の合意を得やすいとの読みが市場にはある。

「民主党はいずれ増税や規制強化に向かうかもしれないが、財政出動との間にはタイムラグがありそうだ。いずれ株が下落するとしても、その間の株高に乗れればいいと海外勢は考えている」(外資系証券)という。

<「分断」のリスクプレミアム>

しかし、個人や法人への増税が先延ばしされれば、別のリスクが出てくる。民主党内の「分断」だ。

「サンダース氏やウォ―レン氏は、増税や規制強化による格差解消実現を前提にバイデン氏に協力した。こうした政策が通らないのであれば、急進左派勢力は反発する可能性がある」と、富国生命投資顧問の常務取締役、林宏明氏は指摘する。

疑似的とはいえ「トリプルブルー」になったものの、米国内に統一や融和の機運は乏しい。首都ワシントンの連邦議会で、トランプ大統領支持者が議会を占拠するなど、大きな混乱が起きていることで、政策の実現性にも不透明感が強まってきた。

こうした混乱は、米国の信任低下につながりかねないとの指摘も出ている。「足元の米金利上昇(債券安)とドル安は、リスクオンだけでなく、米資産に対するプレミアム要求の高まりという側面もあるのではないか」と、三井住友銀行のチーフ・マーケット・エコノミスト、森谷亨氏はみる。

政策の「時間差」を捉えた株高ではあるものの、その時間がどの程度あるのかについては、予測が難しい。悪材料が続出する現状と、高値を更新し続ける株価はさらに乖離(かいり)しつつある。

*写真を差し替えて再送します。

(伊賀大記 取材協力:植竹知子、編集:久保信博)

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