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日本版ISA、私はこう見る

あつまろです。

日本版ISAという制度が2014年1月からスタートすると言われていますが、なんとも知名度が低いのがこの制度。しかし、こういう制度って知らないまま放置しておくと、気づかないまま払わなくてよい税金を支払うハメになったりします。なのでちょっと面倒でも、ISAはどんなものかを理解してみませんか。このブログを読むだけなら3分くらいでいけると思います。

「日本版ISAの由来」

ISAは英国の「個人貯蓄口座(Individual Saving Acounting)」を見本にした制度です。英国では、「若い人から老人までのあらゆる世代、低所得者まで貯蓄や投資を後押しをしよう!」という目的のために税制優遇(=非課税)しますよ、という制度です。

英国ではISAを利用する口座が1,400万口座(08年)を突破しています。総人口が6,000万人なので強引に計算すると4人に1人が利用するというくらい普及しています。日本(≒金融庁)がこの制度を見つけて「いいね!」ということで制度を輸入しようとしている、という構図です。

「で、日本版ISAってなに?」

ひと言でいうと「投資の税金がかからなくなる(=非課税)」制度です。なので私たち庶民にとっては歓迎すべき制度です。5W1Hで説明してみますね。

Who(誰が):国民全員が利用できます。
What(何を):株式ならびに株式投信(ファンド)が非課税になります
When(いつ):開始時期は2014年。投資(買って)から10年間の投資リターン(例:配当)が非課税になります。
Where(どこで):金融機関でISA口座開設の申込をすることになります。
Why(なぜ):「貯蓄から投資」の促進、ならびに譲渡益軽減税率撤廃(10%⇒20%)に代わる投資家向け優遇制度を取り込みたいという金融庁の目論見
How much(いくら):毎年100万円まで非課税です。2014~16年の3年間までの時限措置で合計300万円(100万円×3年)

金融庁が現行スキームをまとめて下記のように公表しています。

リンク先を見る
2012年9月「平成25年度税制改正要望項目」より

「日本版ISA、私はこう見る」

いち個人投資家として気がついた点をコメントします。

1.長期保有への意識が高まる投資家が増える
仮に今日100万円投資して(買って)、明日105万円で売ると5万円の利益に対して税金がかかりません(=非課税)。 しかし、そのまま10年間保有すると毎年1万円の配当(利回り1%)があれば10年で合計10万円分のリターンが非課税になります。また、10年の間に大きく株価が伸びる可能性もあります。そういうことを考えると「株価が上がってるうちに売ってしまおう」という投資家心理が「もっと株価が上がるかもしれない」または「次の配当まで待ってみよう」と長期で保有するインセンティブが働き、長期保有への意識が高まりそうです。

2.デイトレーダーはたいしてうれしくない
デイトレーダーにとってもISAはメリットを享受できますが、薄利で売買回転を増やしている場合が多いでしょうから、長期保有前提の投資家に比べるとメリットは低くなります。それどころか現在の投資軽減税率(10%)が撤廃されて20%まで上昇してしまうと、ISAのメリットよりも軽減税率撤廃のデメリットの影響の方がはるかに大きいということになりそうです。

3.企業への配当志向が高まる
投資家からすると非課税なので配当を増やしてほしいという気持ちが強くなります。企業サイドからしても自社の株式に投資してくれる安定投資家が増えることを歓迎して、配当額を増やそうというインセンティブが現在以上に高まる可能性があります。

4.大手金融機関がISA狙いの投資信託(ファンド)を売りつけてくる
多くの人は投資に興味がありません。むしろ預金など安定資産を好みます。大手銀行を中心に銀行預金でお金を眠らせている一般人にむけて「国債で運用しているので安全なファンドがあります、いまなら非課税なのでオトクですよ」とリターンが低かったり、ハイリスクなのに安定しているように見せかける投資信託を売りつけてくる可能性があります(いまも横行していますが)。彼らは預貯金よりも販売手数料収入を見込める投資信託(ファンド)を売りたいので良い口実を与えることになります。このときに最低限のマネーリテラシーがないと勧められるまま「ホイホイ」と投資信託を買って、大手金融機関の収益に貢献するという結果になります。

5.証券会社はあまりうれしくない、かも
証券会社からすると投資家には、株式をしょっちゅう売買してもらって手数料を落としてほしいと思っているはず。それなのに「10年間」も保有されると取引が滞ってしまい、手数料をGETするチャンスが減ってしまいあまりうれしくないように思います。

6.金融機関は弱肉強食がいっそう進む
現在の制度では、金融機関は毎年1口座選ぶことになります。そうなると営業網や知名度に勝る大手金融機関が大々的にアピールして口座を開設して囲い込みを行い、中小金融機関は新規の投資家が集まらないという流れも想定できます。また、新制度導入における事務作業負担やシステム投資負担もかかるため、経営体力の弱い中小金融機関は負担だけ増えて投資家が集まらないというツライ状態になる気がします。

以上が私が気づいた点です。個人投資家の立場だけでなく、投資先の企業はどう感じてどう行動するのか、投資の機会を提供する金融機関はどう感じてどう行動するのか、という利害関係者を気にして考えてみました。

「日本版ISAが変わる!?」
じつはここまで見てきた日本版ISAですが、制度自体の見直し機運が高まっています。英国でも1999年に制度が開始されてからも評価と改正を繰り返しており、見直しがあることは自然なことでしょう。 ただし、制度が変わるということは、=私たちにも影響する、=私たちも制度変更を理解しておくべき、となります。 また別の機会で制度の改正内容の説明と考察を行いますね。

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