観光地として知られる福島県会津地方。郷土玩具に伝説上の赤い牛にあやかった「赤べこ」があり、駅前や観光施設など様々な場所でそのモニュメントが設けられるなどシンボルとして親しまれている。
12年おきに干支が「丑(うし)」の年を迎えるたび、赤べこは注目されてきたが、今年は土産物店で品薄になるなど例年にもまして高い人気を集めている。新型コロナウイルスの感染拡大に収束の兆しが見えない中、疫病除けの言い伝えがあることから「コロナを早くやっつけて」との願いが託されているようだ。

「丑」年に疫病除けの言い伝え コロナで関心高まる契機に
赤べこは赤い牛を模した張子の人形で、「べこ」は牛を意味する東北の方言。観光の玄関口・会津若松駅にも赤べこのモニュメントが置かれ、記念撮影する観光客も少なくない。キーホルダーや子供用の人形など様々なグッズで展開され、会津地方、さらには福島県の定番の土産物だ。
都内の企業に勤める40代の会社員は、2年間福島県に赴任した経験がある。赤べこは「かわいさにハマった」といい、キーホルダーやスマホ用のアクセサリーを利用していて「コロナで大変ですが、今年はなんだかいいことがありそう」。赤べこが注目されていることは肌身で感じられるといい、「ついに『福島の年』が来た」と喜ぶ。
新型コロナをきっかけに注目が高まる赤べこ。それは、次のような言い伝えがきっかけだ。
かつて会津地方で天然痘が流行した際に、赤べこを持った子供は病気にかからず平穏でいられた――。こうした伝承に基づいて、赤べこは長く地元では疫病除けの縁起物として大事にされ続けてきた。コロナ禍となり、SNS上で妖怪のアマビエが人気となったように、多くの人が新型コロナの感染収束の願いを赤べこにも向けるようになった。

福島県でも相次ぐ売り切れ 天皇陛下にも馴染みが
コロナ禍を受け、福島県の土産物店でも赤べこの売り切れが相次いでいる。福島市のJ R福島駅近くで県内の名産品が集まる県観光物産館は丑年を迎えるのに備えて、例年より仕入れ数を増やした。
ところが、新型コロナウイルスの収束を願って購入する人が相次ぎ、12月は新たに入荷してもすぐさま売り切れる状況が繰り返された。新年を迎えてからは在庫なしの状況が続いているという。
他にも、元日を迎えられた天皇・皇后両陛下と、長女愛子さまの様子を伝える宮内庁の映像の中で、赤べこが登場したことも人気を高めたとみられる。赤べこを前に談笑し、天皇陛下は赤べこが疫病退散の縁起物であることを説明したことも報じられた。
赤べこの人気の程が分かるツイートがある。6日夕には、東京で開かれた福島物産展で売り切れだったことを指して、「全国的な!赤べこ不足!!」との投稿があった。7日午後8時現在で6千件以上リツイートされる事態となり、「だから見つからないのか」「11月中に買っておいて良かった」などのツイートも相次ぐ。

原発事故から復興目指す福島県 赤べこには不思議な力?
東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から3月で丸10年を迎える福島県。首を押すとゆらゆらと揺れて上下させながらも、必ずや元どおりになる赤べこの姿は、復興を目指す福島の姿に重なるともいわれる。
新たに、新型コロナの収束という大きな期待がかかる赤べこ。震災、原発事故からの復興を目指す人々を見守ってきた赤べこには、なぜか頼りにしたくなる不思議な力があるのだろう。