新型コロナウイルス感染拡大の影響で、東京都の一部や北海道札幌市をはじめとした全国各地の自治体で成人式が中止や延期となっている。
一生に一度の式典中止に、新成人たちから悲しみの声が上がるなか、「京都きもの友禅」などの着物業界の対応がネットや報道で話題に。
さらに、Twitterでは写真家やカメラマンといった“大人”たちが思い出作りのために立ち上がった。
晴れの日の振袖・袴姿を思い出に残せるように「無償で撮影します」と声を上げ始めている。

「僕に思い出を撮らせて下さい」
そうTwitterで呼びかけたのは札幌市のプロフォトグラファーでPhotograph.RN代表の藤崎延明さん(46)だ。
札幌市はコロナ拡大を受けて、昨年11月30日に2021年の成人式を中止することを発表した。
藤崎さんはウエディングや美容関連の撮影に加えて、毎年、成人式前撮影を行なってきた。昨年も前撮影に臨んでいた藤崎さんだが、札幌市が成人式の中止を発表。それを知った新成人たちと向き合い「心が痛んだ」と話す。

「友人との再会、大人としての出発の日、一生に一度しかない成人式がなくなってしまったと言うのは、新成人にとって計り知れないダメージだと思いました」
それを機に藤崎さんが無償撮影を呼びかけると多くの人から希望の声が上がった。年が明けて1月6日、他のカメラマンたちもTwitter上で無償撮影の呼びかけを行なっているのを目にして、「僕もまだ頑張らなくては」と追加募集の投稿を行なった。
『成人式中止に伴う無償撮影のお手伝い』
— nobu@藤崎延明 / New Project『 APHRODITA 』 (@photograph_rn) January 6, 2021
12月に募集済ではありますが1名のみ追加募集します
今回は勝手で申し訳ありませんが条件があり
親御さんがシングルファザー、マザーと言う事情の方限定です
写真撮影することができない金銭的な理由をお持ちの方も多いと思います
僕に思い出を撮らせて下さい pic.twitter.com/6feokQTKyF
追加で募集をかけた際は「親御さんがシングルファザー・シングルマザーという環境の方」という条件をつけた。藤崎さん自身もシングルファザーとして親1人で子供を育てる大変さを知っているからだ。
「成人式撮影はとても高額です。以前、シングルマザーの方から『お金が払えないのですがなんとか娘の晴れ姿を撮影できませんか?』というご連絡をいただいたことがありましたが、その時はお気持ちに応えることができませんでした。しかし、気持ちがわかる身としても今回は力になりたかった。そういった事情で写真が残せない方がいるのであれば、自分らしいお手伝いになるのではと思っています」
「専門の人以外は撮るな」「売名行為」と一部の心ない声 それでも「笑顔になってほしい」
撮影者選びは完全な抽選で行ない、撮影は今後、予定を調整して1月〜5月の間に北海道内で行なう予定だ。
無償撮影を呼びかけるカメラマンのもとに「着物の撮影は(着付けやポーズ等を)知らない人間がやるものではない」という批判や「売名行為」と言った心ない声も寄せられこともあるという。
藤崎さんは「新成人の気持ちが全て。実家にも帰ることができないような状況が続いていますが、今は遠く離れたご両親やご家族の皆さんにも写真を送ることができます。少しでも皆さんが笑顔になってほしい。そのきっかけを作れたらと思います」と話す。
前撮りの写真を見て「中止になったな」と思い出してほしくない

広告やCDジャケット、雑誌を中心に活躍するフォトグラファーの藤城貴則さん(35)も「一生に一度の晴れ姿をプロカメラマンが無償で撮影いたします」とTwitterで呼びかけている。
新成人が今後、前撮りの写真を見返しては「自分たちの成人式は中止になったな。キャンセル代が勿体なかったな」という思いを抱くことを考えると胸が痛んだ。「中止になったけれど、そのおかげでプロカメラマンに撮ってもらえて良い思い出になった」と前向きに捉える機会を作ることができればと投稿したという。
【成人式が中止になってしまい、振袖・袴がキャンセルになってしまう方へ】
— 藤城 貴則 (カメラマン) (@TAKANORIFUJI) January 6, 2021
一生に一度の晴れ姿をプロカメラマンが無償で撮影いたします。
ご希望の方はリプ欄にある詳細記載画像をご確認の上、DMにて応募をお願いします。
*募集は9日正午で締め切らせて頂きます。#成人式中止#緊急事態宣言 pic.twitter.com/ILKnOwOrRK
撮影を希望する新成人たちからは「成人式ができなかった分の思い出を残したい」というメッセージが届いている。
「僕が今回撮影することで誰かの嫌な思い出を良いものに変えられるなら、写真をやっていて良かったと思えます」と話す藤城さん。「せっかく成人を迎えたのに、やりたいことを制限され辛いかとは思います。でも、今この環境でしかできないこともたくさんあります。それを探して楽しむことで、こんな環境でも良い思い出が一つでも増えるように心から願っています」と新成人たちにエールを送った。
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