記事

コロナ「医療緊急事態」に「自衛隊」「ボランティア」の協力を仰げ - 上昌広

1/2

[画像をブログで見る]

 新型コロナウイルス(以下、コロナ)の感染拡大が続いている。重症者の数が増え、医療体制は崩壊の瀬戸際にある。

 菅義偉首相は東京都、千葉・埼玉・神奈川1と3県を対象とした再びの緊急事態宣言を、早ければ1月8日にも発出すると見られている。

 12月21日、日本医師会や日本看護協会など9つの団体は、

「このままでは全国で必要なすべての医療提供が立ち行かなくなる」

 と「医療緊急事態宣言」を発表した。どうすればいいのだろうか。本稿では、この解決法について論じたい。

足りない「選択と集中」

 コロナ対策で最大の問題は、重症患者の治療だ。人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)などを要するケースが多いため、感染症対策を熟知した集中治療の専門家が必要だ。

 対処できる専門家の数は限られている。特定の病院を強化し、集中的に医療資源を投資するしかない。世界中が、この戦略を採っている。

 中国の武漢を第1波が襲ったとき、中国政府はコロナ専門病院を建設し、全土から専門家を招聘した。やり方は違えど、米国も同様だ。第1波のある時点で、マサチューセッツ総合病院は121人のコロナ患者をICU(集中治療室)に、157人を一般病棟で受け入れていた。1月4日現在、東京都内で治療中の重症コロナ患者は108人だ。米国で1つの病院で受け入れている数以下だ。

 日本の感染症指定病院の、コロナ重症患者受け入れ数は5人程度だ。日本ではコロナ重症者を少数ずつ多くの病院に分散して受け入れている。これは非効率的だ。これが、人口当たりで米国の40分の1しか感染者がいないのに日本の医療が崩壊する理由だ(表1)。「選択と集中」が足りない。

表1

 なぜ、こうなるのか。医療現場が厚生労働省の規制でがんじ搦めだからだ。厚労省が音頭を取らなければ何も進まない構造になっている。

 冬になれば重症病床が逼迫することは、第1波の段階でわかっていた。ところが、厚労省は海外から何も学ばなかった。今からでも遅くない。厚労省は重症者病床を増やし、集約化すべきだ。

当事者能力なき「厚労省」活躍した「自衛隊」

 では、その際、専門家のリクルートはどうしたらいいだろうか。どこかの医療機関をコロナ重症者センターに認定しても、以前からその医療機関に勤務している医師や看護師だけでは、とても数が足りない。外部から招聘しなければならない。

 そこで厄介なのは、コロナが危険な感染症であることだ。感染すれば重症化することがあるし、同居している家族にうつすかもしれない。また、「保育園に通う子どもが苛められた」、「地元のスーパーで買い物を断られた」などの偏見も存在する。コロナ病棟で働くには、高い技術だけでなく、相当な覚悟が必要だ。

 では、どうやって、そのようなスタッフを集めればいいだろうか。この問題を考える上で示唆に富むケースがある。それはクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」への対応だ。

 同船は2020年2月3日に横浜港に寄港した。実は、最初の段階で船内に複数の感染者がいたことがわかっている。2月5日に開催された首相官邸の第5回コロナ感染症対策本部会合で、加藤勝信厚労大臣(当時)は、

「船内において、発熱等の症状のある方、濃厚接触者の方など、合計273人分の検体を採取し、現在分析を行っています。そのうち31人分のウイルス検査の結果が判明し、10名の方から陽性反応が出ました」

 と報告している。

 ところが、厚労省の認識は甘かった。検疫法に則り、従来通り、

「乗客を船内の狭隘な個室で過ごさせ、発熱や咳などの症状がある人にしかPCR検査を実施しなかった」(厚労省関係者)

 その後感染者が急増し、9日には50代の検疫官も発熱した。厚労省は、15日になってようやく乗客全員のPCR検査の実施を決定した。その後の混乱は周知の通りだ。

 実は、その後の対応で主導的な役割を果たしたのは自衛隊だ。生物兵器対応部隊が投入され、

「厚労省とは別の自衛隊独自の基準で船内対応にあたった」(政府関係者)

 陽性者を医療機関に搬送する際にも、

「厚労省、国土交通省、消防庁が消極的で、結局、自衛隊が部隊を投入して遠方の病院に搬送した」(前出の政府関係者)

 こんなことなら、最初から自衛隊に協力を依頼すればよかった。2月23日の対策本部会合では、河野太郎防衛大臣(当時)が、

「本日時点で 724名の自衛隊員が新型コロナウイルス対応にあたっている」

 と報告し、厚労省の杜撰なやり方に対して、

「今後の検証が可能となるよう、関係するあらゆる情報をしっかりと残していただきたいと思います」

 とコメントしている。

 厚労省に当事者能力がないのは当初から明らかだったが、政府は傍観するだけで、自衛隊の実力部隊の投入は遅きに失した。このことは広く報じられることなく、教訓は共有されていない。

 コロナ対応のように高度の技量と相当な覚悟が必要なケースでは、投入する人材は厳選しなければならない。このような場合、軍人は極めて有用な人材である。実は、このことは日本に限った話ではない。

 2014年、西アフリカでエボラ出血熱のパンデミックが発生したとき、米国は約3000人の米軍兵士を派遣し、封じ込めにあたっている。この中には微生物兵器を研究し、その対応に熟練した人たちが含まれている。このあたりの状況はダイヤモンド・プリンセス号の時と全く同じだ。

 落ち着いて考えれば、これは当たり前だ。感染症の専門家の多くは院内感染の専門家ではあるが、未知のウイルスによるパンデミック対応を専門としているわけではないからだ。未知のウイルスへの対応の専門家は一般の医療機関ではなく、自衛隊の中にいる。協力を求めるべきだろう。このあたり、冷静な議論が必要だ。

あわせて読みたい

「新型コロナウイルス」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    給付金2回目求める声殺到に衝撃

    BLOGOS しらべる部

  2. 2

    トヨタ Apple車参入で下請けに?

    大関暁夫

  3. 3

    テレ東が報ステ視聴者奪う可能性

    NEWSポストセブン

  4. 4

    陽性率が低下 宣言2週間で効果か

    中村ゆきつぐ

  5. 5

    マスク拒否の男 逮捕時は大暴れ

    文春オンライン

  6. 6

    米国に課された多様性との融合

    松田公太

  7. 7

    慰安婦判決 文政権はなぜ弱腰に

    文春オンライン

  8. 8

    秋葉原メイドカフェはバブル状態

    文春オンライン

  9. 9

    鈴木拓300万円使うもYouTube挫折

    SmartFLASH

  10. 10

    雇用保険を否定? 厚労省の暴言

    田中龍作

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。