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政府の認識は甘すぎる深刻な待機児童問題〜解決すればこの国に大きなメリットをもたらすはず

 今回は深刻な状況の待機児童の問題を取り上げたいと思います。


保育園定員を増やせば増やすほど待機児童が増えるという絶望的状況~東京都練馬区のケース

 私も2児の父親として保育所や学童保育のお世話になり、今も関わりがある東京都練馬区の事例を説明いたします。

 4年前の平成20年度、練馬区の保育サービス定員数と待機児童数は定員9,243人に対し、待機児童254人の状態でした。

 その後4年間で区は認可保育園数を81園から96園に増やし、保育サービス定員合計も9,243人から11,146人と、1,903人増と21%増やしました。

 定員を1,903人も増加したにもかかわらず、この4年で待機児童数は254人から523人に倍増しているのです。

 練馬区のサイトから「待機児童数の推移」を表にしてみます。

■表1:保育サービス定員数と待機児童数の推移(東京都練馬区各年4月1日現在)

平成20年度平成21年度平成22年度平成23年度平成24年度
認可保育園数81園83園84園89園96園
保育サービス定員合計9,243人9,467人9,840人10,443人11,146人
認可保育園定員(内数)8,092人8,243人8,414人8,818人9,414人
認可外保育施設定員(内数)1,151人1,224人1,426人1,625人1,732人
待機児童数254人429人552人564人523人

※注釈: 国は、保育室、認証保育所、家庭福祉員(保育ママ)に在籍している児童を除いた認可保育所への入所を希望して入所できない児童を待機児童としています。

保育園待機児童解消のための取り組みについて

http://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/shussan/hoikuen/taikijidoukaisyou.html


 グラフにすると保育所の定員増にもかかわらず待機児童数が増える傾向にあることがより明確です。

■図1:保育サービス定員数と待機児童数の推移(東京都練馬区各年4月1日現在)

リンク先を見る


 練馬区職員のお話によれば、新たに定員を増やすほど待機児童の数が増えるという奇妙な「いたちごっこ」に陥っているのだと説明されていました。

 なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

 これは別に練馬区の学童人口がこの期間で急増したわけではなく、そもそも国の定める「待機児童」の定義が、この問題をとらえる指標、モノサシとしては適切ではないことを示しています。

 「保育室、認証保育所、家庭福祉員(保育ママ)に在籍している児童を除いた認可保育所への入所を希望して入所できない児童」


 ご覧のとおり、「入所を希望して入所できない児童」を国は「待機児童」と定義していますが、これでは最初からあきらめて入所希望手続きすらしていない多くの「潜在待機児童」がカウントされないわけです。

 練馬区で起こっていることは、保育所を作れば作るほどあきらめていた「潜在待機児童」が入所希望手続きに参加するようになり、結果「待機児童数」も倍増した、ということです。

 練馬区職員の話では、区内の潜在待機児童数は正確には不明ですが、断定はできないが、区ではおそらく万のオーダーを越えているのではないかと推測している、との話でした。

 ・・・



潜在的な待機児童数に対する国の想定は甘すぎる

 東京都練馬区の事例を紹介したのは、22日付け日経新聞記事が報じている内容が練馬区が特殊なケースではないことを示していると思われるからです。

待機児童、解消遠く 潜在需要は300万人超

民間推計、厚労省想定上回る

2012/11/22 0:00

 民主党が2009年衆院選のマニフェストに掲げた「待機児童の解消」が進まない。民主党が政権をとってから今年にかけて保育所入所を申し込んでも入れない児童は2%の微減で、総数は2.5万人前後で高止まりしている。厚労省の想定を大幅に上回る300万人超の潜在的な待機児童がいるとの民間推計もあり、見かけの数字より保育施設不足は深刻だ。

(後略)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGC21017_R21C12A1EE8000/


 正直、この問題に対する国の想定は甘すぎると考えます。

 認可保育所への申し込みをベースに算出した潜在待機児童数は厚労省によると「85万世帯」と見込んでいますが、これは先ほども指摘しましたが、指標モノサシとして認可保育所への申し込みをベースにすると実態を正確とらえる事はできないでしょう。

 記事によれば、東京財団の石川和男上席研究員は「働く親のニーズから逆算すると、潜在待機児童は198万世帯、364万人に上る」と指摘しています。

 東京都練馬区の事例でもご理解いただけるように、この問題で自治体も手を拱いているわけではなく精一杯の対処をしています、また記事にある横浜市のように自治体の努力により実際に待機児童数を減らすことに成功している例外もありますが、やはり自治体だけの対応では財政的にも限界があることは自明です。

 ではこの問題で政府はどう対応しているのか、子育て支援をめぐっては与野党協議が難航した揚句、8月にようやく民自公3党合意で子育て関連3法が成立した経緯があります。

 子育て支援関連に消費増税分から7000億円を充てることになり、具体的な制度では、定員が20人未満の少人数の子供を預かる保育施設(認可外)でも給付金を支給する「地域型保育給付制度」の新設が目玉になります。

 これまで自治体レベルで独自に採用されてきた仕組みを国が追認したものだけに、関係者の期待は小さくないのですが、残念ながら国の想定が甘すぎるために、この予算では問題の解決には程遠いのです。

 つまり国は17年度までに認定こども園の拡充などで3歳未満児の保育利用数を36万人増やすことを見込んでいるのですが、潜在需要の360万人にはまったく届かないわけです。

 従って、待機児童数が高止まりしている状況は当面変わらないでしょうし、国の計画通り「17年度までに保育利用数を36万人増やす」ことで、練馬区で起きているように潜在待機児童を掘り起こしてしまい待機児童数が急増する可能性だって否定できません。



待機児童問題はこの国の未来に関わる重要問題と認識すべき

 まとめます。

 保育所を増やせば増やすほど保育所に入れない待機児童が増えるという悲惨な現状は、国家として恥かしい事態です、はっきりいって政府・行政のたいまん以外の何者でもないと考えます。

 ただ、この深刻な待機児童問題は子育て世帯以外の一般国民の関心が中々高まらないのが実情です。

 しかしこの問題を解決して子育て世帯が安心して働ける環境を構築できれば、何よりの少子化対策にもなりますし、国民の所得増に寄与し大きな経済効果を生むという試算も出ています。

 その意味では今争点になっているTPP、原発、消費税増税等の重要政策と比較しても、待機児童問題に対する政策はもっと注目されてしかるべきだと考えます。

 「子供手当て」で2兆円をばらまく予算があるならば、よほど待機児童問題の対策に予算を投じたほうが国益に資すると、私は考えます。

 待機児童問題は確かに深刻な状況ですが、これを解決することは、この国の将来にとって経済的な面も含めて大きなメリットをもたらすこと間違いありません。

 各党は是非この問題で建設的政策を競っていただきたいです。

 そして子育て世帯以外の国民も、そしてマスメディアも、この大切な問題にもっと注目していくべきでしょう。

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