記事

「DHC会長の差別発言」にサントリーがやってしまった"たったひとつの間違い"

1/2

化粧品大手DHCの吉田嘉明会長が、自社サイトに在日朝鮮人に対する差別的な文章を掲載し、ツイッターなどで批判が相次いだ。報道対策アドバイザーの窪田順生氏は「この文章ではライバル企業のサントリーについても批判している。サントリーはコメントを差し控えるとしているが、その対応にはひとつだけ問題がある」という――。

燃え盛るアームチェア
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/vicnt

DHC吉田会長“予備軍”は山ほどいる

2020年末、DHCの吉田嘉明会長の「差別的文章」が炎上した。

公式オンラインショップに掲載された文章が、在日朝鮮人への差別的な表現を含んでいるとして批判を浴び、SNSでは「#差別企業DHCの商品は買いません」といった不買運動が呼びかけられたのである。

いまとなっては「ああ、そんなこともあったね」と思われるかもしれないが、実はあの騒動を見て「ウチもやばいかも」と肝を冷やした人たちがたくさんいた。企業広報の皆さんである。

吉田会長に限らず、創業社長というのは総じてキャラが強烈だ。メディアのインタビューや株主総会では殊勝な顔でおとなしくしていても、社員の前では差別発言、不謹慎発言連発という人も少なくない。

しかも、基本的にワンマンゆえ周囲もイエスマンだらけで誰もいさめない。つまり、たまたまバレていないだけの「吉田会長予備軍」は経済界に山ほどいるのだ。ということは、そのような経営者の横でヒヤヒヤしている広報もそれだけ多いということでもある。

たびたびの炎上もダメージにはなっていなかったが…

一方で、「いちサラリーマンがトップの言動を心配したってしょうがないだろ」と開き直る広報マンもいるだろう。そういうスタイルの代表格がDHC広報だ。吉田会長の文章についてハフポスト日本版が取材を申し込んだところ、「ご依頼いただいた取材の件に関しまして、回答することは特にございません」と塩対応をした。

なぜこんなにひとごとなのかというと、絶対権力者の言動に対してコメントなどできるわけがないということに加えて、これまで大きな「実害」がなかったということも大きい。

実はDHCは子会社が運営しているネット番組などでもたびたび在日朝鮮人への差別的な発言がみられ、そのたびにネットで批判を集め、不買運動が起きている。しかし、それらは大幅な売上減などにはつながらず、大きなダメージにはなっていない。

こう聞くと、「なんだ、じゃあいざとなれば無視すりゃいいってことか」と思うかもしれない。しかし、危機管理広報というのは、その時の世間のムードもあれば、当の企業のブランドイメージやこれまで積み重ねてきた信頼などによってまったく結果が違ってくる。

ワンマン社長の舌禍は内部告発の背中を押す

しかも、ワンマン経営者の「舌禍」というのは短期的な売上減といった直接的なダメージは大きくなくとも、それをきっかけにしてボディブローのようにじわじわと実害をもたらすケースも多い。代表的なパターンは以下の3つだ。

1.社員から内部告発が活性化する

2.「独裁」「もの申せないムード」に注目が集まる

3.ほかの不正やモラルを逸脱した行為がないか探られる

1に関しては、すでに文春オンラインで「DHC現役社員が告発」というキャンペーンが始まっている、ほかには、少し前の日本郵政のケースもわかりやすいだろう。

2019年3月の西日本新聞のスクープで、かんぽ不正が明らかになった後、経営陣が会見で終始責任逃れをした揚げ句、「問題は現場で起きている」などと「舌禍」とも取れる発言をした。これで現場の不満が爆発、全国の郵便局から相次いで不正の内部告発が寄せられたのは、記憶に新しいことだろう。

このようにワンマン社長の「舌禍」というのは、会社に不満を募らせる社員たちの内部告発の背中を押すことになるのだ。

社長インタビューに同席する広報の態度でわかる

2の《「独裁」「もの申せないムード」に注目が集まる》というのも当然といえば当然だ。ワンマン経営者の「舌禍」は、周囲に誰も言動にブレーキをかける人間がいない、という組織の風通しの悪さが引き起こしている。

数年前、インタビューしたある創業社長もそうだった。お話をうかがっているうちに気持ちが乗ったのか、ある人たちについて「バカ」「死ね」など罵詈(ばり)雑言が飛び出した。しかし、同席した広報担当者は「いつもこんな感じです」と言わんばかりに笑顔でうなずくだけだった。当然、インタビュー終了後も特にフォローはない。

権威の乱用
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

大企業の場合、基本的にサラリーマン社長が多いので、この手の「舌禍」をマネジメントするのが広報の大事な仕事となる。問題発言をしようものなら「今の発言ですが」と割って入って修正をしたり、インタビュー後に「記事では削除してくれ」と依頼したりというのが普通だ。

炎上をきっかけに不信の目が集まると起きること

しかし、この会社はまったくそんなムードはなかった。「あのノリを外でやっちゃったら大変だなあ」と思っていた数週間後、くだんの社長はツイッターでの「暴言」で大炎上、謝罪に追い込まれた。

その際に、社長個人が叩かれたのは言うまでもないが、この会社の風通しの悪さもやり玉に挙げられた。トップが一般常識とズレた暴言をするということは、会社の内部も非常識なカルチャー、絶対君主に誰もモノ申せない空気があるのではないか、と勘繰られてしまったのである。

それだけならまだいいが、もっと別の大きな問題があるのではないかと疑いをかけられることもある。それが3の《ほかの不正やモラルを逸脱した行為がないか探られる》だ。

これも今の文春オンラインのキャンペーン報道がわかりやすい。「DHC会長が全社員に口コミサイトへ“サクラ投稿”奨励『ゴールド社員の称号を与える』《消費者庁は「非常にグレー」》」という記事では、吉田会長が社員に「サクラ投稿」をせよと呼びかけた、という内部告発が寄せられているのだ。

もちろん、これが事実かどうかはわからないが、あのような過激な文章を公表するくらいの人なのでさもありなん、という印象は否めないだろう。

あわせて読みたい

「炎上」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    給付金2回目求める声殺到に衝撃

    BLOGOS しらべる部

  2. 2

    トヨタ Apple車参入で下請けに?

    大関暁夫

  3. 3

    テレ東が報ステ視聴者奪う可能性

    NEWSポストセブン

  4. 4

    陽性率が低下 宣言2週間で効果か

    中村ゆきつぐ

  5. 5

    マスク拒否の男 逮捕時は大暴れ

    文春オンライン

  6. 6

    秋葉原メイドカフェはバブル状態

    文春オンライン

  7. 7

    鈴木拓300万円使うもYouTube挫折

    SmartFLASH

  8. 8

    慰安婦判決 文政権はなぜ弱腰に

    文春オンライン

  9. 9

    米国に課された多様性との融合

    松田公太

  10. 10

    雇用保険を否定? 厚労省の暴言

    田中龍作

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。