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政権だけではなく政策も交代してくれまいか

生活保護「就労意欲そがぬ水準に」減額事業仕分け結論(朝日新聞)

政府の行政刷新会議(議長・野田佳彦首相)の事業仕分けは2日目の17日、受給者数が戦後最多を更新し続ける生活保護を議論した。生活費にあたる「生活扶助」の支給額について、「就労意欲をそがない水準とすべきだ」として引き下げを求めた。

生活保護の受給者数は7月に212万人を突破。今年度予算の生活保護費は総額約3.7兆円にのぼる。

生活扶助基準について仕分け人からは、「経済状況を考えると高すぎる」「受給せず頑張っている人が受給した方がいいと思いかねない」などの発言が続いた。岡田克也副総理も「もっと下げることは可能ではないか」と減額を求めた。

民主党が政権交代前に掲げてきた公約や政策の類の多くは反故にされる形となったわけですが、まぁその辺は民主党を信じていた方がバカだと言うことで今さら憤るようなことではないでしょう。政権交代前から、疑わしいものは十分に疑わしかったのですから。民主党が政権を取れば○○してくれる、そう期待していた方がどうかしているのです。この辺は、ほぼ確実に次の与党になるであろう自民党も同じで、「やる」と宣言していることと政権獲得後に実行する/できることの間には差があります。まぁ、どちらかと言えば口約束だけで終わってくれた方がありがたい、何もできずに椅子に座っているだけの方がまだマシと言えるのが近年の政治かも知れませんが。

ともあれ民主党は自民党との約束を守って解散に踏み切った一方、有権者との約束(公約)を守らないことにはあまり躊躇がないようです。もっとも民主党が政権交代前夜に掲げてきた公約や政策の類がどこまで支持されていたかは微妙なところ、内容が具体的になればなるほど支持は薄い、むしろ反対意見も目立つケースが多かったように記憶しています。民主が公約を守ろうとしなかったのは、結果的に見れば民意に従う形になっていたのではないでしょうかね。そんな民主党でも「例外的に」広範な賛同を集めていたのが官僚叩きであり、今回も取り上げられている「事業仕分け」でした。何か「悪者」を指してバッシングの対象とする、こういうやり方は一部の自民党議員(河野太郎など)からも羨まれていたものです。

その事業仕分けで「就労意欲をそがない水準とすべきだ」などと称して生活保護費の切り下げを求めていることが伝えられています。生活保護受給者を不当な受益者と見なして締め上げようとするのは大いに世間の歓心を得るところ、人気取りには手軽なパフォーマンスと言えますが、国民の生活に責任を負うべき立場としてはどうなのでしょう。今や当選することこそ議員の仕事、有権者の支持を得られるならば国民の生活など省みない、そういう人も多いようです。政府が切り捨てようとしている国民と有権者は重なるはずなのですが、人気取りの生け贄にされる人々を自分たちの一員とは考えない、むしろ自分たちとは違う、向こう岸にいる邪悪な人々とでも勘違いしている、そんな有権者が選んだ議員ですから。

何はともあれ生活保護によって就労意欲がそがれていると、そう野田や岡田などは信じたがっているようです。たしかに、働いて収入を得るとその分だけ生活保護費は減額されるという制度、そして働いたところで生活保護水準を超える収入を得ることが難しいという現状では、働くことへのモチベーションも低くなりがちです。もっとも生活保護受給者が働いていないかと言えば、そもそも受給者の大半は働いていないことが普通の年金受給世代であったり、あるいは障害や疾病を抱えて民間企業が採用したがらない人であったりするわけですが。

とかく強調されがちな生活保護の不正受給にしたところで、ほとんどは「働いて得た収入を隠していた/過少に申告していた」ケースです。働ける人は、意外に働いているものなのでしょう。そこで生活保護費を減額すれば就労意欲が高まるのか、たとえば日本のシングルマザーの就労率の高さは世界のトップレベルにあるなど、支援が得られないことで就労に駆り立てられるという側面は否定できません。しかし、就労率が高いからといって豊かな生活を謳歌できているかと言えばさにあらず、薄給で労働に駆り立てられて身心を磨り減らしているだけ、社会全体で見れば少子化と貧困の拡大を招いているだけです。少なくとも私は、このような国を誇らしくは思いませんね。

「経済状況を考えると高すぎる」「受給せず頑張っている人が受給した方がいいと思いかねない」なんてのも本当に酷い発言です。この経済状況を招いた責任を感じないのか、そもそも生活保護の水準は何に基づくべきなのか、健康で文化的な生活を送るために最低限必要なものを問うのではなく経済状況を持ち出してしまえるのは、国としての責任放棄としか言い様がないでしょう。国内経済の悪化は自然現象のごとくに他人事扱い、そして国内の景気が悪化すれば我が国は国民の生活を保障しないと明言しているようなものなのですから。

挙げ句の果てに「受給せず頑張っている人〜」とは!生活保護水準以下の収入しか得られないのは国の経済政策の失敗の結果であり、そして生活保護水準以下であるにも関わらず受給できていない人が存在するのは行政の無作為の結果なのです。受給「していない」人は頑張っているのではなく、行政が放置している人なのだと、そう考えられなければなりません。生活保護水準以下の収入しか得られないのに、生活保護を受けられずにいる、そういう人を「頑張っている」などと呼んでは行政が引き受けるべき責任を放棄している、このことに全く無自覚な民主党政府の厚顔無恥ぶりが如実に表れています。

働いても満足に暮らせるとは限らない、そんな社会を放置したまま社会保障受給者の切り捨てを計る、これを以て「行政刷新」などと称するセンスには恐れ入るほかありません。生活保護水準以下にしかならない低賃金で人を働かせることでしか経営が成り立たないような事業者のために最低賃金は据え置いておく、その一方で生活扶助は減額を計ろうというわけでしょうか。国政選挙では争う風を装いつつ、民主党は自民党の後を継ぎました。その後も国会で主導権争いは繰り広げられてきましたが、もっと政策的な面で対立してくれないかな、と思います。自民が民主の逆張りに徹してくれるなら、ちょっとはマシになるのですけれどねぇ。

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