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怒涛の年末年始 困窮者支援の現場から。の巻 - 雨宮処凛

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 2021年がやってきた。コロナ禍の年末年始、あなたはどのように過ごしただろうか。

 私は12月29日から1月3日まで、困窮者支援の現場で相談員をつとめていた。この国の「底」が抜けているということを、嫌というほど痛感する6日間だった。

 ここで年末年始のスケジュールを振り返ると、以下のようになる。

12月29日 年越し支援・コロナ被害相談村(大久保公園)
12月30日 年越し支援・コロナ被害相談村(大久保公園)、夕方は池袋のTENOHASIで配食手伝い(東池袋中央公園)
12月31日 東池袋中央公園にて臨時相談会
1月1日 横浜・寿町の炊き出しに行ったあと、四谷の「年越し大人食堂」(イグナチオ教会)
1月2日 年越し支援・コロナ被害相談村(大久保公園)
1月3日 四谷の「年越し大人食堂」(イグナチオ教会)

 6日間にわたって年末年始支援の現場にいたわけだが、初日の29日からなかなかハードだった。この日の午前10時に大久保公園で「コロナ相談村」が開村し、午後から相談員をしていたのだが、夕方には救急車に乗っていたからだ。運ばれたのは私ではない。経緯は以下の通りだが、まずは「コロナ相談村」について説明しよう。

 この「村」を開催したのは、2008年の「年越し派遣村」を支えたメンバーら。主に労働組合関係の有志たちだ。東京の新宿・大久保公園で開催された理由のひとつには、そこが「TOKYOチャレンジネット」の隣だからという理由がある。

 東京都が、住まいのない人のために年末年始1日1000室のホテルを開放するということはこの連載でも書いてきた通りだが、広報もあまりなく、いつどこに行ってどうやって手続きすればホテルに入れるかがわかりづらい。また、「年末年始にタダでホテルに泊まれる」ということを知らない野宿の人やネットカフェ生活者も多くいる。ということで、大久保公園で相談会を開催し、隣のチャレンジネット(ホテル利用の窓口)に繋げようという目的で開催された。

 もちろん、ホテル宿泊だけでなく、労働相談や生活保護申請(新宿区などでは年末年始も開庁していたので申請もできる)、その他の相談を受け付ける体制を実行委員メンバーは実に短期間で作り上げてくれたのだ。

年越し支援・コロナ被害相談村の前で

年越し支援・コロナ被害相談村の前で

 ちなみに相談員は、相談者がホテル宿泊を希望する場合はチャレンジネットに同行する。生活保護申請をする場合は福祉事務所へ。ホテルの場合、「利用票」とホテルの地図をもらったら、本人がチェックインする仕組みだ。そうすれば1月4日の朝まで暖かい部屋で過ごせる。日本列島を寒波が襲うと言われた年末年始、凍死から身を守るためにも一人でも多くの人にホテルに泊まってもらいたいという思いから始まった相談村。1月4日以降、行き場がない人は生活保護など公的制度を申請すればいい。

 ということで、この日、チャレンジネットに同行させてもらったのはAさんという50代の男性。コロナで仕事がなくなり、この5ヶ月ほど、新宿で野宿をしてきたという男性だ。

 チャレンジネットで面談した結果、この日からホテルに泊まれることになったのだが(年末年始は仕事があるそうで、生活保護申請については仕事が終わったあとに考えるということ)、Aさん、この相談会のような取り組みがあることにいたく感動し、「自分が野宿している場所にいる他の人たちにも伝えたい」と申し出てくれた。そうしてAさんの案内で、新宿のとあるエリアに。そこで野宿の人々に声をかけている時に出会ったのが、Bさん。大きな荷物を両手に持ち、ボロボロになった衣服で歩く高齢の男性だった。同行していた山本太郎氏がすかさず声をかけ、今夜から4日までホテルに泊まれることなどを伝えると、「ぜひ泊まりたい」という返事。

 そんなBさんが「心臓が痛い」と動けなくなったのは、徒歩10分ほどの大久保公園に案内している途中だった。慌てて「コロナ相談村」に連絡すると、ボランティア医師として入ってくれている谷川智行さん(谷川さんもこの年末年始、ずーっと支援の現場でボランティア医師をされていました)が来てくれることに。谷川医師がその場で話を聞きとり、「救急車を呼んだ方がいい」ということになり、私も同乗して病院へ。診察の結果、身体の状態は非常に悪く、最低でも2週間の入院が必要とのことで、そのまま入院となったのだった。

 それにしても、それほど体調が悪い高齢者がこの寒空のもと、大荷物を持って移動し、野宿生活をしていたことに驚愕した。どれほど過酷な日々だったろう。改めて、言葉を失う思いがした。

 この日、コロナ相談村には56件の相談が寄せられた。男性44件、女性12件。ちなみに13年前の年越し派遣村に来たのは505人。うち女性はたった5人だった。それを思うと、女性の困窮の拡大は当時と桁違いである。

 翌30日も「コロナ相談村」。

 嬉しかったのは、前日、チャレンジネットに同行し、野宿の人たちの元に案内してくれたAさんが、「スタッフ」となっていたこと。家なき人たちを相談会に繋げたいと、この日も組合の人を野宿者が多いエリアに案内したりと大活躍だったのだ。たった1日で、「支援される側」だった人が「支援する側」になっている。そんな姿を見るたびに、こういう活動をしていて良かったと思う。

 夕方から池袋のTENOHASIの炊き出しへ。18時からのお弁当配布には寒空のもと200人以上が並び、あっという間になくなった。配っている間にも寒さは厳しくなり、容赦なく寒風が吹きすさぶ。2時間ほど外にいて冷え切ったが、私は家に帰ればお風呂に入れる。しかし、炊き出しに並んでいた人たちの多くは、一晩を野外で過ごさなければならないのだ。

 一年前と比較して、列に女性の姿が目立った。中には若い女性の姿もあった。

 大晦日は前日のTENOHASIと同じ東池袋中央公園にて、「新型コロナ災害緊急アクション」などによる「臨時相談会」。

 この日、チャレンジネットは閉まっているのでホテル案内はできないと思っていたものの、午前に、マガジン9のメンバーであり現在は豊島区議会議員の塚田ひさこさんと電話で話し、新事実が発覚。午後1〜5時まで豊島区役所では職員が対応しておりホテルに入れること、生活保護申請もできることなどを知る。このように、行政の情報が直前までわからないことが支援を難しくさせている側面もあるが、この年末年始の豊島区の対応は素晴らしかった。この日だけでなく、1月1〜3日も職員が対応してくれてホテル案内と生活保護申請ができたのだ。

 午後3時開始の相談会には2時半頃から多くの人が行列を作り、3時前から相談を受け付けることに。

 私も相談員として入ったのだが、担当した8人ほどのうち、半分以上がすでに野宿。住まいはまだあるものの所持金ゼロという人も少なくない。年末年始、タダでホテルが提供されていることを全く知らない野宿の人も数人いた。情報を伝えると「本当に泊まれるんですか?」と驚き、身を乗り出す。

 よく「ホームレスは好きでああいう生活をしている」なんて言う人がいるが、誰が極寒の中、野宿したいと思うだろう。しかも現代の「ホームレス状態の人」の多くは、コロナ禍によって路上に追い出された人たちだ。「ホテルに泊まれる」と知った時のみんなの嬉しそうな顔が忘れられない。結局、この日対応した人のほとんどがそのままホテル宿泊となり、何人かは生活保護申請も同時にした。公園で相談を受け、役所に同行を繰り返す。

 この日、嬉しかったのは、12月19日に日比谷公園で開催された「なんでも相談会」で相談を受けた人が来てくれたこと。40代の男性なのだが、4年ほど野宿生活をしているということで、生活保護などの制度についてほとんど知らないようだった。日比谷公園の時は話をし、食品をもらうだけで帰ったのだが、この日はその足で区役所に行き生活保護申請。同時に、この日からホテルに泊まることになったのだ。

 役所まで同行したのだが、わずか10日ほど前は公的福祉についてほとんど知らなかった彼が、こうして制度に無事繋がった姿を見るのはこの上ない喜びだった。まだまだ40代。野宿をしていればごく限られた仕事しかできないが、アパートが決まれば仕事だって見つかりやすくなるし、その幅もぐっと広がる。4年間を路上で過ごすしかなかった彼が、こうして相談会に繋がり、生活再建の手がかりをつかんだことが嬉しかった。

 1月1日、元日。

 横浜・寿町の炊き出しに配食の手伝いに。配食は2時からだったものの、1時半前からすでに長い行列ができている。コロナ対策ということで例年より規模を縮小し、ボランティアも少なくやっているということだったが、それでも500食の中華丼があっという間になくなった。

 行列に並ぶ人に、若者や女性がやはり例年より増えている印象。

 その後、年越し大人食堂に行くと、福島みずほさんや山添拓さんといった国会議員も相談員をやっていた。ちなみに山本太郎氏も大人食堂とコロナ相談村では相談員をしている。

 私も相談員をやってきたが、これほど緊張する仕事はないとも思う。相談する方も当然緊張しているが、相談を受ける方も緊張しているのだ。なぜなら、相談に来る人は、人生において危機的状況にあるからだ。人生の、もっとも重大な局面である。間違いは決して許されない。だからこそ、自分でわからない時や知識が曖昧な時は、その問題に詳しいプロに聞く。

 私は生活保護関係にはそこそこ詳しいが、例えば労働問題に関する知識はそれほどない。借金や相続といった込み入った話になると法律家の出番だ。外国人の相談の場合は専門家でないと対処できないことも多いし、まずは通訳が必要になる。様々な相談に対処できるよう、大人食堂でもコロナ相談村でも、相談会場には弁護士や労働組合の人、司法書士や元ケースワーカー、外国人問題に詳しい専門家や通訳がスタンバイしている。健康相談のためのお医者さんもいる。労働問題は組合の人にいろいろ教えてもらい、逆に生活保護の問題になると組合の人にこちらがいろいろ情報を伝えることもある。

 このような相談会を、昨年は何度も繰り返した。コロナ禍での電話相談会で鍛えられたのだ。コロコロ変わる制度の運用や新しくできた給付金制度についての勉強をし、みんなで相談マニュアルをアップデートさせていた日々の蓄積。電話相談での相談員をすることで、私は昨年、少しずつ「相談」に慣れていった。

 この日の夜、相談会のチラシを都内某駅で配布した。ただチラシを配っても仕方ないので、行き場がなさそうな人に声をかけて渡した。駅の地下街には、正月休みの飲食店の前のベンチに数人が所在なく座っていた。一人ずつスペースを開けて、決して関わることはなく、それぞれが俯いていた。その中には女性もいた。住まいを失ったばかりですでに1円もないという若者もいた。相談会があること、ホテルに泊まれることを告げ、「行くお金がない」という人には電車賃を渡した。元旦の夜、寒さに耐え、空腹を堪え、ただただ地下街のベンチに座り続ける人がいる。地下街が閉まれば、凍死しないよう夜通し歩くしかない人たちがいる。

 別の支援者はSOSを受けて都内某所に行った。SOSをくれた人が住む家は、すでに電気やガスも止まっているという。このまま行けば、「餓死事件」となって世間を騒がせてもおかしくないほどの困窮ぶりだ。めでたいはずのお正月、どれほどの人が、眠れないほどの不安の中にいるのだろう。

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