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“人権問題を無視する日本”の印象が付く? 慰安婦裁判「賠償金」の出どころ - 菅野 朋子

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 新たな火種になるのか。

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 元慰安婦とその遺族らが日本(国)を相手に起こしていた裁判の一審判決が1月8日と13日に相次いで言い渡される予定で、その判決の行方が注目されている。


©文藝春秋

1月8日の原告は「ナヌムの家」側の元慰安婦とその遺族

 8日の裁判の原告は、社会福祉法人「大韓仏教曹渓宗ナヌムの家」の元慰安婦とその遺族12人。この中には故人も含まれている。

 2013年8月にソウル中央地方裁判所へ日本政府を相手に1人当たり1億ウォン(約950万円)の損害賠償を求める民事調停を申請し、16年1月に裁判に移行した。昨年4月に第1回の口頭弁論が開かれている。

 申請は、2015年12月に日韓政府で合意した「慰安婦合意」前になる。その背景について原告側の金江苑弁護士に話を聞いた。

「訴訟は是非を問うものですから、相互で譲歩が可能であり、柔軟性がある調停を申請しました。

 調停を申請した2013年の2年後は2015年。韓国でいう解放、日本でいう終戦から70周年、そして、韓国と日本が締結した韓日基本条約からは50周年にあたる意味のある年で、この年に解決できるよう動き始めました」

 その後、日本政府は書類を受け取らなかったため、2016年1月にソウル中央地裁の判事が調停不成立とし、裁判に移行したという。金弁護士はナヌムの家の顧問弁護士を20年前から務めており、「私の母親も幼い時に(慰安婦として)連れていかれそうになり間一髪で逃げてきた経験がありまして、この裁判に使命感を持っています」と言う。

日本政府は「国家免除」を主張

 8日の裁判で争点となるのは、日本が主張する「国家(主権)免除」を認めるか否かだ。「国家免除」とは、ある国の裁判所が他国を訴訟の当事者として裁判を行うことはできないというもので、国際法では原則とされている。日本政府はこの「国家免除」の立場から裁判が成り立たないとして、ソウル中央地裁から送られた訴状の受け取りも拒否してきた。

 ソウル中央地裁が2019年4月に公示送達とみなす手続きを行い、その効力が発生し、昨年4月に最初の裁判が開かれた経緯がある。

 日本が一貫してきた「国家免除」という立場については韓国内の専門家の意見も分かれる。「国際法や国際協約などに照らし合わせると管轄権なしとなり、日本は国家免除となって棄却される可能性が高い」という意見があれば、「国際法は発展段階でもあり、ケースによって適用されるか否かも変わってきている。今回の場合は、日本は国家免除とはならない」という見方もある。

「人権問題については国家免除は認められない」との考え方も

 オ・スンジン檀国大学教授は「裁判所がどのような判断を下すのか、予想することはとても難しい」としながら、こう語った。

「国際法の伝統的な原則に照らし合わせれば、その国で起こされた裁判で他国を相手にした訴訟は成り立ちません。ただ、国際社会では伝統的な概念が間違っていたとする判決がでており、欧州では人権問題を扱う裁判については国を相手に訴訟は可能とする概念も少数ではありますがでてきています」

 その例としてあげられるのが、イタリアとドイツ間で行われた裁判だという。今回の裁判でも原告側はこのケースを引用している。

 これは、戦時中にドイツに捕らえられて強制労働させられたとするイタリア人が、1998年、イタリアの裁判所にドイツを相手に損害賠償を求め提訴したもの。ドイツは「国家免除」の立場をとって裁判却下を求めていたが、イタリアで行われていた裁判は一転二転しながらも、イタリア最高裁判所で原告勝訴の判決が確定した。ドイツは2008年、「イタリア最高裁の判決は国際法上の義務に違反している」として国際司法裁判所(ICJ)に提訴し、2012年にドイツの訴えが認容されている。

 ICJの判決を受けてイタリアでは判決受け入れのための法改正をしたが、その2年後の2014年、イタリアの憲法裁判所は、イタリアの憲法により保証されている裁判を受ける権利を侵害しているとして、ICJの判決を違憲とし、「被害者を救済した」(韓国の国際法専門家)という。また、「ドイツは原則的には国際法により勝訴しましたが、イタリアの憲法裁判所の判決のほうが国際的には注目を集めました」とオ教授は話す。

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