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『家電のショールーム』よりも『データの管理金庫』

 ソニー、パナソニック、シャープと、日本を代表する大手家電メーカーが大赤字経営に陥っているせいもあってか、家電量販店の年間売上も軒並みダウン傾向にあるらしい。

 最近はアマゾンの電子書籍リーダー、キンドルが発売されたものの、一部の大手家電量販店では販売そのものが見送られたということも話題になっていた。一応は家電製品であっても、その商品が売れることによって自社の経営に痛手を被る可能性のあるものについては販売するわけにはいかないということらしいのだが、それなら楽天のコボでも同じだと思えるのだが、なぜかコボの方は取り扱われている。

 リアルな巨大空間を抱えた店舗が、仮想空間しか持たないオンライン店舗に圧されており、この流れを食い止めるためにはどうすればいいのか?という話題も事欠かない。最近よく聞かれるのが、家電量販店の“ショールーム化”というもので、消費者は現物商品のみを家電量販店で確認し、実際の購入はネット通販で行うというものだが、これも少々、現実味のない話ではある。

 実際、家電量販店を無料のショールームとして利用しているネットユーザーは多いと思われるが、本当に広大な敷地を利用して家電のショールームなどを作ったとしても、おそらくはペイできないと思う。人通りの多い小さな敷地で管理人員が1人というようなショールームであれば運営可能かもしれないが、販売を行わないショールームのみでは到底採算が合わないだろう。

 「販売も行えばいいのでは?」と思った人がいるかもしれないが、そうなると、本当に購入目的で来店した人は、ショールーム利用料金まで支払わなければならないということになってしまう。

 「商品を購入した人は無料にすればいいのでは?」と思った人もいるかもしれないが、その場合も、目的の商品が無かった場合はどうするのか?という問題が生じる。端から購入する気が無いのに“目当ての商品が無い”という理由で、まんまと無料でショールームを利用するという不届き者が出てくることは間違いない。そういった不正を許す隙間を与えるようなビジネスモデルでは無理がある。隙間だらけの市場でニッチなサービスというのは、洒落にはなっても商売にはならない。

 ショールーム化のようなビジネスモデルが成り立つには、国民のほぼ全員がネットで買い物ができるという時代的条件が必要になってくるが、現在のところ、幸か不幸か、まだそういった前提条件が成立していないと思われるので時期尚早の感は否めない。

 車や宝石といった高価な商品のショールームビジネスであれば、それなりに閲覧料金も請求できるかもしれないが、家電製品を見ることにお金を支払うという感覚は通常では考えられない。

 例えば、ある電化製品がリアル店では10万円、ネット店では8万円で売られていた場合、商品見学料金として1万円支払おうなどという人はいないと思う。5千円でも3千円でも無理だろう。せいぜい千円が関の山だと思う。そもそも、お金を支払うぐらいなら、カタログだけを見て選ぶという人がほとんどだろうから、利益が出せる商売にはならないと考えた方が正解だと思う。

 では、家電量販店はネットの仮想量販店にどう対抗していけばいいのか?

 これに対する答えでよく聞かれるのが、「家電量販店の百貨店化(またはコンビニ化)」というもので、広大な敷地を活かして家電以外の商品も販売すれば集客効果は望めるのではないかという意見が多いようだ。

 しかし、これは既に多くの家電量販店で行われていることであり、医薬品や日用品、カー用品、書籍など様々な商品が既に販売されている。しかしながら、売れ筋商品のみに焦点を絞らざるを得ないので、どうしても“狭く・浅く”という感じの商品陳列に成りがちであり、大幅な集客効果は望めそうにない。

 将来的に安定的な集客を見込むためには、基本的に、ネットでは売れない商品を開発していくしかないのではないかと思う。最近では、家電量販店最大手のヤマダ電機がエス・バイ・エルを子会社化したことが記憶に新しいところで、太陽光発電や省エネ家電などのセット販売などが行われている。確かに住宅ともなると、さすがにネットショップでは販売できないので、その発想は良いのではないかと思う。ただ、住宅と家電をセット販売するだけでは、勿体無いような気がする。どうせなら、家電住宅ならぬコンピューター住宅でも開発すればどうかと思う。

 例えば、現代では個人がパソコンを所有することが当たり前になり、一家に何台もパソコンが置いてある風景を見ることも珍しくなくなったが、パソコンをヘビーに使用している人なら誰もが1度はこう思ったことがあると思う。

 「このパソコン(またはデータ)が盗まれたらどうしよう

 私自身、そう思ったことは何度もある。個人的にはデータのバックアップは定期的に取得しているが、それでもバックアップファイルごと盗まれたらどうしようと思うことがある。火事や震災などでもデータが失われる場合があるかもしれない。

 自宅以外のどこかにデータを保管したいという需要もあるので、オンライン・ストレージ・サービスも流行り(私も個人的に契約している)だが、これとて、そのサーバーを管理している会社のミスでデータが失われてしまう可能性がある。(実際、少し前にヤフーの子会社「ファーストサーバ」でも発生した)

 それに、いくらプロのデータ管理会社とはいえ、自分自身の重要な情報(個人情報やパスワードなど)まで外部に保存しておくというのは恐いものがある。一時、クラウドで世界中の人々がデータを共有するというようなことが騒がれたが、まさか個人情報までクラウド化されることは有り得ない。知らない間にハッカーに丸ごとデータを盗まれるというようなことも可能性としては有り得る話なので、やはり、本当に重要なデータは自宅の安全な所に保管しておきたいと思うのが人情だと思う。そんなことを考えているパソコンユーザーは案外多いのではないかと思う。

 そこで登場するのが、住宅据え付け型の『データ管理金庫』だ。パソコンのハードディスクは、パソコン本体ではなく、住宅に設置されたデータ金庫のようなもので管理するというイメージだ。全ての部屋からケーブル回線によって接続可能で、堅牢にガードされたデータ管理金庫のようなものを作ればいい。火事でも燃えず、盗まれる心配もないバックアップ機能付きのデータ管理金庫を家の床にでも埋め込めば立派なパソコン住宅の出来上がりだ。

 もちろん、日進月歩の激しい業界だから、セットでメンテナンス契約や交換修理なども行えば継続的な需要が見込める。さすがのネット業者も保守メンテナンスまでは対応できないので、そこは家電量販店の信用の見せ所だろう。

 銀行にお金を預けた場合、そのお金が盗まれても、同じ金額のお金を銀行が保証してくれれば特に問題は無いが、データとなると話は別で、盗まれた場合、その保証ができない。

 デジタルデータは際限無くコピーが可能なので、価値が無いと思われがちだが、唯一無二のデータは、お金では買えない絶対的な価値を有している。たとえ、100万円積まれても、1億円積まれても、1つしかないデータは買う(取り戻す)ことができない。この単純にして冷厳な事実を理解すれば、データを安全に保管するという設備には、多少のお金をかけても構わないという人々は増加することはあっても減少することはないと思う。つまり、そこには、潜在的な大きな需要が隠れている可能性が有るということでもある。

 現金や貯金通帳という資産を堂々と机の上に置いたまま旅行に出かけるような人はいないが、データという資産の場合は未だそうはなっておらず、堂々と机の上(パソコン)に置いたまま出かける人が多い。しかし、パソコンでデータを作るような仕事をしている人の場合は、これがいかに危険な行為であるかが理解して頂けるのではないかと思う。仕事をしていなくても、趣味のデータや個人情報が入ったデータが突然、目の前から消えてしまうことの恐ろしさは解って頂けるのではないかと思う。どちらにしても、データというものが貴重な資産であることに疑いを入れる余地はないだろう。

 情報漏洩や悪質なハッカーの存在が問題となっている昨今、「もし、このパソコン(と共にデータ)が盗まれたらどうしよう」と考えている人は多いと思う。データを自宅で管理する『情報金庫』の潜在需要は決して少なくないはずだし、将来的には実際に商売として成り立つかもしれない。

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