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メディアに興味をもつ

頼まれ仕事があって、ここのところ企業のメディアとの付き合い方のようなことに昼夜を通して考えをめぐらしているのだけれど、メディアと関係を構築したいと思うならメディアに関心を持ち続けることなんだ、との思いを強くした。ふつう、好きな人がいたら相手のことを知りたいと思いますよね。

でも、いろいろ話を聞いていると、企業の広報が必ずしもメディアを知ろうとしていないと感じることがある。

広報で失敗するのは、だいたいが企業の都合のみで動いてしまったときである。そもそも企業の都合で記者発表会を開いているのに質問を受けずにさっさと社長が退席してしまうとか、企業の都合で取材してもらったのにXX新聞に記事が載るまで書かないでくださいとか。(信じられませんが、実際に聞いた話です)

こういう話を聞くと、この会社はメディアを自分の仕事の道具としか思ってないな、ということは記者や編集者がどんな立場で仕事をしているのか興味ないんだな、そもそもメディアそのものにも関心がないんだろうな、と悲しくなってしまう。

わたしも駆け出しの頃、メディアの立場と企業の立場を考量する技量 (あるいは器量といったほうがいいかもしれない) が欠けていて、少なからず失敗した。でも、仕事の大事な相手として、そしてメディア産業そのものにも興味があり、メディアのことを知りたいという気持ちを失うことはなかった。だから、それを失敗と認めることができ、次に生かすことができた(と思う)。

マスメディアに興味のない人に広報はつとまらない。というか、やってもたぶんつまんないんじゃないか。

というわけで、わたしも広報のハシクレとしてメディアというものにとても関心があるので、昨日の夜、BLOGOSと日本財団が主催の「外国特派員から見た日本のメディア」というトークセッションを聴きに行った。当研究所もBLOGOSに参加してるんです。

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ゲストは、ニューヨーク・タイムズ東京支局長のマーティン・ファクラー氏とAP通信社特派員の影山優理氏である。今年出版されたファクラーさんの「「本当のこと」を伝えない日本の新聞」(左の写真)は興味深く読んだので、普段は飲酒のためにしか夜出かけたことがないくせに、昨夜は一念発起して溜池にある日本財団ビルまでとことこ出かけた。(セッションの様子は日本財団のブログで紹介されています)

1時間半におよんだセッションで、日米の報道の違いからジャーナリズムの今後までいろんな話が飛び出したが、わたし個人としてもっとも興味深かったのが、ダイバーシティーについてである。日本語では多様性と訳されることが多い。

ちょうど日本でも、週刊朝日の橋下大阪市長に関する連載騒動の顛末があったばかり。AP通信の影山さんによると、アメリカの報道機関は「差別はしないが絶対」で、たとえば車椅子に乗っているとか、中国人のとか、アフリカ系のとか、あるいは男か女か、そして年齢にしても、ニュースの内容と直接関係ない個人の属性は書いてはならないという、厳重なガイドラインがあるそうだ。AP通信には、ひたすら言葉遣いのチェックをするStandard Editorという役割があると知った。

ファクラーさんは、アメリカのダイバーシティーにおける転機は第2次世界大戦だった、と分析してみせた。つまり、ユダヤ人差別のナチスドイツを敵としながら、自らは黒人部隊や日系人部隊を編成するという矛盾を抱えたことがアメリカには大きかったんだと。そのあまりにも明確な矛盾が、後の公民権運動後のアメリカにつながっていったという考え方があることを知った。

そういえば、米国系企業の日本法人で広報をしているとき、米国本社から社長が送り込まれてきたときがあった。報道発表のために新社長の略歴を準備する。日本の慣習に合わせると、生年月日から始まり、出身校と卒業年、新卒で何年にどこに勤めたのか、その後いつどんな役職についたのかを時系列であらわすことになる。アメリカの企業の略歴は、行ってきた仕事の成果が書いてあるだけで、生年月日や年齢や入社年が書いてあるものはほとんどない。日本の記者が求めるからと言って、なんとか日本スタイルの略歴を用意した。

しかし、生年月日と年齢に関しては、最後まで腑に落ちなかった様子だった。新社長は当時まだ40を越えたばかりの若さだったので、来日してメディアのインタビューで年齢のことを必ず聞かれる。そのたびに、年齢は特に気にしたことがない、若いか年を取っているかは仕事に直接関係ない、なんで日本人は年齢のことにそんなに関心があるんだい、と不思議そうな顔をしていたことを思い出す。

話はそれましたが、とにもかくにも、広報の仕事をしているのなら、もっとメディアについて興味を持ちましょうよ!

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