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コロナ禍がマグロ消費に与えた意外な影響 家庭での消費伸びた割安な本マグロ - 山本謙治(農と食のジャーナリスト)

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これから日本人はどうクロマグロを食べるべきか

写真AC

この記事に求められていた「コロナ禍がマグロ消費に与える影響は?」というテーマについては上記のような結果だったのだが、2021年、わたしたち日本人はクロマグロ、いや魚に対してどのように対するべきだろうか。ひと言でいえば、2020年に湧き上がったSDGsの考え方に乗っ取り、持続可能な漁業を応援することといえるだろう。

じつは2020年は水産業にとって歴史的な転換点となる年だった。というのも、12月1日に新しい漁業法が施行されたのだ。クロマグロに限らず、日本の漁業では生産量の減少が続いており、2019年度には統計調査の開始以来最低の生産量をマークしている。生産量減の背景としては、気候変動など自然由来の要因もあるものの、親魚も未成魚も獲りすぎてしまうことで、資源が回復できないでいる可能性も指摘されている。今回の法改正ではそうしたことに歯止めをかけるため、水産資源がどの程度あるのかを科学的に明らかにすること、それを踏まえて、漁獲可能な量を定めるTACという制度を多くの魚種に導入することとなった。この上限量は、生まれてくる魚を一定以上確保でき、その魚種が持続的に増えていくと考えられる量なのである。

また、TACを直接、漁業者または船舶ごとに割り当てるため、責任が明確化され、各漁業者がもっともよい時期によい魚を見極めて漁獲するモチベーションを持つことが期待される。これまでの漁業は「オリンピック方式」と呼ばれることもあり、燃料を焚いて誰よりも早く漁場へ到達し、魚を一網打尽に獲り尽くしてしまうやり方だと揶揄されていた。そうした競争的漁業では、同じ時期に同じ魚種が大量に水揚げされるため、かえって価格は安くなり、漁業者の首を絞めるという側面もあった。新漁業法でTACが漁業者や船舶ごとに割り当てられると、ヨーイドンで早く獲ることには意味がなくなる。それよりも、成熟し高値が付く個体を、他の漁師が出ていない時期を見計らって獲る方が競争もなく、高値で売ることができる。そうした漁業が結果的に水産資源の持続可能性につながるわけだ。

高値を付けた“持続可能な”マグロ

Getty Images

もうひとつ、歴史的な転換が昨年あった。それは宮城県の臼福本店という大西洋クロマグロの漁業者が、持続可能な漁業であることの証として国際的に評価されるMSC認証を取得したのだ。大西洋クロマグロは管理組織により、各国政府と連携し厳しいルールを敷いて資源回復の取り組みが行われてきた。これにより、太平洋クロマグロを尻目に資源量がV字回復。今回の臼福本店のMSC認証取得は、ルールを守って漁獲する限りにおいて、大西洋クロマグロは持続可能な資源となったということを示している。臼福本店の大西洋クロマグロは昨年9月に豊洲市場のセリにかけられ、通常のクロマグロの2倍近い高値で落札された。関係者からも注目を集められている証である。

こうした持続可能なクロマグロは、資源管理をするためのコストがかかるため新型コロナ下のどさくさで行き場を失ったクロマグロのように「安く買える」というわけにはいかないだろう。だが、日本人がこれからもマグロを食べる文化を大切にし、食べ続けていきたいと願うのであれば、消費者としても持続可能な方向へ舵を切らねばならない。先の豊洲市場の水産仲卸の社長の印象的な言葉を紹介しよう。

「日本近海で獲れる魚は4000種類以上に上りますが、市場に入荷するのは200種類。それ以外はほぼ捨てられているのが現状です。クロマグロだけをありがたがるのではなく、資源量が豊富な他の魚種にも目を向けて欲しい。たとえばクロマグロに比べれば資源量が豊富なメバチマグロのよいものは、赤身もトロもクロマグロに負けないと思います。消費者のみなさんにはとにかく、いろいろな魚に目を向けて下さい、と言いたいですね」

今年1年、クロマグロだけではなく、持続可能性に配慮した上で、いろんな魚を味わってみる年にしてみてはいかがだろうか。

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