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先輩たる日本からアメリカへのアドバイス

 旧来の風習・伝統を重んじ、それを保存しようとすること。↔革新。――「保守」とは辞書において、そのように定義されています。この定義をアメリカ大統領選に当てはめるならばバイデンが「保守」であり、トランプが「革新」の代表者となるわけです。

 ところが日米を問わず「保守」を称しているのは専ら保守的な政治家とは真逆の人々であり、その性質を端的に言い表すとしたら差別主義だったりします。

 例えば「なし崩し」「確信犯」という言葉は伝統的に辞書で説明されてきた用法とは異なる意味で使われることの方が一般的となり、むしろ辞書の方が時代に合わせて変化しつつあります。「保守」も然りで、今の辞典で流通している辞書とは全く異なる意味で使われているところですが、いずれは保守を称する人々の思想信条を正しく表明する定義が辞書に掲載されることもあるでしょうか。

 そして政治的な文脈で「保守」の対に置かれがちなのが「リベラル」という言葉です。これも辞書では「個人の自由、個性を重んずるさま。自由主義的。」などと定義されますけれど、「リベラル」と称される政党・政治家に当てはまるかと言えば実際には異なることの方が多いでしょう。むしろ(自称)保守の対概念として、差別主義者から毛嫌いされている勢力を指しているだけだったりするのが一般的と言えます。

 それが有意義なものであるかは別問題として、バイデンとトランプのどちらに「新しさ」があるかと言えば論じるまでもなくトランプです。ただ移民よりも父祖からのアメリカ人の、有色人種よりも白人の、女性よりも男性の、新しい産業よりも旧来の産業の既得権益を守ることを期待されてきたという面ではかろうじて「保守」と呼べるのかも知れません。

 ともあれこの「新しさ」と「保守」の融合は、日本では小泉改革を思い起こさせるところでしょうか。小泉純一郎もトランプと同様に異端派として党内からは必ずしも歓迎される船出でなかった一方、異端派であるが故に有権者からは「新しさ」を期待されて広い支持を集めました。そして実行された「改革」は、富める者をより豊かに、貧しい者を貧しいままにする、格差を拡大・固定化するものだったわけです。

 従来の政治家とは異なる「新しさ」への期待から支持を厚め、格差を広げる「改革」を実行した小泉純一郎、差別心を隠そうともしない言動で東京都民からの揺るがぬ人気を博した石原慎太郎、この二人の融合系がトランプであり、トランプが4年前に当選したときには「アメリカが日本に追いついた」と私は感じました。そこからアメリカは4年で政権交代となったわけですが、この先はどうなるでしょうか。

 日本の民主党とアメリカの民主党、ある程度までは共通点もあります。共に二大保守政党の一翼であること、支持基盤が都市部寄りで地方選挙区に弱く、選挙制度の面で不利益を被っていること。そして毛嫌いする人からはリベラルとのレッテルを貼られがちなところでしょうか。もちろん異なる点も少なくありませんが、日本の民主党の失敗からアメリカの民主党が学べることも多いように思います。

参考、民主党政権とは何だったのか

 日本の民主党は「保守」を称する人々から貼られた「リベラル」のレッテルを払拭すべく、その政策はむしろ右に重心を置くものでした。結果として「保守」からの支持を集めることが出来たかと言えば、その努力は灰燼に帰したと言うほかありません。どのような政策を採ろうと、民主党に「リベラル」のレッテルを貼る人々からすれば、民主党は永遠に「保守」と相容れない「リベラル」な党だったわけです。

 日本でもアメリカでも社会の「分断」を問題視する論調は強まっています。ではこの分断に、どう対処していくべきなのでしょうか。確実なのは、譲渡や妥協は何も解決しないと言うことです。日本の民主党がそうであったように、アメリカの民主党が「保守」に迎合した政策をどれほど打ち出したところで、トランプ支持層が民主党になびくようなことはあり得ないわけです。

 レイシズムを否定する大統領と差別主義者の間では当然のことながら分断が生まれることでしょう。ではレイシズムを否定しない大統領の下ではどうだったのか――差別主義者が自信を深めることはあっても、それが社会の分断を解消することはありませんでした。差別主義者を前に唯一やれることは、毅然として立ち向かうことだけです。

 1937年よりイギリスの首相を務めたネヴィル・チェンバレンは反共勢力の分断を避けるべくナチス・ドイツへの宥和政策を貫徹し、それが一時は肯定的に評価されていました。後の歴史は誰もが知るところですが、ここからも学ぶべきものはあるように思います。

 妥協と譲渡は対立勢力へのプレゼントにはなるかも知れませんが、その見返りはありません。バイデン政権が過去の失敗を繰り返さないためには、トランプ支持層を社会的に抹殺する覚悟で臨む以外にないでしょう。

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