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時短要請を午後8時までに前倒し “密”な環境が生まれ逆効果とのデータも

共同通信社

東京と埼玉、千葉、神奈川の1都3県の知事が4日、テレビ会議をおこない、飲食店に申し入れる営業時間短縮について、午後10時から午後8時までに前倒しすることを決めた。8~11日は酒類を提供する飲食店など、12~31日は飲食店全般に対象を広げ、短縮を要請する営業時間を前倒しする。

当事者の飲食店経営者からは、時間を短縮することで営業終了前の駆け込み需要で店内が混雑し、かえって“密”な環境を生んでしまうとの指摘も根強い。時短営業や休業への補償が不十分とされることと相まって、飲食業界にとっては、現場の苦悩が自治体に届いていないと感じられる場面が多くなっている。

自粛要請期間中は約1.4倍高い店内密度に

AP

飲食店の予約サイト「テーブルチェック」社のデータによると、東京都内の飲食店では、営業時間短縮要請が出された期間に、店舗当たりの来店人数の密度が高くなったという。

同社は、東京都内の飲食店約2000店への来店者数について、東京都が2回目の営業時間短縮要請を出した11月28日以降の16日間と、27日以前の16日間を比較。1時間当たりの店舗内密度は、営業時間短縮要請前を1.00として基準とした場合、要請期間中は1.40と密度は1.4倍ほどに達した。

昨年12月に同サイトに掲載された記事では、長時間の滞在やアルコールを過剰摂取する機会を減らすことに時短要請の目的がある点に触れつつ、感染症対策の重要課題とされる密度を増大させる観点では逆効果となる可能性を指摘。都に対し、再び時短要請や時短営業の期間延長を検討する際には、「データに基づき、客観的かつ合理的な判断」をするよう求めていた。

時短、席数削減で飲食店は「売上の上限が見えてしまう」

共同通信社

都内で飲食店を営むある男性は、本来夜10時半まで営業していたが、昨年8月からは2度にわたる営業時間短縮要請に従い、閉店時間を早めてきた。一方で、感染対策における重要な課題とされる密な空間が時短営業によって生まれてしまうことを危惧している。

また、営業時間が短くなると、商売の機会が限られるだけではない打撃を受けることになる。飲食店は通常、営業時間の長短にかかわらず、毎日の仕入れや閉店後の片付けといったコストが必要だ。営業時間が短くなることは、コストに見合わない非効率な営業を余儀なくされることを意味する。

男性の店でも、1日当たりの客数や売上が低下することだけではなく、客数も売上も「開店前から上限が見えてしまう」と肩を落とす。男性の店は、会社からの帰宅途中に寄る客も多く、午後8時以降にピークタイムを迎えることも少なくない。

「かつてないケースに財界や行政も対応を苦慮し、右往左往するしかないことは分かる」と理解を示しつつ、時短営業に対する補償も不十分だとして「飲食店だけを標的にしているのでは」と憤る。

限られた営業時間、外出自粛する都民 八方塞がりの飲食店

共同通信社

昨年夏に続いて、都が2度目の時短要請に踏み切ったのは、感染が拡大し“第3波”がいわれるようになった昨年11月のことだ。飲食店などに対し11月28日から12月17日まで20日間について、営業時間短縮を要請。小池都知事は当初「短期集中で」と呼びかけたが、年が明けても要請は解除されないまま、現在までに至っている。

都はこれまで、時短営業を始めた飲食店に対し、「協力金」名目の一時金を支給してきた。損失の全額補償を求める飲食店も多いが、都総合防災部の担当者は「財政上の限界がある」と話す。時短営業が2時間前倒しされることを受け、飲食店が営業できない時間が増えることから、協力金の増額を検討しているという。

2時間前倒しの効果に疑問の声があがっていることは都でも把握している。政府の新型コロナ分科会で会食における感染が「押さえるべき急所」とされており、昨年4月の緊急事態宣言当時と合わせる形で午後8時までの営業時短要請を決めた。

時短営業前倒しの要請と合わせて、都民には午後8時以降の外出自粛が呼びかけられる見通しで、日中も外出を控える人が増えることが想定される。飲食店は限られた時間でしか営業できない中、都知事による再三の「不要不急の外出自粛」呼びかけもあり、肝心の住民は多くが外出を控えるという構図が浮かぶ。

昨年8月の時短要請以降、飲食店などに対する補償は不十分だと指摘され続けている。今回は、都が協力金の増額を検討しているが、その内容次第で飲食店が不満を募らせることも十分に理解できる。

困難を極める感染防止と経済活動の両立

週内にも、4都県を対象に緊急事態宣言が発出されると報道されている。そうなれば、市民の自粛ムードは高まり、飲食店への足はより遠のいてしまうはずで、飲食店は相次ぐ窮地に明るい兆しが見えにくい。

都に託された感染対策と経済活動を両立させる舵取りは難しいものであることは間違いない。それでも、現場の声を汲み取った丁寧な補償など、飲食店関係者の実情に即した制度設計に期待したい。

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