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多国間主義復活を期待【2021年を占う!】国際関係

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パリ協定採択 COP21本会議(パリ 2018年) 出典:UNclimatechange

植木安弘(上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教授)

【まとめ】

・バイデン次期米大統領、多国間主義への回帰を目指す。

・コロナ禍もあり、多国間主義は後退している。

・日本は、多国間主義復活促進のための積極的な政策を。

コロナ禍に翻弄された2020年が終わり、ドナルド・トランプに振り回された4年が終わり、2021年は、「普通の生活」への回帰と多国間主義の復活が期待される年となりそうだ。しかし、この回帰は、単に元の時代に戻るのではなく、これまでのあり方を再点検し、新しい方向性を模索する大きな契機とすべきものである。

ジョー・バイデン次期米大統領は、1月20日の就任後直ちに多国間主義への回帰を宣言している。気候変動へのグローバルな対応を定めたパリ協定や世界保健機関(WHO)への復帰に加えて、イラン核合意再加入へ向けた動き、国連の人権理事会でのより積極系な関与、国連人口基金(UNFPA)や世界貿易機関(WTO)などでの財政的貢献の復活や貿易紛争解決メカニズムの正常化などに寄与するものと予想される。さらに、西側同盟諸国との関係など二国間関係でも改善が期待される。

しかし、バイデン政権の優先課題は、新型コロナによるパンデミックの一刻も早い克服と経済の立て直しのため、当面は国内重視の観点からの政策が打ち出されるだろう。

パンデミックへの対応ではワクチンの国内での普及が最優先となるが、パンデミックは国境を越えたグローバルな問題だけに、ワクチンのグローバルな普及に向けた対応に国連やEUと並んで米国がどの程度貢献できるか注目される。

▲写真 新型コロナ検査キット配布準備をするニューヨーク陸軍州兵、2020年5月26日(ニューヨーク州ブロンクス) 出典:New York National Guard  (U.S. Air National Guard photo by Senior Airman Sean Madden)

米国は、オバマ政権時代積極的なエボラ出血熱対策を打ち出し、予防体制の構築から対処へのロジ面での支援としての軍の派遣、西アフリカ諸国への保健支援などで大きな貢献を果たした経験から、バイデン次期大統領も国境を越えた支援に意欲を見せている。

パンデミックでは、中国の医療外交で途上国支援に遅れを取っているだけに、ワクチンの開発と普及で一歩先を行く米国は、ワクチン外交での自らの影響力の回復が政治的な要素も含んでいることを認識している。ただ、コロナ禍の発生源の調査とWHOの国際保健分野でのガバナンス能力の強化にどのような姿勢で臨むのかについてはまだ不明の点も多く、また、中国との摩擦も予想される。

中国は、WHOによるコロナ禍の発生源調査にはあまり協力的でなく、WHOへの財政貢献の増加や途上国への支援を通じてWHO内で政治的影響力を増している。米国としては、西側諸国と協調してWHO改革を推進していくのが最善策であるが、具体的な方針を決めるのには少し時間がかかるだろう。

気候変動への対処については、国際的な足並みが揃いつつある。パリ協定は、条約であるが各国の温暖化ガスの削減や気候変動への努力を促したもので強制力はない。しかし、米国のパリ協定の復帰は国際社会が気候変動対策で足並みを揃えることになり、脱炭素化を含む温室効果ガスゼロへの動きを加速することになる。

EUや日本は2050年までに、中国は2060年までに脱炭素化を実現するとの意向を表明しており、次期バイデン大統領も2050年まで脱炭素化を目指すことを明言している。

ロシアやインドなども漸次的に脱炭素化に取り組む姿勢を見せている。国連は、気候変動問題は人類にとって死活的問題であることを指摘してきたが、これまでにない多くの異常気象が頻繁に起こり、経済や社会、そして人命に大きな影響を与えることが現実の問題として強く認識されるようになったことが、気候変動への対処の動きを加速化して、国際協調を促すことに繋がっている。

ただ、脱炭素化には技術開発面での競争や困難、経済性、資金不足、雇用への影響などもあり、多国間主義をどのように促進するかは、単に国家間レベルの問題だけではなく、より広い市民社会の参画と努力が必要となる。

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