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「罪悪感に苛まれた」あの"持続化給付金コールセンター"で起きていたこと

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この夏、政府の持続化給付金をめぐってさまざまなトラブルが起きた。そのひとつが「コールセンターに電話がつながらない」というものだ。一体どんな問い合わせがあり、どんな対応が行われていたのか。元オペレーターがその内幕を明かす――。(第1回)

ずらっと並ぶヘルプデスクのヘッドフォン
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/eakrin rasadonyindee

「事業者の業務継続を支える」とは名ばかりの現実

「通常、給付までには2週間程度いただいております。恐れ入りますがもう少々お待ちいただけますでしょうか」

持続化給付金の申請者からの問い合わせに対して、相手が申請から2週間未満であれば、私は条件反射のようにこの決まり文句を唱えていました。各人のデータにきちんと当たっての進捗確認など、しません。なぜなら研修でそう指導されていたからです。業務中、手元に置いてあるトークマニュアルにも、はっきりそう図解されています。

持続化給付金とは、「感染症拡大により、営業自粛等により特に大きな影響を受ける事業者に対して、事業の継続を支え、再起の糧としていただくため、事業全般に広く使える給付金を給付」(公式ホームページより)する制度です。今年5月1日から来年1月15日まで申請を受け付けていて、給付条件を満たせば個人事業者で最大100万円、中小法人等なら最大200万円が支給されます。

私はこの夏から数カ月、『持続化給付金事業コールセンター』に勤務していました。ところが、コロナ禍に苦しむ相談者との接点となる場でまず最初に直面したのは、「事業者の業務継続を支える」とは名ばかりの現実だったのです。

給付金事務局やコールセンターの側の都合やルールに自ら縛られ、手助けを必要としている事業者をおざなりに扱う場面に何度も遭遇しました。正直に言えば、私自身がそうしてしまったこともあります……。

税金を原資とする事業の内幕を、少しでも多くの人に知っていただくべきではないか――。私はそう考えました。

これからの数回、今も胸の内に深く刻まれている記憶と、折に触れて残してきた記録を頼りに、持続化給付金コールセンターでの経験を手記という形で綴っていけたらと思います。

自己申告で記載したプロフィールだけで合格

これまで私は、オペレーターとしていくつかの業種のコールセンターを渡り歩いてきました。

直近の仕事がこの春で契約満了し、次の仕事を探していたところ、『申請手続きについてのお問い合わせ対応』という募集が目にとまりました。

勤務地は自宅からさほど遠くない渋谷で、時給もまあまあ。応募資格はコールセンターでの勤務経験だけで、就業は数カ月という期間限定契約。面接はなく、書類選考のみで決定するとあります。

さっそく応募してみると、その日のうちに派遣会社から採用を告げられました。登録フォームに自己申告で記載したプロフィールだけで合格が決まっていたのです。担当者はこう言いました。

「派遣先は今年の5月から申し込み受け付けが始まっている『持続化給付金』事業のコールセンターで、制度への質問や申請者からの問い合わせに対応する業務に就いていただきます」

応募から1週間とたたず、業務が始まりました。

具体的なマニュアルはなく、資料はサイトのプリントアウト

職場は、派遣先であるコールセンター運営会社の本社ビル内の2フロアを占有していました。

新人研修の日数は4日間。詳細な専用マニュアルがあるわけではなく、持続化給付金のホームページのプリントアウトと、電話応対フローチャートを中心に進められました。わずかな日数しか取れないだけに体系立てて丁寧に教え込むわけではなく、制度内容や電話応対ルールを駆け足でざっくりとさらうだけです。

コールセンターには、私の所属先も含めた複数の派遣会社からそれぞれオペレーターと、管理者であるリーダー、スーパーバイザーが送り込まれています。それに加えて派遣会社からのスタッフとは別に、フロア全体の監督、問い合わせがあった申請者のデータ照会、持続化給付金事務局との連絡などを担うコールセンター運営会社の社員も控えていて、我々のいるフロアだけでも総勢150名超の人間が働いているようです。

この運営会社は札幌、多摩、渋谷、市川、横浜、神戸、大分と全国7拠点に持続化給付金のコールセンターを構えているのですが、渋谷の規模が最大とのこと。

オペレーターからの質問を受けたり、入電者とのやりとりがこじれて「責任者を出せ!」と要望があった際に、電話を替わったりするのがリーダーで、オペレーター8人に1名程度の割合で配されます。

ヘッドセットと電話
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chainarong Prasertthai

その上にいるのがスーパーバイザー。各社に毎日2~4人がいて、リーダー陣でもわからない疑問に答えたり、自分の派遣会社からのスタッフ全体をまとめて、派遣先とのパイプ役などを務めています。

この3つのカテゴリーで派遣会社ごとにピラミッド型の組織を作り、フロア内で業務に就くエリアも各社単位で決められています。

『対応の心構え』にあった業務の本質と問題

そして、のちに他の派遣会社の人たちとも言葉を交わすようになってわかったのですが、渋谷のコールセンターに配属されたスタッフの時給は、オペレーターが1300~1500円程度、リーダーが1600~1800円程度、スーパーバイザーが2100~2300円程度のようでした。

座学の研修が終了すると、1日だけOJTの場が設けられました。まずは、業務中の先輩オペレーターの対応の録音音声をモニターし、実際にどんな内容の入電があり、どう対応しているのかを把握します。 モニタリングしながらふと自分の前にあるボードに目をやると、こんな『対応の心構え』を印字した紙が貼られていることに、改めて気づきました。

・お困りの気持ちに配慮した、寄り添った対応をする(但し、回答自体は決められた範囲)
・制度を正しく理解し、お客様のほしい情報を正確・ていねいに提供する
Web/申請のガイダンス/FAQ等、情報が確実なもの以外、お伝えしてはいけません!

何か特別なことが書かれているわけではありません。しかしその言葉のひとつひとつが、自分の業務の本質と問題を恐ろしいほど射抜いていることに、やがて私は気づかされるのでした……。

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