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コロナ禍に救われた?40%を回復した「紅白」視聴は日本人のDNAか


都内感染者が初めて1000人を超える1337人、さらに全国では4000人を超える4520人という、過去最多の人数になった大晦日。菅義偉総理が静かな年末年始を呼び掛けた中で「第71回NHK紅白歌合戦」は行われた。

あるレコード会社のアーティスト担当者は放送終了後に、

「ステイホームが呼び掛けられ、さらに交通面でも終夜運転が取りやめとなり、深夜の初詣も自粛となった。在宅率が高まったことは紅白の数字に結びついているはずで、絶対にチャンネルを合わせると思います。それが日本人のDNAで、案外、40%を超えるかもしれませんね」

と、期待を寄せていたが、果たしてその結果は?

40%の大台を回復 コロナのおかげ?

2日、ビデオリサーチから発表された関東地区の視聴率は、ワースト記録を更新した前年の37.3%を3ポイント上回る40.3%となり、40%の大台を回復した。

紅白は平成になった1989年以降、第1部(19時30分〜20時55分)と第2部(21時〜23時45分)の2部構成になっているが、「平均視聴率」として発表しているのは第2部の数字。今回の第1部の視聴率は前年の34.7%を0.5ポイント下回る34.2%だった。

NHKを取材する記者の1人は、

「NHKはワースト記録の更新も覚悟していたのかもしれません。…とは言っても、幾許(いくばく)かの期待感は持ち続けていたはずですから、数字を見たときは制作担当者もホッとしたと思いますね。しかも40%をクリアしたわけですから」と前置きした上で、

「前年の37.3%という視聴率は、ちょっと異常な数字だったのかもしれません。過去のワースト記録を見ても、紅白の潜在視聴率は39%あると見て間違いなさそうですね。後は、どれだけプラスαの数字を積み上げることができるかです。ただ、言い方は悪いかもしれませんが、今回の場合はコロナ禍に救われた部分は多分にあります。実際に、『第62回輝く!日本レコード大賞』も前年より視聴率をアップさせました(前年より2.1ポイント上昇の16.1%)。

コロナで無観客といった事態にならず、従来のように開催することができていたら、また内容も変わっているでしょうし、当然、視聴率も変わっていたと思いますが、今回はコロナ禍で多方面に神経を使うなど、制作現場は本当に頑張ったと思いますよ。そう言った意味でも40%を回復したことは大成功だと思います」

と、評価するが、その一方で、音楽番組の制作プロダクション関係者からは、

「通常の歌謡番組だったら、せいぜい15%前後、高くても18%程度の出来でしょう。少なくとも民放の長時間音楽番組の方が工夫されているし、歌を聞かせる努力をしています。

今回の紅白は、初の無観客ということでしたが、巨額の制作費を投じていたことは一目瞭然です。ところがクオリティとしては、とても褒められるようなものではなく、構成も演出も全く工夫が感じられなかった。これで40%が取れるわけですからね。確かに凄いですよ」

と皮肉とも思えるような声もあるが、これこそが「腐っても鯛」と揶揄される紅白の所以かもしれない。

大晦日に紅白を見てしまう日本人のDNA


とは言っても、ネットでの視聴者のコメントは好意的なものが多く、全体的な満足度は高かったようだが、その点について音楽関係者はどう見ているのか?

「ジャニーズや秋元(康)系のアイドルグループを多く出し過ぎとか、放送前は比較的に批判が多かったのですが、実際にはアミューズ系のアーティストが非常に目立っていました。

紅白の放送時間中は、出場歌手が所属する大手のプロダクションが民放の裏番組に対して非協力的になるので、日テレの「ガキ使」は異例ですが、他局はグルメや格闘技といった番組になってしまうのです。

最近は、演歌歌手はテレビ東京でという流れも出てきたようですが、結局は視聴者の選択肢が限られてしまうのです。ですから、大晦日は無意識的に紅白にチャンネルを合わせているだけの〝ながら視聴者〟も多いはずです。

オマケにコロナ感染拡大で在宅率が高まっていましたからね。高評価とは言っていても、実際には大した意味はないと思います」

早い話が大晦日に紅白にチャンネルを合わせてしまうのは、それこそが冒頭のコメントでもあったように「日本人のDNA」だったのかもしれないわけだ。

疑問だった紅白のサプライズ演出

それにしても、出場歌手の選考基準についてNHKは、まるで九官鳥のように「その年の活躍」とNHK放送世論調査所の行う「調査」、そして「NHKへの貢献度」の3点だと言い続けているが、実際に出場者の顔ぶれを見る限り「活躍」「調査」と言うより、NHKの担当プロデューサーへの「貢献度」と「出てもらいたい歌手」が8〜9割だろう。

「ここ数年の問題は、出場歌手を発表した後、次々にサプライズと言われるアーティストを発表することです。出場歌手を分類していることになり、その時点で『紅白歌合戦』のコンセプトが失われてしまっている。

今回も松任谷由実や、YOASOBI、YOSHIKI、最後には玉置浩二…。出場歌手の発表時点では中途半端に若返りをアピールしたかと思ったら、最終的には昭和のベテラン歌手を出して〝思い出のメロディー〟を演出する。しかも、最後の最後になって出してきた〝究極のサプライズ〟が、出川哲朗、田中裕二、岡村隆史、とユーミンが作詞(作曲はユーミン)した『きみのためにSuperman』を全員で歌うというものでした。

さらに極め付けは、卒業宣言をしたはずの北島三郎まで引っ張り出してくるとは、一体、何をしたかったのでしょうか? これが本当に視聴者の望んでいるものなのか理解に苦しみます。確かに、視聴率こそ40%台を回復したことで、制作現場は満足だったかもしれませんが、もはや紅白は終焉を迎えていると言っても過言ではないでしょうね」(芸能関係者)

今回は、無観客の東京・渋谷のNHKホールをメイン会場にNHK放送センターの101スタジオや509スタジオなども利用するなど、三密を避けた形での放送となったが、全体的にまとまりがなかったことも事実。NHK内からは、

「新たな発見としては、NHKホールの使い方です。客席を取り払ってステージを広く使う方法には気づきませんでした。もっとも紅白だからできたことだとは思います。

同時に無観客の限界を感じましたね。紅白はやはりNHKホールで観客も含めた演出が重要なのです。コロナ禍で場所を分散させるのは仕方がないとしても、各所に司会を出すべきでした。そもそも『SONGS』チームが仕切っているのですから、少なくとも白組の司会だったとしても大泉洋とか、あるいは総合司会の桑子真帆を各スタジオに行かせるぐらいの手法はあったはず。そもそも桑子の存在自体もよく分かりませんでしたからね。いずれにしても一体感のない構成が一番気にかかりました」

確かに、司会者4人は多過ぎる感じもしたが、少なくともさだまさし、玉置浩二と言ったサプライズ出演の部分は同じ局内なのだから、司会者の誰かがスタジオに行って話をするぐらいの演出はすべきだった。あるいは、それができない事情でもあったのだろうか? 局内で取材をしていた放送記者は、

「コロナ禍ですので取材の制限は仕方ないのですが、プロデューサーの対応は、とにかく要領が悪いの一言ですね。とにかく何でも隠そう隠そうとしているのがミエミエなんです。

確かに制作上、演出上、言えないことがあるのは分かりますが、多少のリップサービスがあってもいいはずです。そもそも紅白はNHKを代表する番組なんですから」

なんて不満を口にしていたが…。

いずれにしても、大晦日に71回も続いているという紅白の記録は世界の放送番組の中でも例を見ない。受信料問題がクローズアップされる中にあって、とりあえずメンツを保つことはできたと言うことだろう。

ちなみに、関西の視聴率は39.3%だった。また、「紅白」の裏番組として放送された「ガキの使い!年越しSP絶対に笑ってはいけない大貧民GoToラスベガス24時」は、第1部(18時30分〜21時)が前年を1.4ポイント上回る17.6%で、第2部(21時〜25時30分)は0.5ポイント減の14.1%だった。同番組は当初、アンジャッシュ渡部が出演する予定だったが、事前録画されていた出演部分は、さすがにカットされた。

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