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日本から祭りが“消える”日 「三密不可避」な日本の伝統の行方 2021年の論点100 - 山本 哲也

「祭りのない夏」。テレビやネットニュースなどでどれだけこのフレーズを聞いただろう。いまや「祭りのない秋」どころか、冬の「秩父夜祭」も規模が縮小されてしまった。

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 新型コロナウイルスの影響で、3月以降現在に至るまで、あらゆる祭りやイベントは、ほぼ全てが中止・延期・規模縮小・「神事/法要のみ開催」に追い込まれている。

「神事/法要のみ開催」は、神職や氏子総代など祭礼関係者のみによって祝詞や神楽や読経などを行い、疫病退散や豊作などを祈願する。感染拡大防止のため、こうした神事・法要は通常、非公開で行われ、我々一般の人にとって、祭りを見ることすら不可能となっている。


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 神輿があがったり、踊りのパレードや豪華な山車が町を練り歩いたり、夜店が出たりといった、一般的な祭りの賑わいは2020年、ほぼ全面的になくなった。

 これだけ祭りが一斉に中止となったのは、第2次世界大戦や昭和天皇崩御、東日本大震災など以来だといわれている。

 なぜここまで全ての祭りが中止なのか。新型コロナウイルス感染予防のために求められる「新しい生活様式」と、祭りやイベントがとことん相性悪いからである。

 祭りやイベント開催のためには「三密(密閉、密集、密接)」はどうしても避けられない。ソーシャルディスタンスを保ち、担ぎ手同士2メートル離れて神輿を上げようとしても、上がるわけがない。曳き手たちが距離を保ったら、綱を持てる人が少なくなり、山車などは動かない。

 そもそも、祭りのクライマックスには、大勢の見物人が狭い会場で密集する。さらには、祭りの準備、踊りやお囃子の稽古、寄り合いや懇親会など、公民館や神社境内や居酒屋などで密集が避けられず、クラスターになりかねない。

 2020年2月上旬、「さっぽろ雪まつり」の閉幕直後から、この祭りを訪れたとみられる感染者が急増。雪まつりが巨大なクラスター源ではないかとみられ、3月以降の祭りやイベントが全て中止に追い込まれた。政府から大規模イベントの開催自粛要請が出たこともあり、社会的非難を避けるためにも、祭りの中止に判断が傾いたのも無理はない。

 今後、ワクチンもしくは治療薬が登場するか、集団免疫その他の理由で感染の収束が確認されるまで、現在のように祭りの開催自粛が続くことが予想され、一説には2~3年かかるという予測もある。

コロナ禍前からあった危機的状況

 そもそもコロナ禍以前から、人手不足や資金不足、担い手の少子高齢化の影響により、過疎地域を中心として全国的に休止・消滅となっている祭りが増えている。

 三重県鳥羽市の「ゲーター祭」、愛媛県西予市の「土居の御田植行事」が、新型コロナ流行以前に、担い手減少のために休止に追い込まれている。そこにコロナ禍がトドメをさす事態が懸念されている。

 祭りやイベントは、食糧や医療などと違い「不要不急のもの」とされ、直ちに生命や財産にダメージを及ぼすものではないとされる。しかし、祭りの中止が及ぼす影響は決して小さくない。

 まず、大規模な祭りの場合、物資・広告宣伝・人件費等の経費が全てムダになる。主催団体(多くは観光協会や青年会議所が母体)の損失は計り知れない。

 また、祭り主催者だけでなく、地域に与える経済的影響も甚大だ。仙台市のシンクタンクの調査によると、青森ねぶた祭が中止となったことなどで、宿泊・交通・土産物製造販売などによる経済的損失が青森県で約1200億円と試算された。東北の夏祭り全体では2600億円以上だと推計されている。徳島では、阿波おどりの中止をきっかけに廃業を検討するホテルや旅館が多いという報道も入っている。

 さらに、地域住民の結びつきが弱くなる。準備段階から何度も寄り合いや練習を重ねるごとに、住民同士が打ち解け、仲良くなれる。それが感染防止のため、集会すら難しくなったので、親睦を図りにくくなっている。

 踊りや所作のお稽古で一カ所に集まるのも困難なことから、伝統芸能や地域のしきたりが途絶える危険性も指摘されている。子ども歌舞伎、特定の年齢の人だけがなれる青年団長、厄年の人だけがなれる役のように、翌年に順延がきかない役をする人は技を習得できず、伝統や技能伝承に空白ができるかもしれない。

祭り問題の本質は…

 では、祭り復興のためにできることはないのか。

 まず、地元から支えること。個人商店や地元中小企業がコロナ禍で疲弊し廃業しないよう、普段から利用するなどして盛り上げる。祭りに大口寄付をするのは大抵、こうした商店や企業だ。全国チェーンの飲食店は店長決裁で祭りに寄付はできないことが多い。

 祭りの重要性を社会に訴え続けることも重要で、許認可権のある警察や行政とも良好な関係を保つ必要がある。東日本大震災後にもあったが、一度中止・規模縮小した祭りを復活させる際、縮小後の状態でもよいのではと警察や行政と議論になり、元通りの道路使用許可などが得られないことも予想される。観光客増加、地域のつながり強化など、現実的なメリットのアピールも必要だ。

 コロナ禍が収束してくれば、外から人を巻き込むことも大切だ。参加したい人を受け入れるシステムをつくることも有効。青森ねぶたの「ハネト」や阿波おどりの「にわか連」のように、観光客の飛び入り参加が可能な祭りもある。「神輿愛好会」に助っ人の担ぎ手をお願いする祭りも多い。

 最終的に考えるべきは、人口の流出をくい止め、祭りの運営資金を寄付してくれる地元の産業の育成をはかること。京都、高山、秩父のように、豪華な曳き山があり、祭りが盛んな地域は、例外なく商工業で栄えた歴史を持っている。

 そう、祭りをめぐる問題の本質は、まさに日本が抱えている地域創生という大きな社会的課題そのものなのだ。

(山本 哲也/文春ムック 文藝春秋オピニオン 2021年の論点100)

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