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小沢秘書裁判における要証事実に闇献金は入るのか入らないのか

土地購入代金の原資とされている小沢氏から石川被告に直接手渡されたというお金が4億円だったのかどうかという問題があることについては、既に述べた。
石川被告は10月12日に合計で4億円の現金が入った紙袋を受け取ったと供述しているようだが、これはちょっとあり得ない話だな、というのが私の感想である。

裁判所が石川被告の供述をどう評価したかは分からないが、4億円ものお金を一括して渡さなければならない理由がそもそも私にはよく分からない。
預かってもその持ち運びや保管に困るだろう、というのが私の素朴な疑問である。

石川被告は10月12日頃と、日を特定して一括4億円の現金を受け取ったと供述し、小沢氏もほぼ同様のことを述べているようだが、私はここがこれからの小沢氏の裁判の一つのポイントになると思っている。

小沢秘書裁判の検察側の冒頭陳述では、後述のとおり、小沢氏側から陸山会側に渡されたお金については「10月初旬から10月27日までにかけて合計4億円」となっていたようである。
小沢氏側から合計4億円の金が陸山会の口座に入金されていることは、銀行の預金通帳を見れば一目瞭然であろう。
本来はその預金通帳の入金記録の一つ一つについてどこからの入金なのか、どういう趣旨の入金であったのかを説明しなければいけないのだが、おそらく石川被告は説明に窮したのだと思う。

どこからの入金か詳細に説明できない、というのは、そこに何らかの疾しいことがあると考えるのが捜査当局の立場である。
使途を明らかにできない時には、競馬や競輪ですってしまったなどと答える。
どこからに入金か原資を明らかにできない時は、親父の金だと答える。

現金には色が付いていないから、いちいちどこからの入金か説明する必要がなくなる。
全部現金です。
全部親父さんの金です。
全部一括して私が受け取りました。
そう答えておけばそれ以上の追及はないと思うのが、経理事務担当者の普通の反応だろう。

石川被告は、検察官に対して一々の入金の記録についてどこから入金したのか、どういう趣旨の入金なのか説明が出来ないので、苦し紛れで、全部小沢氏から現金で受け取った金だと答えてしまったのではないか、というのが私の推測である。
そう考えないとどうしても辻褄が合わない。

10月12日頃受け取った4億円から土地代金の手付金を支払った、などということは考えられないからだ。
売買契約が結ばれた日は10月5日のようだから、一週間後に受け取った4億円の中から手付金を払いことは出来ない。
タイムマシンでもなければ出来ない芸当だ。

石川被告の供述のどの部分を信用し、どの部分を信用しないかという問題があるが、石川被告がすべてのことを正直に語っているとはなかなか認められない。
検察側の冒頭陳述にあることの方が遥かに自然である。

水谷建設の元社長が石川被告に5000万円の紙袋を渡したのは10月15日だと証言し、その頃5000万円の現金が陸山会の口座に入金されていることが銀行の預金通帳の記載で確認されてたから、小沢氏から4億円受け取った日は10月15日より前、ということにしなければならなくなり、結局10月12日頃小沢氏から一括して4億円を受領して、これを分散して陸山会の口座に入金したと供述せざるを得なくなったのではないか。

私は、そう見ている。

石川被告は水谷建設から5000万円の現金を受け取っていないと強く否定しているが、水谷建設の元社長は証人として法廷に出頭し、石川被告に5000万円入りの紙袋を渡したと証言している。
宣誓の上偽証するときは偽証罪に問われることが分かっていての証言だから、一般的に言って水谷建設の元社長の証言を嘘だ、偽証だと極めつけるのは難しい。
偽証する証人の嘘をどうやって見破るかはそれこそ被告弁護団の腕の見せどころだが、被告弁護団の力が及ばなかったのだろう、裁判所は水谷建設の元社長の証言を採用した。

小沢秘書裁判について裁判所が水谷建設からの闇献金を認定したことについて様々な立場からの批判が出されているが、水谷建設の元社長等の法廷での証言や捜査段階での供述調書、水谷建設の銀行取引記録や水谷建設の裏金の捻出やその出金を記録したメモ等に基づいて闇献金の事実を認定したはずだから、これを頭から証拠に基づかない事実認定だ、などと批判するのはやはり当たらない。

政治資金収支報告書の不実記載と闇献金の有無とは関係のないことで、裁判所が水谷建設からの闇献金を認定したのがおかしい、という議論があるが、これもおかしなことだ。

「そもそも闇献金の事実は小沢秘書裁判の公訴事実の立証には関連性がないものであり、闇献金の存在等について裁判所が証拠調べを許したのが間違っている。検察側の冒頭陳述で起訴状にない事実の主張をしているのがそもそもの間違いで、弁護側が検察の冒頭陳述に異議を述べず、漫然と立証を許したことも間違いだ。検察の内部でも冒頭陳述に闇献金のことを書くか書かないかで議論があり、検察の上層部は一貫して書かない、という考えだったが、現場の声に押し切られて書くことになったものだ。」などと主張し、如何にも水谷建設の闇献金は起訴された政治資金規正法違反事件とは関わりのない事実であるかのように述べられているが、関わりがあるのかどうかは証拠調べをしてはじめて分かることである。

裁判所の訴訟指揮が誤っていたかの如き批判も、やはり当たらない。

結果的に裁判所は闇献金の事実を認めたわけだから、検察側が冒頭陳述で水谷建設からの闇献金の事実を明示し、そのための証拠調べを請求したことは検察側の訴訟戦略としては正しかったことになる。

検察側と被告弁護側は、互いに対立する当事者でそれぞれ自分たちの持っている力を全力投球して攻防を繰り広げている。
小沢秘書裁判では、弁護側が検察の冒頭陳述をそのまま受け入れた段階で裁判の帰趨はある程度決まった、ということだろう。

批判すべきは被告弁護側の一貫性のない曖昧で余り巧みとは言えない防御戦略の方で、検察側を非難するのはどうもおかしい。
まして、裁判所は法廷に顕われた証拠に基づいて事実の認定をするだけだから、この判決で裁判所を批判するのはやはりおかしい、ということになる。

参考 小沢秘書裁判に係る検察側の冒頭陳述要旨の抜粋(上脇博之氏の「ある憲法研究者の情報発信の場」より引用)
(1)検察側の冒頭陳述要旨(2011年2月7日)によると、

被告人大久保と同石川は、小沢議員の指示を仰いだ上、2004年9月頃、陸山会において、同議員から合計4億円を借り入れ、同議員の自宅近くで売り出されていた土地(A地。以下「本件土地」という。)を売出価格の3億4264万円(税込)で購入することとした。

被告人大久保及び同石川は、この決定に基づき、同年10月5日、住宅開発販売会社(B社。以下「住宅開発販売会社」という。)との間で、陸山会が同社から本件土地を上記価格で購入し、同月29日に購入代金を完済するとともに所有権移転登記を行う旨の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。

被告人大久保及び同石川は、同月初めころから同月27日ころまでの間に、小沢議員からそのころまでに同議員に帰属するに至った合計4億円(以下「本件4億円」という。)を現金で借り入れた。

この合計4億円については、その中から、同月5日、住宅開発販売会社に手付金等1008万円、不動産売買仲介会社(C社。以下「不動産売買仲介会社」という。)に仲介手数料の一部500万円の合計1508万円を支払った。

残りの3億8492万円は、これを一括して陸山会の1口座に入金したのでは資金移動が目立ってしまう等の事情があったため、被告人石川氏が、同月13日、4銀行4支店を順次回って、各々3000万円ないし5000万円ずつ現金合計1億8000万円を陸山会の4口座に入金したのを始めとして、同日から同月27 日までの間、ほぼ1000万円ないし5000万円の単位で、合計5銀行6支店に開設された陸山会の6口座にあえて12回(同一支店における一連の入金を1回と数えると10回)にわたって現金で分散入金した。

被告人石川は、同月28日、D銀行E支店の陸山会の口座以外の口座に入金した合計1億7000万円をD銀行E支店陸山会口座に振込送金して集め、同日の営業終了時点における同口座の残高を4億3537万9250円とし、その中から、同月29日、住宅開発販売会社に残代金3億3264万円、不動産売買仲介会社に仲介手数料の残金399万4300円、司法書士に登記諸費用90万2488円の合計3億3753万6788円を支払い、本件土地賊入代金等合計3億5261万6788円を完済した。

その後、本件4億円をいずれ小沢議員に返済するよう被告人石川から引継ぎを受けていた同池田は、2007年5月1日、D銀行E支店陸山会口座以外の陸山会名義の口座から合計5500万円、第4区総支部名義の口座から合計9500万円、政経研究会名義の口座から1500万円,誠山会名義の口座から4000万円の合計2億500万円をD銀行E支店陸山会口座に移動して同口座の残高を4億4338万448円とした上、翌2日に同口座から4億円を現金出金し、そのころ、これを小沢議員に現金で一括して返済した。

本件土地を2004年10月に3億数千万円で買い受けたこと及びその代金を小沢職員から現金で借り入れた本件4億円で支払ったことを収支報告帯において明らかにした場合には、その由来如何について報道機関等が関心を持つことが必至であったが、小沢事務所においては、報道機関等から取材等を受けた場合に本件4億円の由来について明快な説明を行うことができず、そうなると、小沢事務所における資金管理等に対する疑念を深め、同借入れと時期を同じくして開札が行われた胆沢ダム堤体盛立(第1期)工事との関連に着目されて、同工事を受注した建設業者等に対し報道機関等による取材等が行われるなどして、本件4億円の原資が胆沢ダム建設工事受注に関し建設業者から謝礼として受領した違法な資金ではないかと詮索・追及され、ついには本件4億円の由来や上記F社からの平成16年10月の5000万円の受領事実等の小沢事務所における収入の実態が露見するおそれがあったため、被告人大久保及び同石川は、本件4億円の借入れを収支報告書に記載しないこと等により、そのような事態に陥ることを回避しようと企てた。

被告人石川は、小沢議員からの本件4億円の借入れについては公にできないと考えていたが、従前から、陸山会において不動産を購入する際、当該不動産を購入することができる手持ち資金を保有しているにもかかわらず、そのような資金の余裕があることを公にしないようにするため、あえて手持ち資金で定期預金を組んでこれを担保に融資を受けた資金で不動産を購入しており、被告人石川自身もそのような手続をしたことがあったことから、これを参考にして,本件土地購入についても、その代金が2004年10月に支払われたことが判明した場合に備えて、報道機関等からその原資を問われるに至ったとき、銀行からの借入金で購入した旨の虚偽の説明を行うことができるようにしようと考え、陸山会など小沢蟻員の関連政治団体の資金を集めて定期預金を組んでこれを担保にして銀行借入れを行うこととした。

被告人石川は、報道機関等から銀行関係者への取材等が行われることになれば,本件土地購入代金が銀行からの借入れより前の2004年10月29日午前中までに本件4億円によって支払い済みであることが露見し、ひいてはその資金の由来を追及されるおそれがあると考え、これを回避するため、収支報告書に融資元の特定の銀行名までは記載しないで済むように、小沢議員に上記の銀行借入をしてもらった上、これを陸山会に転貸してもらうこととした。

そこで、被告人石川は、同月下旬ころ、同大久保に対しその旨提案したところ、同被告人も、被告人石川と全く同じ考えであったことから、「そうしておいた方がいい。」などと言ってこれを了承した。
以上により、遅くともこの時点までに、被告人大久保及び同石川の間で、小沢議員からの本件4億円の借入れについては、その後陸山会から小沢議員に返済するものも含めて、2004年分以降の陸山会の収支報告書に一切記載しないことなどについて共謀が成立するとともに,仮装原資として小沢議員を経由しての銀行借入を行うことが企てられた。

この共謀等に基づき、被告人石川は、同月28日の午後遅い時間になって、急きょ、D銀行E支店に対し、陸山会が新たに預け入れる4億円の定期預金を担保に、小沢議員に対して4億円を融資してもらいたい旨申し込み、これを小沢議員から陸山会に転貸してもらうこととした。

同月29日午前中、被告人石川は、本件土地の残代金等合計3億3753万6788円を決済する一方,同残代金等を支払った上で、D銀行E支店から小沢議員が4億円の融資を受ける際の担保とする同額の定期預金を預け入れるためにはD銀行E支店陸山会口座の残高が3億円余不足することから、同日午前9時過ぎから午前10時過ぎころまでの間に、3銀行3支店を順次回り、民主党岩手県第4区総支部の口座から合計7000万円、政経研究会の口座から合計9500万円、誠山会の口座から2000万円、陸山会の他の口座から合計'億2000万円の合計3億500万円をD銀行E支店陸山会口座宛てに振込送金した。

このようにして前記残代金決済の後、同口座の残高が4億300万3349円となったことから、被告人石川は、同日午後1時過ぎころ、同口座から4億円を振り替えて陸山会の定期預金として預け入れ(以下「本件定期預金」という。)、これを担保として、D銀行E支店から小沢一郎に対する、返済期限を2005年10月31日とする4億円の融資(以下「本件定期預金担保融資」という。)を受け、利息等を天引きした3億9536万2314円を同支店の小沢一郎名義の口座にいったん入金した後、同口座から4億円をD銀行E支店陸山会口座に振込送金した。

なお、その後2007年2月に国会議員に係る一連の事務所費疑惑の一環として本件土地購入費用を含む陸山会の事務所費が問題とされた際、小沢事務所は、報道機関に対し、本件土地購入の原資が本件定期預金担保融資による借入金であった旨虚偽の説明を行うとともに、小沢議員経由で融資を受けたことについても、真実は小沢事務所の申出によるものであるのに、銀行側の都合によるものである旨虚偽の説明を行った。

2005年3月ころ、被告人石川は、前年10月の同大久保との前記共謀に基づき、陸山会の2004年分の収支報告書作成に当たり、本件4億円の借入れ及び本件土地取得費用等の支払等をいずれも記載せず、また、第4区総支部からの合計 7000万円及び政経研究会からの合計7500万円(同年11月24日に政経研究会に戻した2000万円を除く。)の資金移動についても、これらの寄附自体が急きょであったため、その不自然さから本件土地購入の原資を偽るための偽装工作の一環であることを看破されるおそれがあるものと考えて記載せずに、その原案を作成した(同収支報告書には,平成16年10月29日付けで「借入先小澤一郎金額\400,000,000」と記載しているが、これは前記の共謀のとおり、銀行からの定期預金担保融資4億円を小沢議員から転貸してもらった分の借入れとして記載したものである。)。

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