80歳を過ぎても第一線で活躍し続けるおふたりが大きな関心を寄せるのが、“老人と性”の問題。ショージ君もびっくり仰天のその実情とは? “性事”から“仕事”論まで、縦横無尽に広がった対談をお届けする。(全2回目の1回目。後編を読む)
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東海林さだおさん(左)、田原総一朗さん(右)
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パワーの源は好奇心
東海林 『朝まで生テレビ!』にはもう30年近く出演されていますね。
田原 33年になります。
東海林 すごい。そのパワーの源はどこにあるのでしょうか。
田原 好奇心ですね。今86歳ですが、現役でいられるのは好奇心のおかげだと思います。東海林さんの連載「男の分別学」も今年で40周年ですか。漫画やエッセイを書くにも、好奇心が大切なんじゃないですか。
東海林 僕はもうすぐ83歳ですが、好奇心は尽きないです。今日も田原さんの本を2冊熟読してきまして〈『セックス・ウォーズ 飽食時代の性』(1984年)『シルバーセックス論』(2019年)〉。今日は政治ではなく、もうひとつの方、“性事”のお話ができたらなと……。
田原 ああ、セックスね。
東海林 はい。田原さんというと、政治経済分野の硬派なジャーナリストというイメージがあったので、こういったテーマを深く取材されているのは意外でした。とくに最近、老人の性というテーマに興味を持ったきっかけはなにかあったのですか。
高齢者の性の問題はとても深刻
田原 2017年にNHKの『クローズアップ現代+』で、まさに老人の性をテーマにした回がありました(「『高齢者だってセックス』言えない“性の悩み”」)。そこに当時83歳だった私がゲストに招かれたのです。下調べをするうちに興味が湧いて、今後の大きなテーマにしていこうと取材を始めました。
東海林 『シルバーセックス論』が生まれたのも、好奇心からなのですね。
田原 高齢者の性の問題はとても深刻なんですよ。僕の取材では、女性は大体、60歳を過ぎるとセックスに興味がなくなるのですが、男性は80歳手前くらいまで興味がある。
東海林 エーッ!? 70代でもまだありますかね。
田原 (きっぱりと)男はあります。つまりね、年をとるにつれ、男女間で欲求に差が出てくるんです。男性はセックスしたくても、女性が応えてくれなくなる。下手すると、たとえば夫婦の場合、夫が妻に強要する、レイプのようなことになりかねない。
性欲を持て余した男への対策となりうるデリヘル
東海林 性欲を持て余した男が、犯罪やセクハラに走る危険性があると。田原さんは本のなかで、その対策のひとつになりうるのが、老人向け風俗だと書かれています。デルヘル……? でしたっけ。
田原 デリヘルですね(派遣型風俗、いわゆるデリバリーヘルスのこと)。
東海林 そうそう、デリヘル。
田原 僕は60歳以上の男性専門のデリヘルを取材しました。日本ではこうした老人専門の風俗店が増えているというより、風俗産業そのものが老人向けになっているんです。老人が増えたから、専門店でなくても高齢のお客さんに対応できるようになってきている。
東海林 へえ、カスタマイズされているんですね。
「実は僕、風俗ってほとんど行ったことがないんです」
田原 取材を進めるうちに、男は何歳まででもセックスしたい生き物なのだなと実感しました。東海林さんだって、まだしたいでしょう?
東海林 ウーン、チャンスがあれば……。実は僕、風俗ってほとんど行ったことがないんです。「トルコ風呂」を1回取材したことがあるくらい。デリヘルもよく知らなくて、この対談の前にネットで検索してみたんですよ。そうしたら、すごくいっぱいお店が出てきて。
田原 サイトにはずらりと女性の顔写真が並んでいたでしょう。そこから好みの女性を選んで、お店に電話して希望を伝えると、スタッフが場所を口頭で案内してくれるんですよ。
東海林 どこに行けばいいんですか。
田原 客の自宅か、ラブホテル(通称・レンタルルーム)が多いようです。
老人が女性に求めるもの
東海林 デリヘルは、いわゆる“本番”は禁止なんですよね。
田原 本番は売春なので違法です。僕が取材したお店では、女性に本番を迫る客は出入り禁止にしたり、女性にも本番しないように指導したりと、経営者が厳しく取り締まっていました。
東海林 本番禁止とはいえ、お客さんの最終的な目的は本番ですよね。本のなかに出てきた経営者の発言でとても印象的だったのが、「(お客さんに)射精していただく」というもので。“射精”と“いただく”の言葉の組み合わせがなんとも(笑)……。
田原 当然ですよ。お客様なんだから。僕は近江商人の末裔なので、幼いころから祖母に「三方善し」の心得を言い聞かされて育ちました。三方善しとは、まずお客さんにとって善し、次に、世間に善し、そして自分にとって善しです。デリヘル経営も決して例外ではない。
東海林 たしかに「三方善し」ですけど……さすがに丁寧すぎませんか? 射精“していただく”って……。
田原 企業はお客様あってこそ、成り立つものです。業種は違いますが、日本航空を再建した稲盛和夫さんの話を思い出しました。日本航空が経営破綻したとき、当時の社員たちにはサービス精神がなく「お客さんを飛行機に乗っけてやる」という雰囲気だったそうなんですね。そこで稲盛さんは「飛行機はお客様に乗っていただくものだ」ということを徹底して指導したと。どんな仕事でも大事なことです。
女性との“心のふれあい”を求めてやってくる人も
東海林 アハハ、そうか、“射精させてやる”じゃだめなんですね。ところで、60歳以上のなかで、射精まで辿り着ける人はどのくらいいるんでしょうか。
田原 2割いるかどうからしいです。
東海林 そんなもんですよね。お客さんにとって、射精はひとつの目標ではあるけれども、女性との“心のふれあい”を求めてやってくる人も多いとか。
田原 そうなんです。老人の多くは、セックスそのものを目的にしているというよりも、女性と触れ合ってなごやかに過ごせればいいと思っている。実際、女性とくっついて肌のぬくもりを感じていれば、それだけで幸せな気持ちになれると思いませんか?
東海林 ああ、癒やされると思います。デリヘルに来る老人たちの女性の好みは、ずいぶんと細かいようですね。胸の大きさ、垂れ具合、毛の濃さ、妊娠線の有無までこだわる人がいるとか……今の老人はすごい! 特に妊娠線はすごい!