記事

2021年は短期、中期、長期、超長期循環上昇の起点になる

1/3
謹 賀 新 年

2021年が実り多き年になりますよう、お祈り申し上げます。

議論の出発点、なぜ市場はブラックスワンに打ち克てたのか

2021年の展望にあたって、「2020年に、ブラックスワン(Covid-19という歴史的パンデミック)に市場とファンダメンタルズが打ち克った」という事実の認識が何をおいても重要である。株価は4割の暴落を5カ月で取り戻すというV字回復を遂げ、さらに高値を更新し続けている。

株価は最も信頼できる景気先行指標であるので、2021年は力強い景気拡大の年になることは、ほぼ確実である。いや今の株価はバブル、これは「偽りの夜明け」との批判がある。同様の議論は2010~2012年頃、リーマンショック後にも蔓延していた。しかし当時と同様現在も、そうした悲観論は根拠薄弱である。

確かに政策支援が株高・景気回復を支えていたのであるが、政策が誤りであり失敗するという主張は間違っていた。今回も市場フレンドリーな政策が誤りであり失敗するという主張には、以下詳述するように説得力がない。

二大要因、価値創造力と政策力

なぜ、これほどの危機を市場と経済は克服することが出来るのか。本質的な理由は、以下の2つであろう。

  1. 経済の地力が強いこと、つまり産業革命により生産性が高まり、健全な価値創造が続いていること
  2. 政策の知恵によりブラックスワンが経済を破綻させる道(需要蒸発と供給力の凍結)を見事に遮断できていること、より具体的には世界大恐慌時や日本のバブル崩壊後の長期停滞を招いた清算主義経済政策を完全に棚上げできたことである。

    仮に強烈な財政金融一体緩和政策が不在であったら、大恐慌に陥っていたことは明らかである。米英を中心とする経済学・経済政策の勝利と言える。もっとも日本の学者・エコノミスト・メディアの主たる論調は、「この野放図の財政赤字と金融緩和のつけをどうするのか」であり、日本の世論は間違った方向で形成されている。注意が必要である。

Covid-19パンデミックは依然猛威を振るっている。しかしワクチン投与が始まった。ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ等のワクチンはいずれも有効性が高く、副作用が限定的であることから、2021年後半にはコロナ制圧が視野に入ってくる可能性が大きい。

武者リサーチは、2021年は、短期、中期、長期、超長期経済循環の上昇の起点になる可能性が高い、と考える。中国経済と米中対立が最大のリスクであるが、短期的には顕在化しないだろう。

2021年も、2009年から続いている米国の長期株高トレンドが不変であることは言うまでもない。世界的株高持続、中でも日本株式には過去20年間で最大級の追い風が吹くだろう。


(1)  短期経済循環生きていた

短期循環のバネは蓄えられている

2020年は、本来は2018年春にピークを迎え2019年末にボトムを打った世界製造業景気循環の回復の年になるはずであった。

長期景気拡大の中にもミニサイクルがあり、金利・株価など市場はその影響を受けている。図表4は米国における製造業景気ミニサイクルと長期金利の推移であるが、最近では2015年春ピーク、2016年央ボトム、2018年春ピーク、2019年秋ボトムとなっている。

2018年半ばからのミニ後退は、スマホや自動車の買い替えサイクル、米中貿易戦争による投資案件の棚上げなどによって起こった。その底入れ直後にコロナパンデミックがおき、ミニサイクルの底がさらに大きく引き下げられたわけだが、その分2021年のリバウンドの力が蓄積されていると考える。


この3~4年の景気ミニサイクルは、貿易・投資・耐久財消費に主導される製造業の景気循環である。製造業分野では、自動車もスマホも鉄、セメントも今や中国が世界最大の市場(中国の製造業市場規模は米国のほぼ2倍)であり、世界の製造業景気循環は米国以上に中国が波を造っている。

2018年以降の世界経済ミニ循環の落ち込みは、中国内需の悪化によって引き起こされた面が大きく、今はその急反転の局面にある。落ち込みの主因である自動車需要が底入れし、パンデミック対応のインフラ投資、金融緩和による不動産投資が需要を押し上げている。

堆積している欲望と貯蓄が解き放たれる

加えて全世界で欲望と貯蓄が堆積しており(いわゆるペントアップディマンド)、Covid-19終息の暁にはその一気発現が見込まれる。2021年後半には強烈な短期循環の押し上げ圧力が顕在化するのではないか。

商品市況高騰、半導体など品不足の兆候

既に鉄鉱石、銅、アルミなどの商品市況は7年ぶりの水準まで回復している。また半導体や液晶などデバイス各分野では密かに能力不足の顕在化が心配されている。

Covid-19で高まったリモート需要により、端末需要、データセンターなどのインフラ需要が急増、さらに5Gなど新技術投資が始まり、最先端半導体などで競争先行のための投資が活発化している。中国は5G投資実績で他を引き離す構えで、中国国内での5Gハイテク投資が急増、他国もそれに引きずられて投資競争が始まりつつある。

各国の経済見通しの上方修正が相次いでいる。米FRBは9月から12月の間に、2020年のGDP成長率を-3.7%から-2.4%に、2021年を4.0%から4.2%へと修正した。台湾中銀も9月から12月の間に2020年のGDP見通しを1.6%から2.6%に、2021年を3.3%から3.7%へ修正した。中国から通関凍結などの嫌がらせを受けているオーストラリアですら、2020年度のGDP見通しを-1.5%から+0.75%へと引き上げた。鉄鉱石市況上昇の恩恵を受けているとみられる。


米国金融政策の微妙な変化から金融市場が連鎖的に変化する

この短期景況感の急回復は、まず米国においてインフレ期待を高め、金融政策スタンス変化の兆し(用心深さを伴った)をもたらし、金融市場全体に影響が伝播していくだろう。株式市場では景気敏感なバリュー株を押上げ、債券市場では長期金利を押上げ、為替市場ではドルの底入れ回復をもたらすのではないか。

バリュー株選好、長期金利上昇、ドル高へのトレンド転換が起きる

今、国際金融市場ではドル安がコンセンサスとなっている。米国が世界で最も積極的な金融財政緩和を打ち出しており、ドル供給が潤沢になったためである。

加えてゼロ金利政策の下で米国の実質金利(=物価連動債利回り)が-1.2%と世界最低となったことが、ドル安論を大きく後押ししている。実質金利差は為替市場において最も重要なトレンド決定要因とされており、この米国実質金利低下が、ドル安観測を決定づけている。しかし、米国実質金利の大幅な低下の原因は、ゼロ金利ではない。

短期政策金利は米国のみならず、日欧も共通してゼロ近辺である。米国の実質金利が著しく低いのは、Covid-19パンデミック下にあっても米国のインフレ期待が全く低下しなかったことにある。図表8に見るように米国の長期期待インフレ率(10年債利回り-TIPS)は1.6~1.7%とすでにコロナ感染前に戻っているが、このことは、米国経済のインフレ基礎体力が相当強いことを示唆している。

米国は先進国の中で最も、経済成長に対する自信が強く、故にインフレ期待が高いのであり、そのことが米国の実質金利をことさらに押し下げているといえる。

この積極的財政金融緩和、経済に対する強い自信は、米国経済が先進国中で最も力強く回復することを予見させる。そのもとで金融政策転換が見えてくれば、ドルは強まるだろう。

あわせて読みたい

「日本経済」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    コロナ春に収束向かう? 医師予想

    シェアーズカフェ・オンライン

  2. 2

    独身でいる理由 男女の5割で共通

    ニッセイ基礎研究所

  3. 3

    医師が日本のワクチン報道に嘆き

    中村ゆきつぐ

  4. 4

    料金高騰が示す電力自由化の功罪

    WEDGE Infinity

  5. 5

    音喜多氏が居眠り謝罪 歳費返納

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  6. 6

    コロナ禍のバイト店員私語に苦言

    かさこ

  7. 7

    時短応じぬ外食大手に賛同 なぜ?

    御田寺圭

  8. 8

    五輪中止なら湾岸タワマン暴落か

    NEWSポストセブン

  9. 9

    荒れるYahooコメ欄 仕方ないのか

    たかまつなな

  10. 10

    SEXなく…夫に不倫自白した女性

    PRESIDENT Online

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。