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「イマドキの若者」の心をつかむ中高年、相手にされない中高年の決定的違い

イマドキの若者はとある事情から、友人にも本音を出さなくなってきているそうです。一方で親子関係は親密に。彼らが思い描く「理想の親子関係」は、アラフォー世代にとっては違和感だらけ。20歳前後の「Z世代」に好評だったCMから見えてきた傾向を、今話題の書『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』の著者で若者の価値観に詳しい原田曜平さんが解説します――。

友人※写真はイメージです - 写真=iStock.com/portishead1

友達に本音を話せなくなってきている若者たち

1995年以降に生まれたZ世代を語る時、まず欠かせないのがSNSの影響です。若者にとってはすでにインフラのひとつですが、気軽に自らを発信できる反面、何の気なしに載せた言葉や写真が非難や批判の対象になることも少なくありません。

今の若者は、こうした非難や批判にとても敏感です。また、いったん発信するとスクリーンショットをとられて永久に残り、拡散され続ける可能性があることもよく知っています。そのぶん同調圧力を感じやすく、非難や批判の対象になりそうな言動はSNS上に残さないよう、用心する子も増えてきています。

これは友人関係でも同じこと。仲のいい友達同士であれば、例えば酔ってカッコ悪い姿を見せたり、恋愛の話をしたり、恥ずかしい失敗談を打ち明けたりということはよくある話です。ところが、自分は友人以外には見せたくない、知られたくないと思っていても、友人のほうが悪気なくSNSに載せてしまうこともしばしば。

こうした事態への用心もあって、最近は相手が友達でも、ありのままの姿や本音をうっかり見せられないと考える若者も出てきています。その一方で、Z世代の傾向として顕著なのが「親子仲が密になっている」ということ。友達には言えなくても親には言える、この感覚はアラフォー世代にとっては理解しがたいのではないでしょうか。

恋愛やセックスについて、友人より親とよく話す

僕のような昭和生まれの世代にとっては考えられないことですが、恋愛やセックスについても「友達より親とのほうがよく話す」という若者もいます。親なら話した内容をSNSに載せることもないし、100%自分の味方だから一方的に非難されたり批判されたりする心配もないのだそうです。

親と娘※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

僕が若かった頃は、友人とは恋愛話をしても親とするなんてありえないことでしたが、今はこれが逆になっているようです。友達にうっかりカッコ悪い姿を見せると「さらされる」可能性がZ世代の若者に刺さるものをつくるために必要なこと

あるけれど、親なら安心。そんな思いが、Z世代の親子仲を密にしているのではないでしょうか。

先日、僕はZ世代を対象に、2020年で印象に残った広告を調査しました。驚いたことに、そこで挙がったのは僕にとっては「親子過剰コミュニケーション」としか思えないCMばかりだったのです。

アラフォー世代には違和感のある人気CM

例えば、彼らが挙げたある電子決済サービス会社のCMは、デート中の娘を見かけた父親が、デート資金にとその場でこっそり電子マネーを送るというものでした。送られた娘は喜んで、父親に感謝しながら電子マネーを使うというストーリーでした。

僕だったら、デート中の姿を父親に見られただけでも恥ずかしいのに、なおかつお小遣いを送るなどというアクションを起こしてくるなんて「気持ち悪い」としか言いようがありません。しかし、Z世代にはこれが「なんていい父親なんだ」と映っているようなのです。

もうひとつ、若者たちが挙げたCMにはお風呂を舞台にしたものもありました。昔は一緒に入浴していた父娘が、娘が成長して別々に入浴するようになり、それぞれが一人で湯船に浸かりながら互いを思い合うというストーリーです。

娘は、一緒に入浴していた頃を懐かしく思い出しながら、次に入浴する父親に向けて、湯船に浮かべた柚子にメッセージを書きます。次に入った父親はそれを読んでホロリとする──。そんな親子関係を描いたCMでした。

仲の良さを過剰に表現したほうが刺さる

ひと昔前なら、一緒に入浴していた場面なんて思い出したくない、自分の次に父親が同じ湯船に入ることすらイヤという女子も多かったのではないでしょうか。次に父親が入ることを見越してメッセージを残すなんて考えもしない、むしろ「気持ち悪い」と感じる人が大多数だったと思います。

でも、Z世代にとってはこれが「いい親子」なのです。これぐらい過剰に描いたほうが、いい父親でありいい娘だと思われるわけですね。

どちらも僕にとっては違和感しかないCMですが、大事なのはZ世代やその親に向けた広告としては成功しているということ。つくり手の狙いがぴったりハマった好例と言えるでしょう。

Z世代の若者に刺さるものをつくるために必要なこと

ここで気になるのが、つくり手の意図です。気持ち悪さを狙ったら意外にも理想の親子像として受け入れられてしまったのか、それともZ世代の親子感覚をしっかりリサーチした上で「刺さる広告」をつくろうとしてつくったのか。後者だとしたら、マーケティングやリサーチの担当者はかなり優秀なのではないかと思います。

こうした例はCMに限らず、商品開発や新卒採用などの分野でもたくさんあります。昭和生まれの世代にとっては違和感だらけでも、ターゲットが若者なら若者に刺さるものをつくらなくてはなりません。昭和世代がどんなにいいと思って世に出しても、若者が「気持ち悪い」「古くさい」と感じたら失敗に終わるからです。

Z世代の感覚はアラフォー世代とは大きく違うもの。若者をターゲットにして何かを展開する場合は、まずそれを念頭に置いておく必要があるでしょう。その上で、どこがどう違うのか、何をいいと感じるのか、事前にしっかりリサーチしていただけたらと思います。

今回は友人関係や親子関係を例にとってお話ししましたが、こうした感覚の違いは化粧品や食品、料理、サブスクリプションなど幅広いジャンルにおいて見られます。マーケティングや商品開発を担当している方々には、Z世代に人気の商品や広告からその感覚を読み解くとともに、次は何が来るのか、2021年は何がトレンドになりそうか、予測した上で戦略を立てていただきたいと思います。

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原田 曜平(はらだ・ようへい)
マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。「原田曜平若者研究所」のYouTubeチャンネルでは、コロナ禍において若者の間で流行っていることを紹介中。
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(マーケティングアナリスト 原田 曜平 構成=辻村 洋子)

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