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焦点:電通関連法人、突出する政府からの事業委託 運営の不透明感に批判も


[東京 31日 ロイター] - 不透明性が指摘されている政府から民間企業への行政事業委託について、大手広告代理店の電通が設立に関与した2つの社団法人が10年間で100件超の事業を委託されていたことがロイターの調べで分かった。契約の多くは競争相手がいない「一者入札」で決められていたほか、両法人は受注した事業の大半を電通に再委託しており、野党議員などから事業経費の中抜きや税金の無駄遣いなどの可能性を懸念する声が上がっている。

<持続化給付金事業など多岐に>

政府の行政事業を積極的に受託してきた電通関連の社団法人は「環境共創イニシアチブ(SII)」と「サービスデザイン推進協議会(サ推協)」の2法人。両法人が委託された行政事業は観光振興プロジェクトの運営や代替エネルギー補助金給付など多岐にわたり、経済産業省からの委託案件が多い。

ロイターの調べによると、2法人による過去10年の受注規模は少なくとも103件あり、総額は約1710億円に達している。しかし、そのうち、およそ1242億円分が電通に再委託されていた。

とりわけ問題視されているのは、新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた中小企業などを支援する持続化給付金事業だ。約2.3兆円を投じた同事業では、給付金を配る業務が経産省から769億円でサ推協に委託された。しかし、サ推協は同業務の大半を電通に再委託しており、行政事業の丸投げだとして日本国内メディアの報道も相次いだ。

持続化給付金事業の運営に対する批判の高まりを受け、経産省は是正策を講じるための有識者検討会を設け、12月25日に新しいルールを公表した。

新ルールでは、入札の透明性向上のほか、再委託についてはその比率が50%を超える場合は受託先の実施体制の確認を求めるなどの規制強化を打ち出した。

また、電通は28日、ロイターの取材に対し、経産省の検討会の議論を受けて設けられた新たな規定に従う、と表明した。

しかし、経産省など政府各省や電通は、持続化給付金事業を始めとする問題案件に関する個別の契約や業務遂行の実態などについて詳細を明らかにしていない。

<なぜ社団法人か>

政府による業務委託は、民間企業の活力や組織力を生かして公益事業を円滑に遂行する重要施策だ。しかし、なぜ電通は直接に受託しなかったのか。

電通が行政事業受託への動きを強化したのは世界経済にリーマンショックの後遺症が続いていた約10年前だ。当時、日本政府は「官から民へ」の掛け声のもと、行政事業の民間委託を進めていた。ある元電通社員によると、同社はこうした「官から民へ」の流れを大きなビジネスチャンスととらえ、公的セクターへの業務拡大に動き始めた。

    関連の社団法人から政府事業を再委託する手法の背景には、日本が2006年に実施した公益法人改革がある。この規制緩和により、一般社団法人の設立が最低社員2人の登録、かつ最小限の情報開示だけで可能になり、そうした法人が行政事業を受託できるようになった。

サ推協が政府から最初に受託したのは、レストランや旅館・ホテルなどにフランスのミシュランのようなホスピタリティのランクを与える「おもてなし規格認証」事業。東京オリンピック・パラリンピック開催をにらんだ企画だった。

ロイターが取材した5人の関係者によると、電通本社で会議が行われ、出向した電通社員が業務にあたるなど、実際の運営はサ推協ではなく電通が行っていたという。

サ推協と電通はロイターの問い合わせに対し、電通は社団法人の会員企業として同事業に協力しており、サ推協がプロジェクトを主導している、と述べた。

これまでにサ推協が受託した行政事業14件のうち、8件が1者入札だった。

一方、SIIは元電通社員の田中哲史氏によって設立された。同法人は電通子会社1社と同じ東京都内のビルに事務所を構えている。ロイターが検証した資料によると、SIIは2011年から現在までに、少なくとも89件の行政事業、約868億円を受託している。

経産省が国会議員に提出した資料によると、2015年以降に受託した事業のうち、約4分の3が再委託され、その大半が電通に任されていた。

SIIの田中氏は過去の事業委託の規模と電通への再委託の詳細について、現時点ではコメントできないとしている。

こうした行政事業の委託構造について、経産省・中小企業庁の中小企業政策統括調整官、高倉秀和氏は「ルール違反ではない」と指摘する。

同氏はロイターの取材に対し、行政事業を受託するために一般社団法人を作るというのは、出資も不要で財務諸表に子会社として記載する必要もなく、株主から批判を受けることもないため、「ある種、合理的な判断」だと述べた。

電通は給付金事業を政府から直接受託しなかったことについて、バランスシートへの影響と通常業務が滞る可能性も含め、社内の経理局から「(直接受託は)適切ではないとの意見があった」と説明した。

経産省は「適切な入札などの手続きが行われている場合、法人格が一般社団法人であること自体に問題があるとは考えていない」とコメントした。

    <会計検査の回避も可能か>

政府や電通側の説明について、有川博・日本大学客員教授(公共政策担当)・会計検査院元局長は、行政事業が一般社団法人を通じて電通に再委託されることで、税金が無駄に使われる可能性がある、と指摘する。また、社団法人を使う受託にすれば、電通は直接の受託者ではないため、会計検査から逃れることができるとしている。

「問題になっているのは(中間利益を取るための)トンネル会社のような再委託。国から直接委託を受けた会社がそのまま自分は何もしないで丸投げするような再委託は、何をするためにその会社をかませるのか。お金を上乗せするためなのか、契約の全体をわかりにくくするためか。いろいろな弊害が出てくる」と再委託の問題点を指摘する。

立憲民主党の蓮舫代表代行は11月の参院予算委員会で、給付金事業を受託したサ推協やSIIが電通などに再委託した問題を取り上げ、梶山弘志経産相に委託先について調査するよう要請。さらに税金の使途が適切かどうか、会計検査院による検査を求めた。

会計検査院では、この要請を取り上げるかどうか来年度に決定するとしている。検査は1年以上かかる場合もあり、その結果については政府に報告書が提出される。

電通が設立した一般社団法人が経産省から受託した事業の一部について、野党議員や専門家から、公的資金を使った事業に対する会計検査から逃れる手段になったとの指摘がでていることについて、電通はロイターの問い合わせに直接回答していない。

同社は「一般社団法人は、多くの専門性を有する団体・企業で構成されており、当社も会員企業の一つしてコンソーシアムに参加している。当該社団法人が受託した業務はコンソーシアム内で連携して実施しており、当社もこれに参画している」とコメントした。

(宮崎亜巳、Ju-min Park, 村上さくら、斎藤真理、Antoni Slodkowski 編集:北松克朗)

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