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格安スマホ&楽天モバイルを苦しめ、実体経済にも影響を及ぼす携帯"官製"値下げの弊害

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携帯キャリア大手3社が値下げも複数の問題点が浮上

共同通信社

携帯電話料金の官製値下げ圧力がますます強まり、携帯キャリア大手3社の動きがあわただしくなってきました。

値下げに向けNTTによるドコモの完全子会社化が発表され、au、ソフトバンクからは系列格安サブブランドでの値下げプランが相次いでリリース。

これで当面の流れが固まったと思いきや、武田良太総務大臣がau、ソフトの対応に「非常にがっかりした。サブブランドでの値下げでは意味がない」とさらなる横ヤリを放つという、想定外の展開に転じました。

このような政府の意向を受け、国を大株主にいただくNTTグループのドコモが真っ先に本体での低価格プラン「ahamo(アハモ)」を発表。ネット申込み限定ではありますが、通信20ギガまで月額2,980円という破格のプランに市場は騒然となっています。

これを受けてソフトもメインブランドでドコモに追随した新料金プランを発表。auも追随を余儀なくされるのは見えてきたわけで、菅首相の首相就任時の政治公約でもあった携帯電話料金の値下げは、ひとまず思惑どおりに事が進んできたとは言えそうです。

とはいえ、ここまでする必要があるのか、この官製値下げは諸々問題が多いように思っています。

以前も拙原稿で、首相肝煎りの携帯料金値下げ圧力による5G、6G対応への資金面からの懸念を指摘していますが、政府が3大キャリアに対してさらにメインブランドでの値下げを迫ったことで、別の観点からも複数の問題点が浮かび上がってきたと考えています。

格安スマホ事業者「消滅」で雇用喪失の懸念

まずひとつは、格安携帯・スマホ業者(以下格安業者)の存在を危うくするという懸念です。そもそも格安業者は大手から使用料を払って回線を借り、利用者を効率的に詰め込むことで低価格を実現しています。

従い、親会社のサポートがある大手3キャリアの系列は別として、格安業者は利用集中時間帯には通信速度が落ちるなど大手に比べてサービス面で見劣りする部分があり、これまでは価格の安さのみが大きな顧客囲い込み要因になっていました。

ところが今回のドコモ、ソフトバンクの低価格プランは格安スマホ並み、いやケースによってはそれ以上の低価格になってしまうわけで、さらにauも追随すれば格安は格安ではなくなってしまう状況にあるのです。

共同通信社

仮にこの状況を受け格安業者各社が、同水準に対抗した値下げを決断したとしても、大手がこの水準にまで下りて来てしまってはもはやインパクトは薄く、多少の価格差を出したところでむしろサービス品質の違いやブランド力の差で顧客は奪われる一方になってしまうのは想像に難くないところです。

そうなっては、格安スマホ同士の合併・統合、最終的には大手3社に飲み込まれるかあるいは消えてなくなるか、いずれかの道しか残されていないように思えるのです。

すなわち、そうなれば格安スマホはその役割を終えることになるわけで、中小まで含めれば全国で1000社弱存在するという格安業者が消滅することになれば雇用の喪失が景気の足を引っ張ることにもなりかねないのです。

楽天モバイルの存在感を限りなくゼロにしたドコモ新プラン

ふたつ目の問題点は、楽天モバイル(以下楽天)の立ち位置問題です。今年4月に、第4の携帯通信キャリアとして正式スタートした楽天モバイルですが、そもそもは3大キャリア寡占状態で実質価格談合と言える携帯市場に、料金の引き下げをはじめとしたサービス改善を通じて利用者のキャリア間移動を活性化し、業界全体に競争原理への回帰を促す劇薬として政府が認可を与えたものでした。

とりあえず、今春のサービス開始と共に「使い放題2980円」の価格設定をしたものの、当面使用エリアに制限があるなど先行大手3キャリアとの比較で見劣り感は否めず、契約は伸び悩んでいます。

そこに今回の大手3社へのメインブランド官製値下げ圧力がかかったわけで、大株主である政府の意向を踏まえたドコモが「20ギガ2980円」のahamoを発表した段階で、市場原理は無視され楽天の存在感は限りなくゼロに等しくなってしまったのです。

3大キャリアに4半世紀遅れてスタートした楽天にとって当面価格以外の武器は見当たらず、政府系ともいえるNTTのドコモ完全子会社化を最も恐怖に震えて眺めていたのは楽天に違いないでしょう。

BLOGOS編集部

開業前の多額投資によって巨額赤字が続き、現在も開業遅延を余儀なくされた基地局整備に加え5G対応でも依然投資が続く同社にとって、これ以上の価格値下げは命取りになりかねず、動くに動けぬまま存在感を失っていくそんな状況に思えます。

そもそも楽天は、設備整備見通しの甘さから開業遅延という政府の期待を裏切ったという自業自得感はあるとはいえ、政府によって行く手を阻まれた形になったわけで、もはや前述の格安陣営と同じく政治によって民間企業が追いやられていく運命にあるとすら言えそうです。

もしや政府は、楽天に通信免許をおろした当初から、同社を乱立する格安業者整理の受け皿にしようと目論んでいたのかもとしれないと考えると、同社は完全にはめられたわけであり何やら空恐ろしくもあります。

このように市場原理をも捻じ曲げる官製値下げは、実に社会主義的でもあると思わせられるところです。

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