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『半沢』大ヒットの理由、『ルパン』続編の背景とは? 2020年ドラマ業界10大ニュース

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●『恋つづ』ヒットで実証された2つの事実

12月28日放送の『監察医 朝顔』(フジテレビ系)を最後に2020年の主な連ドラがすべて終了した。

視聴率、話題性ともに独壇場となったのは、やはり『半沢直樹』(TBS系)。TBSはその他にも『テセウスの船』『恋はつづくよどこまでも』『私の家政夫ナギサさん』『MIU404』などのヒット作を連発して業界全体をけん引した。

ここでは朝ドラから夜ドラ、深夜ドラマまで、全国放送の連ドラを全て視聴しているドラマ解説者の木村隆志が一年を振り返るべく、今年ドラマ業界で、何が起きて、どんな影響が出ているのか。“2020年のドラマ業界10大ニュース”を選び、最後に“個人的な年間TOP10”を発表していく。

○■10位 コロナ禍で生まれた“再放送ブーム”の本質とは

4月、緊急事態宣言の発令によって、各局のドラマ撮影が軒並み中断に追い込まれ、「大半の春ドラマが放送できない」という危機的な状況となってしまった。

そこで各局は「過去作の再放送」を選んだのだが、2005年放送の『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)から、今年3月まで放送されたばかりの『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)まで、そのラインナップは見事なまでにバラバラ。また、「今見ても名作」と称賛されたものと、「何で今このドラマを選んだの?」と酷評されたものに2分された。

バラエティなど他ジャンルの番組も制作が難しく、連ドラの再放送はその穴埋めにも便利づかいされたが、なかでも意欲的だったのはTBS。『JIN -仁-』『愛していると言ってくれ』などの名作を週末に一挙放送して支持を集め、ドラマ全体を再評価するムードを作っていた。

結果的に再放送はドラマの一時的なイメージアップになり、撮影再開と放送開始までの時間稼ぎになったものの、良くも悪くもそれだけ。『半沢直樹』『私の家政夫ナギサさん』『MIU404』などのヒットを見ても視聴者は新作を求めていることは明らかであり、あれほど多かった再放送のリクエストは消えてしまった。言わば、「絶対に再放送してほしい」というほどの熱はないのだろう。

もともとドラマの再放送はテレビ局にとってハードルが高いもの。キャストやスタッフなど関係者への許可取りが難しく、彼らもメリットがなければ受けづらい(「新作の制作・放送で得られるはずの収入が減ってしまう」「今さら過去の映像を使われたくない」などの理由から)。さらに制作費の少ない再放送ではスポンサー収入も得づらいため、テレビ局にとってもメリットが少なく、CSか動画配信サービスでの提供という既定路線に戻ったのだ。

○■9位 コロナ禍と不思議なシンクロを見せた『隕石家族』

コロナ禍でスタートさえ切れない他作を横目に、土曜23時台に淡々と放送されていた『隕石家族』(東海テレビ・フジ系)。

「地球に巨大隕石が接近して150日で人類滅亡してしまう」という筋書きは、荒唐無稽なファンタジーと思いきや、「今まで考えてさえいなかったことが起きる」「それによって人々が精神的に追い込まれていく」「危機的状況のとき、どう生きるかに人柄が表れる」などの点でコロナ禍とシンクロして、ネット上で盛り上がったほか、ひそかな人気作となった。

残りの人生が150日となったときに、家族を捨てて恋に走ったり、同性への愛に目覚めたり、やけになって散財したり、街で暴れ出したり、競争率が落ちるから東大を目指したり、食べ物を高値で売りはじめたりなどの行動パターンは、コミカルであると同時に妙なリアリティが存在。さらに終盤、隕石の進路がズレて日常が戻ったあと、「やけになってしでかしたことのツケが回ってくる」という展開が笑いと深みを感じさせた。

同作が優れていたのは、シリアスとユーモアのバランス。主人公家族のドタバタに加えて、隕石のインサートカットをあえてチープなものにしたり、映像にひずみが出る360度カメラを使ったりなど、シリアスになりすぎず「気軽に見て笑ってもらおう」という演出が見られた。この制作方針は世間がコロナ禍で重苦しいムードに覆われたため、はからずもフィット。考えさせられる上に、見やすい作品だっただけに、「もっと多くの人々に見てもらいたかった」と今なお感じている。

○■8位 「またもやってくれたか!?」秋元康ドラマへの賛否

2020年“も”と言ったほうがいいだろうか。「企画・原作 秋元康」のドラマがまたも物議を醸した。基本的に秋元はAKB48グループか、坂道グループ絡みのドラマを手がけることがほとんどだが、このところネット上の反響を狙った仕掛けが続いている。

振り返ると、2017年の『愛してたって、秘密はある。』(日テレ系)、2019年の『あなたの番です』(日テレ系)は、ともに最近のドラマシーンでは希少価値の高い長編ミステリー。いかにも話題になりそうな過激なシーンを連続させて黒幕の考察合戦を盛り上げ、どちらもヒット作となった。

そして秋元は2020年も7月26日放送の単発ドラマ『リモートで殺される』(日テレ系)で企画・原案を担当。リモートというタイムリーな設定に、リアルタイムでの殺人事件という過激なシーンをかけ合わせて反響を集めた。

しかし、これらの3作はすべて終了直後に大荒れ。「二重人格者」「サイコパス」「同性愛のもつれ」というミステリーの禁じ手に近い結末であったあげく、「続きはHuluで」の営業戦略に不満が殺到したのだ。

ただ秋に放送された『共演NG』(テレ東系)は、設定の面白さがある上に、業界内をイジるような会話劇など、すべてが高水準であり、視聴者・業界内ともに評判は上々。これは大根仁、樋口卓治という脚本・演出を手がけるスタッフの力によるところが大きかった。つまり、秋元の比類なき発想力を具現化できるスタッフをつければ素晴らしい作品になるということなのかもしれない。

○■7位 『半沢直樹』『ハケン』『SUITS』『BG』4大続編ドラマに明暗

4月スタートの春クールは、TBSが『半沢直樹』、日テレが『ハケンの品格』、フジが『SUITS/スーツ』、テレビ朝日が『BG ~身辺警護人~』と各局がとっておきのシリーズ作をラインナップ。これは東京オリンピックが開催される夏クールが厳しい時期となることを見越して、「その前に数字を獲っておきたい」という狙いによるものであり、各局がガチンコバトルの様相を呈していた。

しかし、コロナ禍で4作すべてが撮影中断を余儀なくされ、予定通りスタートできたのは『SUITS/スーツ』のみ。ただ同作もけっきょく第2話終了後に中断してしまった。一方、その他の3作は第1話を放送せずにじっと我慢。約3か月間待ったあとにようやくスタートさせ、世帯視聴率は全話2桁を記録したほか、ネット上の評判も上々で、それなりに「成功」と言っていいだろう。

『SUITS/スーツ』の世帯視聴率は、第1話以外すべて1桁で7~8%台を推移。物語にも「弁護士事務所の主導権争いばかり」「不倫のくだりがいらない」「次回予告が詐欺レベル」などの不満が飛び交っていた。アメリカヒットドラマのリメイクという大作ながら、シーズン3の行方を危ぶむ声があがっている。

○■6位 TBSも驚いた『恋つづ』のヒット。実証された2つの事実

あらためて2020年はラブコメがフィーチャーされた年だった。コロナ禍で重苦しいムードに覆われた中、気軽に見られるラブコメの需要が上がったのは間違いないが、それも『恋はつづくよどこまでも』のヒットという導火線があってのことだろう。

1~3月に放送された『恋つづ』は当初、まったくと言っていいほど注目されていなかった。世帯視聴率は1桁スタートであり、ネット上の記事もSNSの書き込みも散発的。しかし、5話以降は右肩上がりで自己最高の世帯視聴率を記録し続け、ネット上の話題をさらう形でフィナーレを迎えた。

当作がここまでウケた理由は、格差恋愛、極端なツンデレのイケメン、胸キュンシーンの詰め込みなど、これまで深夜帯か映画でしか見られなかった少女漫画の世界観をより徹底させた上で、プライム帯に持ち込んだことだろう。

これまで各局のテレビマンが「こういう極端に少女漫画的なドラマはプライム帯で通用しない」と決めつけていたものが、放送してみたら通用したのだ。もちろん上白石萌音と佐藤健のキャスティングがハマっていたことは大きかったが、それだけが理由なら他にも当てはまる作品は少なくない。

それ以上に驚かされたのは、ここまで女性視聴者層に振り切ったドラマで、これほどの反響を生み出せたこと。言わば男性視聴者をほぼ無視する形で制作されたドラマなのだが、ここまでやり切れるのなら「むしろアリ」ということが明らかになった。また、いわゆる「壁ドン」がブームになったのは6年前だけに、「胸キュンは永続的なキラーコンテンツである」ことも、あらためて実証されたのではないか。

ただ、あまりに少女漫画的で、深みのあるタイプの作品ではないだけに、業界内の評判は決して高くない。なかには「自分はこういうドラマを絶対に作らない」と拒否反応を示す人もいるのも確かだ。そのため今後、『恋つづ』に準じた作品が量産されることはないのかもしれない。

●なぜ『ルパン』続編放送? ドラマ制作が激変したワケ

○■5位 秋の恋愛ドラマラッシュと、できすぎたハッピーエンド

2020年の秋ドラマには、『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』(日テレ系)、『この恋あたためますか』(TBS系)、『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジ系)、『恋する母たち』(TBS系)の王道ラブストーリーに加えて、『ルパンの娘』(フジ系)、『共演NG』もラブコメのジャンルに属する。近年ずっと刑事、医師、弁護士らが主人公の一話完結モノが主流だっただけに、今あらためて振り返っても「プライム帯で放送される半分近くが恋愛ドラマ」という状況は極めて珍しいことだった。

これだけ増えた最大の理由は、「視聴率調査がリニューアルされて、13~49歳に向けた作品が求められるようになった」「『恋つづ』『愛の不時着』(Netflix)らがヒットし、コロナ禍で一層ニーズが高まった」「もともと秋は恋愛ドラマの時期だった」などがある。

1990年前後の秋ドラマは、「10月にスタートして、12月中盤から終盤に最終話を迎え、クライマックスはクリスマスのシーンで盛り上がる」という構成の作品が主流だった。その後、徐々に視聴率が獲れなくなったことで恋愛ドラマそのものが減っていたが、「今秋は1990年前後の全盛期を思い出すひさびさのラッシュだった」と言っていいだろう。

もともとラブコメが増えた背景には、命や事件を扱う重い世界観の刑事・医療モノより、『恋愛ドラマで癒されたい』という視聴者ニーズがあった。その上、コロナ禍でストレスの多い日々が続いていることもあってか、最終話は「できすぎ」と思わせるほどのハッピーエンドが続出。なかでも『この恋あたためますか』『姉ちゃんの恋人』は、「最終話まるごとハッピー」という甘さに徹するようなシーンが続いただけに、「置きにいった「迎合しすぎ」などの厳しい声もあがっている。

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