記事

紅白前に知らなきゃ損するBABYMETAL 世界魅了した10年の歩み

紅白を見る前に、BABYMETAL伝説をおさらい(Sipa USA/時事通信フォト)

 大晦日の「第71回NHK紅白歌合戦」に、BABYMETALが初出場する。結成10周年を迎え、12月23日には10曲収録のベストアルバム『10 BABYMETAL YEARS』を10形態でリリースした彼女たちの2020年を締めくくるにふさわしい舞台だ。とはいえ、ヘヴィメタルというジャンルを突き進む彼女たちの活動は、これまであまりお茶の間には届かなかったのも事実だろう。なぜ今、紅白なのか?

 2010年に結成されたBABYMETALは、元々はさくら学院というアイドルグループ内のユニットであり普通のアイドルだった。

 軽音部ならぬ、メタルだから重音部。そんな“部活動”として始まったBABYMETALではあったが、メンバーのSU-METALの歌唱力、MOAMETALとYUIMETALのキュートさに加えて、プロデューサーであるKOBAMETAL氏が紡ぐメタル愛に満ちたサウンドとシアトリカルな演出、バックを支える超絶テクニシャン揃いの神バンドの演奏、数多くのアーティストの振り付けを手掛けるMIKIKOMETAL氏によるステージングが融合して生まれる独自の世界観とパフォーマンス、などによりあっという間に多くのファンを獲得していく。

 YouTubeを介し早くから海外での評価が高かったのも特徴だろう。最初は「キュートな女の子がメタルを演じる」というフォーマットに対する物珍しさもあったのかもしれないが、骨太で疾走感溢れるメタルをベースにトランス、ラップコア、ユーロビートなど様々なジャンルをクロスオーバーさせた唯一無二のサウンドは、ロックの本場であるヨーロッパとアメリカで多くのファンを虜にしていった。

 あくまでアイドルユニットとして見る向きも多かった日本とは対象的に、海外では著名なロックフェスに出演するようになると、2014年リリースの1stアルバム『BABYMETAL』は米ビルボードの総合アルバムチャートにランクインする。そしてレディー・ガガのアメリカ公演に参加した事により、日本での知名度は絶対的なものとなった。

 レディー・ガガを筆頭に、多くのアーティストたちがBABYMETALに魅了されていったのも興味深い。その後もメタリカ、“メタルゴッド”ロブ・ハルフォード、ガンズ・アンド・ローゼズ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズといった超大物ロックミュージシャンらと共演したり共にツアーを回ったりするなど、BABYMETALは日本のアーティストの枠を完全に超え、道なき道を進んでゆく。

伝説の始まり、ソニスフィアの奇跡

 2016年4月2日には、ロンドンのウェンブリー・アリーナで日本人初となるワンマンライブを開催し、同会場のグッズ売り上げ記録を更新した。昨年リリースされた3rdアルバム『METAL GALAXY』で、米ビルボードの総合アルバムチャートで1969年の坂本九の記録を56年ぶりに更新する13位に入るなど、彼女たちが達成した快挙は枚挙に暇がない。

 音楽ジャーナリストの柴那典氏は、その中でも最大のターニングポイントとなったのが、ファンの間で「ソニスフィアの奇跡」として語られる2014年のソニスフィア・フェスティバルUKへの初出演だと語る。

「話題性や人気ではなく、パフォーマンスそのものでイギリスに集まった数万人のメタルファンの度肝を抜いた。あそこで最初のオセロのコマがひっくり返ったのは間違いないと思います。メンバーに10年を振り返るインタビュー取材などもしたのですが、そこでも最大のハイライトとして挙がったのがソニスフィア・フェスティバルへの初出演でした」(柴氏)

 イギリスを代表するロックフェスであるソニスフィア・フェスティバルにはこの年、ヘッドライナーのメタリカ、アイアン・メイデン、ザ・プロディジーをはじめスレイヤー、リンプ・ビズキットら錚々たる顔ぶれが並んだ。その中に日本の当時16歳と15歳の少女が名を連ねるだけで大変なことである。

 その上さらに、当初はサブ・ステージへの出演だったところ、予想を上回る反響に急遽6万人規模のメイン・ステージへの昇格を果たしてしまう。フランスのジャパン・エキスポのように日本のカルチャーを見に来るわけではない観客を前に、しかしBABYMETALは堂々のステージを展開してみせる。最初は様子見だった観客からも次第に歓声が上がり、興奮の波が広がっていく。

 そしてラスト曲の「イジメ、ダメ、ゼッタイ」では、観客によるモッシュ(観客同士が激しくぶつかり合う盛り上がり方)まで発生。終演後にはBABYMETALコールとともにアンコールを求める「We want more!」の大合唱が起こったのだった。例えるなら、日本の高校球児が米メジャーリーグの試合に出るようなもの。いや、メジャーのオールスター戦で猛打賞の活躍をするようなものではないだろうか。

キツネ様のみぞ知る未来

 これまで数々の新たな地平を切り拓いてきたBABYMETALは、その歴史のほとんどを“メタルレジスタンス”と銘打ったストーリーを携えて活動してきた。そして今年、9章まで進んできた物語は、10周年という節目を迎えメタルレジスタンス第10章である“最終章”というフェーズに入ったことが発表されている。

 この間、オリジナルメンバーであるYUIMETALの脱退という出来事があっても決して歩みを止めることはなかったが、この“最終章”とは何を意味するのだろうか?

「BABYMETALのプロジェクトではよく“Only The FOX GOD Knows”という言い回しをします。“キツネ様のみぞ知る”という意味なのですが、これは本当に“その先どうなるかわからない”ということだと思います。文字通りに捉えるならば“メタルレジスタンス”の終わりということなんですが、それはBABYMETALというユニット自体の区切りというよりも、活動当初から描いてきたストーリーの一つの完結ということだと思います。その先に何があるのか、キツネ様のみぞ知る、です」(柴氏)

 既に発表されている通り、紅白でBABYMETALが披露するのは代表曲である「イジメ、ダメ、ゼッタイ」。メドレーや紅白特別バージョンを用意するアーティストが増えている中、初出場の紅白に同曲を持ってきたBABYMETALには自らの様式と強みをストレートにお茶の間に伝えたいという自信を感じざるを得ない。

 それは信じた道を進んできたこの10年で得たものなのだろう。柴氏はさらに、“今”のBABYMETALを目撃するチャンスだと語る。

「そもそも音楽番組に出ること自体がほとんどないグループだったので、BABYMETALの名前は知っていてもパフォーマンスを観たことがないという人がほとんどだと思います。デビュー当初の幼かった少女の頃のイメージが鮮烈に残っている人も多いと思いますが、今のBABYMETALは歌もダンスも非常に洗練された迫力がある。いい意味での違和感と爪痕を残してくれるのではないかと思います」(柴氏)

 いよいよクライマックスを迎えるメタルレジスタンス。その目撃者にならない手はない。

◆取材・文/大木信景(HEW)

あわせて読みたい

「BABYMETAL」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    菅首相を吊し上げ 予算委の惨状

    青山まさゆき

  2. 2

    コロナで世帯数激減 23区の危機

    中川寛子

  3. 3

    河野大臣のTwitterに感じる恐怖

    文春オンライン

  4. 4

    絶望する今の日本を歓迎する人々

    NEWSポストセブン

  5. 5

    原監督と溝? 桑田氏G復帰に驚き

    WEDGE Infinity

  6. 6

    Kokiの大胆写真にキムタクは複雑

    文春オンライン

  7. 7

    安藤美姫が指導者にならない事情

    文春オンライン

  8. 8

    坂上忍に批判殺到「二枚舌だ」

    女性自身

  9. 9

    医療崩壊への切り札封じる菅政権

    小西洋之

  10. 10

    バイデン氏の大統領令に反発も

    My Big Apple NY

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。