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最近流行の「ダイバーシティ」という言葉の荒唐無稽~日本が息詰まる原因

「私が質問すると『そこの女性の方』と必ず言われる。アメリカではあり得ないことですよ。これが日本のメディアの現状。周囲はスーツを着た男性記者ばかり。女性記者が少なすぎる」

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「外国人特派員から見た日本のメディア」と題して、11月20日に行われたBLOGOS×日本財団イベントでのこと。AP通信社特派員東京支局の影山優理氏は、日本のメディアのダメさ加減について、上記のように述べた。「ダイバーシティがない」と。「だから原発事故や放射能の問題も、子供を守るという視点が少ない。日本の選挙報道なんかも単なる男のお祭りでしょ」まさにその通りだなと思った。

仕事柄のせいなのか、これまでの生い立ちのせいなのか、日本語より英語の方が自分の心情を表しやすいのか、度々、英語の発言が多かった影山優理氏が、「ダイバーシティ」という言葉を使った時、非常に説得力があったのだが、最近、この言葉が日本企業に、都合よく、いかにも建て前だけといった感じで、使われているのをご存知だろうか?

先日、女性の社会進出についての記事を書いていた時、ネットでいろいろ調べていると、ある企業のホームページで、「ダイバーシティ推進室」なるものが出てきて、「なんじゃそりゃ?」と思った。画像を見る
ダイバーシティといえば、勘のいい方なら、今、お台場ガンダムが鎮座している、ダイバーシティ東京を思い出すかもしれないが、もちろん「台場シティ」という意味ではない。「多様性」という意味だ。

企業のCSR(企業の社会的責任)という当たり前の責務を、企業PRの一環にしようと、大企業になればなるほど、CSR室みたいな部署があり、CSR活動してますよホームページがあり、やれ川のゴミを拾っただとか、そんな自慢話が書いてあるわけだが、このCSR活動の一環として、最近、大企業で大流行なのが、このダイバーシティ=多様性の推進だ。

多様な人材を採用すること。うちでは女性役員が何人いますとか、外国人を積極的に採用していますとか、障害者も採用していますとかそういう話。もう1つは社員の多様性。社員個々人の多様性を重視することが、企業価値の向上につながるとかぬかしているわけだ。

もうほんとこの手の日本企業の建て前美談にはうんざりする。そもそも「ダイバーシティ推進室」なる部署があるということ自体、いかに日本企業が多様性がないか、多様性を認めていないか、という証でもあるわけだが、それがダメだから心を入れ替えて、多様性を社内に取り入れようというのならわかるけど、もしそうであるとするなら、CSR(企業の社会的責任)の一環として、ダイバーシティーを推進してますなんて自慢すること自体、非常に恥ずかしいことで、社内でこっそりやるべきことだろう。

それをこんな風に自慢していること自体、ようは対外的なイメージアップのために、ダイバーシティーという言葉を悪用していることがよくわかる。

それでお飾り的に女性支店長だとか女性役員を大々的に取り上げ、ほらわが社はこんなに女性の人材も活用しているとか、アピールするわけだ。

影山優理氏が質問すると「そこの女性の方」と言われるほど、記者に男性が多いというように、考えてみれば、連日うんざりするほど選挙・政党報道がされているけど、女性を見るのは社民党の福島瑞穂ぐらいで、あとは50~70代のむさくるしいおやじばかりが、わんわん同じようなことばかりを主張しまくっている。メディアの世界だけでなく政治の世界も、いかに多様性がないかがよくわかる。

そういえば先日、あるアナリストがこんなことを言っていた。「本気でグローバル化を目指すというなら、取締役に外国人が一人ぐらいいてもいいんじゃないですか?」グローバル進出しないと日本企業は生き残れないとかいいながら、英語も話せない、海外に出張ぐらいでしか行ったことがない、古臭い年配ばかりが取締役で、本当にグローバル進出が成功するのだろうか?単に流行の言葉を用いて「うちもやらなくちゃ」ぐらいの感覚でしかない。だから建て前ではグローバル化といいつつ、社内をみるとぜんぜんグローバルじゃないという現象が起きている。

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BLOGOS×日本財団イベントでのもう1人の登壇者、『「本当のこと」を伝えない日本の新聞』 (双葉新書)の著者で、ニューヨークタイムズ東京支局長のマーティン・ファクラー氏は、こんな話をした。

「日本は女性だけじゃなく若者が活躍できない。若者が活躍するのを快く思わない風潮がある。なんで日本には新しいサービス、商品、企業が出てこないのか。その理由は若者の活躍を阻む風潮があるからではないか」

まさにその通りだ。政治でもそう。あんなにいっぱい政党があるのに、あんなにいっぱい政治家がいるのに、みな50~70代ばかり。20代、30代が実に少ない。

またマーティン・ファクラー氏は日本のメディアがダメな理由に、新卒採用による純粋培養制度を指摘した。「いい記者、いいジャーナリストになるには、学生卒業したらすぐ記者になる人じゃなく、その前にぜんぜん違った業界を経験した人の方がいい。その方が読者のためになる記事を書けるんじゃないか。日本のメディアがよくなるには、新卒採用をやめて、中途採用を重視すればいい」

大企業のCSR活動の一環としての、ダイバーシティー(多様性)の推進についてもそうだけど、多様な人材というなら、新卒採用だけじゃなく、中途採用をもっと増やせばいい。でもやっていることは、未だ新卒採用重視。なぜなら社内に多様性を持ち込まれたら困ってしまうからだ。

まだ社会に出ていない学生なら、自分たちのいいなりになる歯車として洗脳できる。だから新卒採用を重視する。社内の常識は世間の非常識。だから中途採用で人を多くとるのは困るというのが本音だろう。ダイバーシティー推進室なんて、単なる広報用のお飾りに過ぎないことがよくわかる。

私が日本が国家としてダメな根本の原因は、政治家なんかより官僚にあると最近ことあるごとに指摘しているが、国益を考えない、国民を考えない、省益ばかりしか考えない官僚が生まれる理由は、新卒採用重視だからだと思う。

官僚は新卒採用なしにすべき。省庁別採用もなく、一括採用。省をまたぐ異動もあり。すべて中途採用のみにして、社会人経験を積んだ民間企業の知恵を活かす。本当の意味で人材のダイバーシティーを持ち込んだら、腐った官僚システムはよくなり、復興予算を流用したり、各省で同じような事業をやって税金の無駄遣いをするような、バカなことはうんと減るのではないかと思う。

今回のBLOGOS×日本財団イベントでは、日本のメディアがなぜダメなのかというテーマだったが、メディアに限らず、日本には多様性がなさすぎる。それは島国で民族も少ないからなんだろうけど、ネットで国境がなくなってしまった時代に、いつまでも鎖国し、人材を組織の奴隷にするために、洗脳することしか考えていないから、日本がいま、あらゆる面で息詰まってしまっているのだと思う。

地方が発展しないのも、一部の被災地が復興しないのも、多様性を認めないから。隣町の悪口ばかりいい、よそ者は受け付けず、今まで通りのうちわの既得権益を守ることに必死になってる。だから衰退していくのだ。

ダイバーシティーという言葉が流行りだが、建て前ではなく本当の意味で多様性を取り入れないと、日本はこの先もどんどん息詰まってしまうだろう。

政治家も官僚も企業も、人材の多様性を義務化でもしないと、日本は変わらないかもしれない。

政治家でいうなら、男女比率半分、それぞれの世代から均等にするとか。まあ多様性を義務化するというのは、多様性の否定みたいな話なんだけど、日本のうちわ意識を覆すには、そのぐらいのことから始めないとダメかもしれない。

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