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ハードルをチューニングする

CGM型サービスのKPIとして投稿数を追うと、とにかく簡単に投稿できるようにすることばかりを考えがちなのですが、僕はそれ以前に大前提として持っておかなければいけないのは「ユーザーの投稿が価値あるコンテンツになっているかどうか」という視点だと思っています。

仮にアウトプットの価値を軽視して投稿ハードルを下げることだけに尽力した場合、以下のような負のスパイラルが発生する可能性が考えられます。

投稿者は気軽に投稿できる
→投稿のクオリティが下がる
→見ていても面白くない
→閲覧者がいなくなる
→投稿へのリアクションが薄くなる
→投稿者のモチベーションが下がる
→投稿者もいなくなる
→サービスが衰退する

「ユーザーの投稿がコンテンツとしていかに魅力的なものになるか」を左右するのはサービスのドメインや企画そのものによるところも大きいですが、今回は運営側が設定するハードルとの関連性という切り口でこれを考えてみたいと思います。

  • 価格.comの例

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価格.comで製品レビューを投稿する際には、コメントだけでなく評価項目別(デザイン/操作性/携帯性など)の点数やユーザー属性(初心者/上級者など)を入力する必要があります。クチコミサイトの中では投稿ハードルは高めに設定されていますが、そうすることにより閲覧ユーザーは自分が重視しているポイントを中心に製品を探すことができますし、自分の属性に近いユーザーのレビューをフィルタリングして参考にすることもできます。製品へのひとことコメントを投稿させるだけのクチコミサイトに比べれば、価格.comが「ユーザーの投稿を魅力的なコンテンツに昇華する」という観点で優れた仕組みを持っていることは間違いありません。

  • Facebookの例

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Facebookでは投稿自体のアクションは軽量化されていますので、投稿の質はほとんどコントロールできません。しかしなぜ目にする投稿に興味を持てるのかと言われれば、それは友達の投稿しか流れて来ないという大前提があるからです。ユーザーを多くの友達と繋げてあげるためには登録フローの中でできるだけ多くのパーソナルな情報を入力させる必要があり、使い始めてから投稿するまでには相応のストレスを含みます。よって、Facebookも広い意味で投稿には一定のハードルが設定されていると考えることができると思います。

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ということで、結局僕がこの2つの事例で主張したいのは、思考停止的に簡単に投稿させることばかりを考えるのではなく、投稿数とアウトプットのバランスを考慮し、ハードルを適切な高さに“チューニングする”意識を持つべきだということです。もちろん、コンテンツとしての魅力を担保できる閾値のようなものが決まれば、その範囲内で最大限シンプル化を図ったり、不要なストレスをカットする努力が必要なのは言うまでもありません。

確かに、ハードルを調整するというのは初期段階で一旦ユーザーをスクリーニングする行為かも知れないですが、それによりコンテンツ力がアップすれば、閲覧者と投稿者との間で濃度の高いコミュニケーションが生まれ、結果としてじわりじわりと肉の詰まった成長をしていくはずです。例えば同じ1万人でも、投稿ハードルを下げ切って一気に集めた1万人は冒頭のようなシナリオを想起させる不安定な集団かもしれませんが、このようなステップで形成された1万人は急落することはない“カタい”集団になっているはずです。

最後に、最近とても共感したさとなおさんのインタビュー記事の中に、以下のような発言がありましたので紹介させていただきます。これはキャンペーンに関する話ですが、本質的には今回僕が主張したかった内容と同じだと思っています。

僕は、大きくぶちあげたものはすぐ消費されると思っているところがあるんです。どんな力でもいいから使って、人の心を無理矢理グイッと動かしたとしても、その時期が終わっちゃったらまたやっぱりサラッと戻っちゃう気がする。僕が目指しているのは、もっと漢方的なもの。じわじわでもいいから確実に変わっていく方がよくて。

キャンペーン的に動かせることには限界があると思う。棒をグッて曲げたら反動でポンて戻りがちだけど、そうではなくて、ググググと少しずつゆっくり曲げていくほうが元に戻りにくい。そうやって世の中をじわじわ変えていくことは可能なんじゃないかと。

誰か分からない100万人に対して、ワーッと大声で言って、伝わったかどうかも分からないよりも、狭く100人に深く確実に伝えたほうがいい。その100人が100人に伝えてまたその100人が100人に伝えると100×100×100で100万人になる。信頼できる人達の口を伝わって、伝わっていくほうが強いと思うんです。

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