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感染症と利権〜あのとき、本当は何が起こっていたか

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さて、今年の新型コロナにからめて、2009年のメキシコ豚インフルについて言及されることがあるので、あの件について、私の知っていることを少しまとめておこうと思います。

まず、あのパンデミック騒ぎは、2009年4月メキシコで謎の強毒性インフルエンザが発生し、バタバタ人が死んでいるというニュースから始まりました。豚由来であるということから、このメキシコ発と思われるA型H1N1亜型インフルエンザは豚インフルと呼ばれるようになったわけです。
現在では、感染症に地名を付けて呼ぶことは禁止されていますが、このときはまだそうでなかったことは追記しておきますね。

このとき、とりわけ若者の感染死亡率が非常に高いと報道され、政府が緊急事態宣言を出したことで、世界中で「恐怖の」感染症に対しての軽いパニックが起こりました。
日本でも空港検疫を行う「水際作戦」が実施されたのを覚えている人もいるでしょう。そうです。今回のCovid-19と同じです。

ただ、この水際作戦は、ほぼなんの意味もなかったことも、当時、やはり厚労省は(おそらく国内感染者数をわからなくするために)できるだけPCR検査を行わない方針を出したことも、当時からまっとうな医療関係者の間では批判が出ていました。

その実態は、この2009年5月のお医者さんのブログ記事でよくわかります。
韓国からの帰国者発熱相談の電話、早朝あり、ソウルの国際空港での感染地域からのトランジット客接触否定できないため、“発熱相談センターに連絡・相談の上、受診します”と答えた。その患者が来院したが、”インフルエンザA”の判定となった。

で、保健所に相談したところ、”当県では、感染流行地域・国からであっても、ウィルス検査はしません”という県の方針ということ、電話の上、確認した。国からの達しはまだ無いはずなのに、“通常型の季節型”と全て見なしてしまう方針のようだ。 国・県の隠蔽方針を身をもって実感してしまった。
https://intmed.exblog.jp/8304037/
と書いてあります。ほらね、すごいでしょ。(ちなみに、この時代はツイッターではなくて、2ちゃんねる全盛期でした。懐かしいですね)

そのあたりのバカバカしさは、医師であり作家の海堂尊氏のこの豚インフル事件をモチーフにした「ナニワ・モンスター」でも描かれています。(今回の新型コロナがらみで、この本を「現在を予言した本」として取り上げているむきがありますが、別に海堂氏が超能力者で現代を予言したのではなく (たぶん)、厚労省は2009年に犯した同じ過ちを、性懲りもなく繰り返しているに過ぎないわけ)

さらに言うと、2009年5月1日に首都圏で初の高校生の感染が出たということで、当時の舛添大臣が緊急記者会見を行った直後に、それは誤判定でシロだったという発表があり、舛添大臣がフライングをやったとして謝罪に追い込まれる事件がありましたが、このときの国立成育医療センターの斎藤昭彦感染症科医長の談話が、「簡易検査の診断精度は約8割だったので、最初の判定が誤っていた」ということでした。

現在のCovid-19で、PCR検査の感度が8割にすぎないだとか誤判定が多いとかいう初期の「検査スンナ派」の主張はどうもここから来ているふしがあります。

で、これに関しては10年経ったら技術の進歩があるってことを想定してないのもどうかと思いますが、ただ、この時点ですら、私の知り合いの関係者の複数の方から、「横浜衛研の技術水準から考えて、この時点でRT-PCRの結果はちゃんと出ていて、それがストレートにクロだったから病院に収容し、大臣が記者会見を設定したはず。

そのあと、水際作戦が大失敗だったことを認めたくない厚労省からクレームが来て、感染研の検査ではシロと出たと主張し、無理に撤回させられたのではないか」という疑惑が表明されていたことは付記しておきます。

さらにばらしちゃいますと、このとき、この豚インフルの遺伝子データ自体、CDCから送られてきたものを、全国の研究機関に回してみんなで総力を上げて研究したらよいものを、なぜか、感染研が抱え込んでしまって出さないので、大学などの研究機関の人たちがイライラしていましたよ。結果的に豚インフルは「大したことない、ただのインフル」レベルだったから良かったようなものの、こういう事態なのに縄張りに固執するのかぁ的な、かなりアレな危機対応だったのは確かです。

(なんであたくしがこういう事を知っているかといいますと、思い余った研究者の方々から、メキシコと強いコネクションがあるあたくしのところに、いろいろ問い合わせがあったからです)

結果からいうと、メキシコ豚インフルは、当初、世界を震撼させましたが、今の新型コロナのようなことになりませんでした。
その理由は簡単で、危惧されたような強毒性ではまったくなかったからです。もちろん死者が出たのは事実ですが、例年のインフルエンザと大して変わらないものだったわけですね。

(ちなみに、感染症としては、その前のSARS(SARS-CoV-1)のほうが致命率は遥かに高かったのですが、早い時期に封じ込めに成功したため、局所的な流行にとどまり、こちらも大事には至らなかったのは皆さん御存知の通り)

で、現在の新型コロナに対して、各国の対処が後手後手に回ったのは、実は、このときの「大山鳴動ネズミ一匹」感が強かったことと、実は無関係ではありません。
新型ウイルスによるパンデミックをリアリティを持って描いた2011年のヒット映画『コンテイジョン』でも、そういう台詞があります。

では、なぜ、メキシコ豚インフルに関しては、その程度のものが、当時、一時とはいえ、あそこまで「世界を震撼させるニュース」となったのか。

その最大の理由は、メキシコで、「若い人が感染しやすく、しかもバタバタ死んでいる」と大々的に報道され、メキシコ政府が速攻で緊急事態宣言を出したところにあります。

ここで、「結果的にそこまでする必要はなかったけど、メキシコ政府は危機管理に熱心だったんだな」と思ったあなたは考えが甘いですよ。
当時のメキシコは、そういう状態ではなかったからです。

この少し前、2006年に、メキシコでは大波乱となった大統領選挙がありました。この話は、ちゃんと書くと長くなるので、ものすごく端折って説明しますね。

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