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都心から郊外シフトが起きないワケ - 中西 享 (経済ジャーナリスト)


(sizsus/gettyimages)

「コロナ禍のマンション販売」シリーズ3回目は、マンション販売について長年にわたり調査、分析をしてきた東京カンテイ市場調査部の井出武・上席主任研究員に、販売の特徴などについて聞いた。

Q コロナ禍で都心から郊外に住居を移す動きがあると伝えられたが、そうしたことを示すデータが現れているか。

井出研究員 郊外へのシフトはデータでは現れていない。来年以降にそうした動きが起きるのかもしれないが、現段階では郊外へ住まいを移す動きは見られない。家をいくつか持っていて、そのうちの一つを貸し出すとか、セカンドハウスを持つというのはあるかもしれないが、住んでいる家を先行きの見通しが立たないコロナ禍の中で、売ったり買ったりするのは判断を迷うはずで、結論が出なかったのではないか。企業側もテレワークを長期化、恒久化するかどうかはまだ決めていないところが多く、それが決まらない限り、働く側も住居を変えるのは慎重にならざるを得ない。

そういう中で、賃貸住宅に住んでいる人は住宅ローンがないので、動きやすかったかもしれない。賃貸の人は非正規雇用の比率が高く、仕事を失ったり収入が減少したりして、生活防衛的に家賃の安いところに移らざるを得なかった人も入っている。一方で、持ち家の人は様子見で、リスクのある今動くよりも、もう少し先を見極めてから判断しようとしたのではないだろうか。したがって結論は、郊外シフトは起きなかったと言える。

Q 首都圏のマンション価格は引き続き堅調に推移しているのはなぜか。

井出研究員 価格が強含みの背景には、夏ごろから株価が上昇したのと関連があるのではないか。リーマンショックの時に見られた与信の問題が心配ないだけに、投資家も痛手を受けていない。2014年ごろから株価の上昇で利益確定したマネーの一部が不動産に回る形がみられたが、今回も同じような現象が起きて、マネーが株式と不動産の間で循環している。

このため株価が大きく変動しない限りは、来年もマンションは強含みの価格が続くのではないか。特に都心、タワーマンションの価格は株価と連動するだろう。ただしマンションディベロッパーは用地の仕入れなどに2年以上かかるので、すぐには新築マンションを建てられないが、来年は用地取得に慎重になった影響で供給量は減る可能性がある。

Q コロナ禍にとり、住宅マーケットで人気のあるロケーションに変化が見られたか。

井出研究員 私の見る限りコロナ禍による変化は見られない。第2四半期に大手ディベロッパーが都心のマンション供給が減ったため、一時的に都心物件が減ったが、その後は元に戻ってきている。やはり、都心、駅近のマンションの人気が高いのは変わっていない。

動きが起こるとすれば来年

Q サラリーマンの総所得やボーナス支給額がコロナ禍で全体的には減少しているので、購入できるマンションにも変化が起きるのではないか。

井出研究員 起きるとしたら来年以降だろう。これから買おうと思っている人は収入が下がるという見通しを持った人は、購入に待ったをかけられる。またマンションを買ったばかりで住宅ローンを多く払っている人に対しては、金融機関が相談を受けたうえである程度支払いを減免させるとか、当初の支払額を低く抑えるとか、ローンの組み換えに応じるなど、柔軟に対応できていたので、大きな危機にはならなかった。もともとマンションを購入できる層は、夫婦共働きか、ある程度の給与のある人たちで、こういう危機で多少ボーナスが減っても貯蓄で払ったりできる体力のある人たちだ。

根本的にみても、こうした支払い能力のない人は、そもそも新築マンションを選んでいない。特にこの数年はマンション価格が高騰したので、ここで住宅ローンが組める人はパワーカップルという言葉が出てきたように、夫婦合わせての年収が1500万円とかの層がマンションを購入できたが、そうでない収入の低い人はマンションを購入していない。コロナにより直接被害を受けた多くの人は、マンション購入層とは違う人たちであることも浮き彫りになった。

Q テレワークの拡大により、オフィス需要が減少して渋谷区などでは空室率が上昇しているようだが。

井出研究員 渋谷やかつての品川では再開発が行われて、質の良いビルができて全体的に賃料が上がり、店子の入れ替わりが起きている。渋谷などは家賃が高くなって店子が出て行っても、入れ替わりに新しくなった渋谷にふさわしい別の店子が入ってくるので、そのこと自体はそれほど憂慮する必要はない。リモートワークの増加によりオフィスの床面積は減らせても、ソーシャルディスタンスとかリモート専用の床が必要になったりするのも無視できないので、リモートが増えたからと言って単純にオフィススペースが減るとは考えられない。

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