記事

「帰省しないで」「自粛までは求めない」バラバラすぎる自治体の発信…なぜ混乱が生まれている? - 葉上 太郎

1/2

 この年末年始は帰省するかどうかで、多くの人が頭を悩ませたはずだ。

【写真】この記事の写真を見る(7枚)

 新型コロナウイルス感染症が流行してからというもの、ゴールデンウィークやお盆の帰省は自粛を求められた。せめて正月だけでも故郷に帰りたいと思うのが人情だ。しかし、第3波の感染拡大は収まる気配がない。感染力の強いウイルスの変異種まで出現した。

 そうした中で各都道府県の知事の「メッセージ」は分かれた。大都市側では「帰省しないで」と訴える知事が多かったが、帰省先となる地方の中には「自粛までは求めない」とする知事もいたのだ。いったい、どちらの考えを尊重すればいいのか――。

“鹿児島出身の東京在住者”はどう判断する?

「何よりも外出を自粛することです。もちろん帰省が含まれるわけでございまして、『家族でステイホームして(家にいて)ください』と申し上げている」

 東京都の小池百合子知事は、2020年12月21日の記者会見でこう述べた。新規感染者が増えるばかりで、医療現場の疲弊が限界に近づいていたのを受けての発言だった。


小池百合子東京都知事 ©AFLO

 一方、鹿児島県の塩田康一知事は帰省の自粛まで求めなかった。「鹿児島県の感染状況は、まだ県民の行動を制限する段階にありません。人にはそれぞれ事情もあるので、感染拡大地域からの帰省については、体調管理をしっかりしたうえで、基本的な感染防止対策を徹底し、混雑する時期を避けるなどして行ってくださいと訴えています」と県の担当者が説明する。

 東京には東京の考えがある。鹿児島にも鹿児島の考えがある。それぞれ正しいのかもしれない。だが、鹿児島出身の東京在住者はどう判断したらいいのか。

「慎重に検討してください」というメッセージ

 秋田県の佐竹敬久知事も「こちらに帰ってすぐに飲み歩いたり、人の多い集まりに出たりすることは控えてほしい」とは述べたものの、帰省の自粛までは求めなかった。やはり「他県に比べれば医療体制が比較的厳しくない」(県担当者)のが理由だ。

 ならば、東京在住の秋田出身者はどうすべきか。県の担当者に尋ねると、「お住まいの地域の知事に従ってください」と言われた。「居住地の知事に従え」というメッセージはこれまでに発信されていない。県のホームページには「首都圏、中京圏、関西圏との往来は、できるだけ避けるようお願いします」とは書かれているが、これでそこまで理解するのは少し難しいような気もする。

 多くの県の態度は、別の意味で分かりにくい。「帰省は慎重に検討してください」とするにとどめているからだ。

「これでは、分かりにくすぎる」という声が県民から寄せられたため、具体的な都道府県名を挙げて往来の自粛要請をし始めた県もある。熊本県だ。

14都道府県に“自粛要請”をしたが……

 政府の分科会は、都道府県ごとの感染状況を四つのステージに分けて示している。熊本県ではそのうち悪い方から2段階目の「ステージ3」以上の地区を自粛要請の対象にすることにした。ステージの判断にはいくつかの指標があり、直近1週間の陽性者数が人口10万人当たり15人以上という項目を使った。

 対象となる都道府県の一覧表は数日ごとに更新しており、熊本県が28日に発表した往来自粛リストでは、感染者が多い順に(1)東京(2)神奈川(3)広島(4)大阪(5)京都(6)埼玉(7)高知(8)愛知(9)千葉(10)兵庫(11)福岡(12)奈良(13)北海道(14)沖縄の14都道府県を挙げた。「対象地区に住んでいる出身者には、県内の親族から帰省を控えるよう伝えてほしいとお願いしています」と担当者は話す。

 ただ、対象となっている県では、その事実を知らない県庁もあった。例えば、高知県の担当者は「えっ、うちは熊本県から帰省の自粛対象とされているのですか」と驚いていた。

 どうしてこのような事態になるのか。感染症対策は都道府県知事の役割ではあるが、県をまたぐような対策も単独でばらばらに決めているからだろう。都道府県で連携した発信や、政府の仲介・調整が不十分なのだ。分かりにくいだけでなく、必要な人に情報が届きにくくなっていないだろうか。

広島は「ばかたれーっ!!」ポスターが話題に

 広島県は、熊本県と同じように直近1週間の陽性者数が10万人当たり15人以上の都道府県や、知事が不要不急の外出を控えるよう訴えている地区とは、往来の自粛を呼び掛けている。

 このため広島県観光連盟は、帰省を諦めた出身者へのメッセージを書き込んだポスターを東京駅などに張り出した。

「当初は『帰っておいで』と呼び掛けるポスターを企画していたのですが、第3波の感染が拡大し、そのような事態ではなくなりました。広島は愛郷心の強い県です。帰省できない人の胸の内はいかばかりだろうと思いました。そうした気持ちを現すのは、広島弁の『ばかたれ』という言葉が一番ぴったりすると考え、冒頭に『ばかたれーっ』と大きく書きました」と観光連盟の担当者は話す。

 文面には「一体いつになったらみんなに安心して帰っておいでと言えるのか。本当に寂しくて、悔しい想いです。だから、今回ばかりは叫ばせてくれませんか。コロナウイルスのばかたれーっ!!わしらは負けんけえー!!!!…って。東京に暮らしている広島人のみなさん、なかなか会えんのは寂しいけれど、こっちはこんな感じで元気にやっとるよ。みなさんの帰る場所は、絶対、無くなりゃあせん。じゃけぇもうひと踏ん張り、一緒に頑張ろうや。また会えるのを、待っとるけぇ」などと書き込んだ。

あわせて読みたい

「新型コロナウイルス」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    菅政権が見落とした学者の二面性

    内田樹

  2. 2

    「もう終わりだ」Qアノンの落胆

    Rolling Stone Japan

  3. 3

    不安煽るワクチン報道に医師呆れ

    中村ゆきつぐ

  4. 4

    伊藤忠変えた利益追求のカリスマ

    ヒロ

  5. 5

    極限の克行氏 真相供述で逆転か

    郷原信郎

  6. 6

    司法試験 受験者数763人減は深刻

    企業法務戦士(id:FJneo1994)

  7. 7

    ワクチン接種した日本人の感想は

    木村正人

  8. 8

    なぜ国会議員は居眠りするのか

    千正康裕

  9. 9

    20年後の日本は「超独身大国」

    PRESIDENT Online

  10. 10

    コロナ闘病した医師が明かす教訓

    ABEMA TIMES

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。