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奨学金1,500万円の取り立てにあう高学歴ワーキングプア-高学費と就職難が大学院生の心身壊す

11月16日、「独立行政法人の大整理に関するシンポジウム~国民への影響は~」を開催しました。国公労連と特殊法人労連、自由法曹団の共催で開いたものですが、シンポジウムの中で独立行政法人の行政サービスが切り捨てられていくと国民の暮らしにどういう影響が出るのか? という観点から大学院生の方が要旨次のように発言しました。

 私は大学院生です。独立行政法人の行政サービスの利用者という立場で発言させていただきます。

 大学院生というと、大学生の延長で勉強好きが集まっているとか、遊んでいるんじゃないか、などというイメージがあるかも知れませんが、大学院生というのは、教育を受けながら研究もおこなっている研究者でもあります。

 多くの大学で実際に実験とか調査をおこなっているのは大学院生やポスドクなどの若手研究者ですし、非常勤講師として学部生の講義を担当し大学教育を支えている大学院生もいます。

 私は全国大学院生協議会で「2012年度 大学院生の経済実態に関するアンケート調査」に取り組みました。

 このアンケートには、全国の38の大学から755人の大学院生の回答がありました。アンケートから分かってきたのは、大学院生が置かれている状況が極めて劣悪であり、同時にそうした窮状が急速に悪化しているということです。

 日本はそもそも世界で一番高い学費で、学部でも年間100万円を超えるのがざらになってしまっています。その上、独立行政法人の日本学生支援機構の奨学金というのは4分の3ほどが有利子になっていて、無利子は4分の1ほどしかありません。

 現在の大学院の入学金と学費は国公立大学でも80万円以上で、私立大学では100万円を超えるのがざらです。大学でおこなっている研究や調査に対して給料が支払われるわけではありませんから、経済上の不安を抱える大学院生は半数にのぼっています。  以上が大学院生の方の発言要旨ですが、最後に「2012年度 大学院生の経済実態に関するアンケート調査」からいくつか具体的な大学院生の声を紹介します。

 また、61.4%が「収入の不足が研究に影響を与えている」と回答しています。この61.4%のうち具体的な影響としては上のグラフにあるように「研究の資料・書籍を購入できない」が76.2%にものぼり、調査・学会・研究会に行けないなど、経済的な困窮によって研究が進められない事態になっています。

 上のグラフは、今回のアンケートから集計した「日本学生支援機構の奨学金の借入総額」です。

 奨学金は約6割の大学院生が受けていて、うち約8割が独立行政法人の日本学生支援機構の奨学金です。全体の平均借入額は300万円を超えていて、1,000万円以上が2.9%で、最高借入額が1,500万円を超えている人もいます。

 こうした多額の奨学金を抱えた上に、博士の学位を取得したとしても任期の無い大学教員のポストや研究機関のポストを得ることは現在困難であり、多くの人が任期付きのポスドク、あるいは非常勤講師などの「高学歴ワーキングプア」と呼ばれる劣悪で不安定な状態に置かれながら次のポストを得るために業績を上げなければならないというプレッシャーのもとで研究を続けています。こうした先行きの不安定な中でのプレッシャーで業績不安を感じている人は8割にも達していて「心身の不調」は大学院生全体で10人に1人、オーバードクターでは約4割にものぼっています。就職難が言われて久しいですが大学院生の就職難は当然だというような風潮の中で心身の不調を来すところにまで追い詰められているのです。

 独立行政法人通則法の改悪など行政サービスの切り捨ては、私たち大学院生にも悪影響が及びます。

 第1に奨学金を扱う独立行政法人の日本学生支援機構が自体が縮小させられるということは奨学金制度がますます金融ローン化してしまうと同時に、奨学金を「借金」として回収業務が民間業者に下請けされブラックリスト化などがさらに強化され、大学院生は「借金の取り立て」に一層苦しめられることになってしまいます。独立行政法人の縮小というのは、じつは奨学金制度の縮小でもあるということです。

 第2に独立行政法人には多くの各種研究機関が存在しています。独立行政法人の研究機関は、大学院生の進路先としてもあるわけですので、独立行政法人の大整理によって大学院生の就職がなお一層困難になってしまいます。大学院生は独立行政法人からの行政サービスの受け手という点と、進路先という点の、2重の意味で独立行政法人の国民サービスの拡充を求めるものです。

 「死んだほうが奨学金の返済も可能なのかもしれない」

 ◇借金が多く、経済的にも困難なのに、今後どのように奨学金の返済をしていけばいいのか、また就職のことも考えると死にたくなります。死んだほうが奨学金の返済も可能なのかもしれないと考えます。

 ◇高額な学費は学生・院生の生活から研究の割合をはく奪します。教育支出の社会的負担の上で学生・院生をエンパワメント(激励)する制度構築は急務と思います。

 ◇学費が高すぎる。給付型奨学金を増やすか、授業料を下げなければ、有能だが経済的理由で院に進学できない人材が多くなり、院のレベルの低下に歯止めがかからず、社会全体に悪影響が出てくる。

 ◇様々なコピー代から地方での調査代まで基本的に全て自費であり、とくに調査代は回数が重なると辛く、内容よりまずかかる金額を考えてしまう。また周囲の院生を見ていると、一人暮らしで兄弟が居る場合、大学院入学前には博士課程への進学を目指していても、金銭的余裕のなさから進学を諦め修士を出て就職する人が多い。優秀な人材が博士に行くことができないのは本当に勿体ないと思う。

 ◇奨学金制度が貸与であること自体に不満がある。国公立大学の授業料が高すぎる。日本の経済が停滞・減退期であることを考えれば、貸与による返済は、明らかに学生側の負担増であり、日本の教育・研究レベルの衰退を招き、国際社会から無視される状況になるといわざるを得ない。教育に十分な投資をしない国は滅びる。

 ◇生活状況に関して、博士課程に進学する場合、両親は定年間近もしくは定年を迎える可能性があり、しかし、アルバイトをしながら研究を十分に行うのは時間的に難しく、RAのような制度では収入に限度があります。金銭的な問題で、必要にも関わらず通院を十分に行えないなどの問題があり、また生活費を切り詰めた生活を送っているため、家族など周辺の方々に心配されることもあります。休日があっても遊びに出かける余裕もありません。精神的な休息ができないことは、研究遂行に大きく影響していると感じています。

 ◇博士課程進学を考えていますが、金銭面で不安を感じています。もし進学も就職もできなかった場合、すぐに奨学金を返し始めることが困難だと思います。進学したとしてもこれまで以上にお金が必要になることが予想されます(親からの仕送りがなくなるため)。この場合、今以上に奨学金をあてにしなければならず返済に不安を感じます。

 ◇経済的負担やそこから来る研究への悪影響があまりにも多い。経済的窮乏→アルバイトで工面→研究時間の不足→業績の不振→経済的窮乏という悪循環に陥っている。体力的にも負担は増大するばかりである。そのような点で、院生の格差がどんどん広がっていくように感じる。貧乏人は研究も満足にさせてもらえないのか。種々の奨学金制度も貧困な院生の実態をまったく反映しておらず、何のための制度なのかわからない。このような不公平さを感じ、正直失望するしかない状況である。

 ◇この数年間、自分より有能な先輩方が経済的理由から学業の続行を断念したり、また将来有望な後輩たちが今後への不安を抱き研究者への道を諦める瞬間を何度も目にしてきました。世界に通用する力をもった研究者の卵は、日本中のあらゆる大学院にいます。ただ、多くの研究機関は、残念ながら彼らをサポートするシステムを構築できていません。純粋に学びたい、または自分の才能を社会のために役立てたいという志を踏みにじるような国家に、果たして希望がもてるでしょうか。

(byノックオン。ツイッターアカウントはkokkoippan)

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