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習近平国家主席の死角

習近平体制は盤石なように見えます。多少のざわつきは力づくで弾圧し、何もなかったかのようなふるまいをします。中国の報道官の発言を見ていると実に対立的で独善的、非協調的で中国を中心に世界が廻るという中国天動説であり、これは中国の長い歴史にほぼ共通する価値観と位置づけであります。

香港だろうが、チベットだろうが、南沙諸島だろうが怖いところ知らず。今では世界のコロナワクチン開発競争で中国陣営への供給を通じて世界の中国ファン層をより増やそうという外交戦略を着々と進めています。

他方、経済は鄧小平氏が唱えた社会主義市場経済を1992年より採用しており、国有企業と私企業が微妙な関係を維持しながら双方が両輪の輪のような役目を担ってきたのがこの28年でありました。私は中国共産党がそう簡単に崩壊するなどとは思っていないし、仮に崩壊するのであればある日突然消え去るのではなくその予兆というものがどこかで見えるのだろうと考えています。

過去、数十年、中国という国を横目で見ながら思ったことは外敵に叩かれれば叩かれるほど強くなる体質である点でしょうか?中国は歴史的にも外交は一時期を除けば下手ではありません。朝貢という貢物の外交を通じた独特の手法の片鱗は今でもアフリカ諸国やベネズエラをはじめ、イタリアなどの欧州、そして今ではトルコを取り込むべく政策にも見て取れます。

トランプ大統領が中国を締め上げたことは確かに影響があったように見えますが、中国はしたたかであり、それぐらいではへこたれなかった、そしてここでアメリカの代表選手の交代があったとしても中国はさして何も恐れていないというスタンスにみえます。

ところが、中国のもう一つの歴史は国内の分裂であります。つまり、内部にこそ、その最大の敵は存在すると考えるべきでしょう。直近の分裂は戦後の共産党と国民党の分裂です。日本は中国との戦争の際は国民党と戦っていました。今の共産党とは戦っていません。ところが戦後、毛沢東率いる共産党は国民党を台湾に追いやり、本土制覇をします。これはほんの一例でこんな歴史が過去延々と繰り返されてきたのです。

中国共産党はそもそも毛沢東氏がベースを作り、鄧小平氏がそれを進化させたといってもよいのですが、同氏が1997年に死去してからグリップが効かなくなったように見えます。それがいわゆる閥の顕在化であり、上海閥、団派(共青団)、太子党という三大閥同士の権力闘争であります。太子党の習近平氏がトップについてからはこの内部の力関係の制圧と粛清に力を注いできたのはご承知のとおりです。

私がもし、習近平氏に隙があるとすれば派閥闘争をしている間に鄧小平氏が唱えた社会主義市場経済における私企業の躍進ぶりに無頓着だったという点であります。国営企業がインフラを主体とした伝統的企業が主流であるのに対して中国人の資質的に得意とみえるコンピューター、IT、そしてデジタル社会が国家の新たなるインフラとなることを放置しすぎたかもしれません。

アリババ社の金融子会社、アント社の上場をその2日前に食い止めたのはアリババ社の創業者であるジャックマー氏の共産党への批判的声明があったからとされます。マー氏のその後の動静についてはあまり聞こえてきません。完全に監視され、国外にも出られず、行動を起こせない状態にあると一部で報じられています。

アントの上場中止を指示したのは習近平氏、一方、アリババが巨大すぎて潰せないというのもまた事実。しかし、習近平氏がマー氏と業務改善命令で手足を縛られたアント社を締め上げたことで中国国内を二分化するきしみ音の素地を作った可能性があります。

実質国営企業のファーウェイを除く中国の巨大IT企業、テンセント、バイドゥ、京東といった創業者たちが同じような加速度的成長の道を歩む中、「その向こうの壁」を見せつけられた今、仮に私企業軍団が反旗を翻せば共産党の一党支配体制は統制を失わせるに足る十分なパワーがあります。

それは今日においてどんな武器や軍隊よりも強く、強大な情報網とデータを通じて人民のマインドへの圧倒的影響力を持てるからです。

それに対して中国政府は独占禁止法の改定を21年早々に行い、巨大企業への政府の関与を深める工作に踏み切ります。それが政府対私企業の戦いの火ぶたとなれば盤石の習近平体制に国内の不和というクラックが生じる点は否定はしません。内部分裂は中国の歴史なのです。

ブラックホールは内部崩壊によって生まれます。巨大になり過ぎたとき、外圧にはめっぽう強くなるけれど内部が蝕まれているということはしばしば起きるものです。フランスの宗教革命もそうでした。絶対はなく、それは思わぬところからそのきっかけが生まれるのがこれまた世の性ともいえるのでしょう。

では今日はこのぐらいで。

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