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積極的な受診を!

立憲民主党の羽田参議院議員がお亡くなりになった。働き盛りの年代で突然の死を迎えられたことに心よりご冥福をお祈りします。

この極めて残念な出来事の詳細が明らかになるにつれ、なんとか最悪の結果を迎えることが回避できたのでは、という思いが募る。

立憲民主党が明らかにされた概要をまとめると以下のとおり(一部情報を加筆)。

【年齢53歳。基礎疾患は、糖尿病、高脂血症、高血圧等】

23日(水):東京→長野(県連会議)→東京(財務省職員と面談)。症状の有無については言及なし

24日(木):11:30頃、参院診療所に秘書から連絡が入った。症状はないが、羽田議員の近場の人に陽性が出たという連絡があり、PCR検査がどこで受けられるかという問い合わせをしたいということだった。院内の診療所からは症状がない場合には、民間のPCR検査しかできないので診療所から民間PCR病院のリストをファックスで送った。そのリストの中にあった、羽田議員の主治医のいる紀尾井町メディカルクリニックに連絡したところ、検査ができないということで、翌日まめクリニックに予約をすることになった。深夜に38.6度の発熱

25日(金):九段下のまめクリニック(無症状者へのPCR検査を手広く行われているところ)にネットでPCR検査の予約をした。自宅で過ごす。体温は朝が36.5度、夜が38.3度

26日(土):自宅で過ごす。体温は朝が37.5度、夜が38.2度

27日(日):15時45分からまめクリニックにPCR検査の予約が入っていたので、秘書が自宅に迎えに行き、クリニックに向かう途中、羽田議員の呼吸が荒くなり、「俺、肺炎かな」と羽田議員が言った後会話が途切れたので、後部座席のドアを開け、議員に声を掛けて触れた。若干異常だったので、すぐにその場で救急車を手配して、救急車で東大病院に搬送した後、死亡が確認された。病院外で死亡されたと判断されたので、検死に移し、夕刻に結果の報告。

当初、心筋梗塞との報道もあったが、この経過をみると異なるようだ。

残念でならないのが、結局、初期診療がなされないまま死亡に至っていること。初発の症状が明らかではないが、立憲民主党の発表だけを見ると24日深夜の38.6度の発熱。しかし、その前の24日午前に秘書が参院診療所にPCR検査についての問い合わせをされているので、何らかの症状がその時点あるいはそれ以前にあったのかもしれない。そして、25日にも受診はなされず、結局無症状者へのPCR検査を謳い文句にされたクリニックへの検査予約を27日の日曜日にされたまま、そこに行き着く前にお亡くなりになった。東大病院でも搬送前死亡なので治療はなされなかったのだろう。

この経過で思い起こされたのが、鳥取県知事の次の言葉。

「全員がすぐ入院できる態勢を確保しており、まず肺や血液の酸素を調べる。比較的簡単に状態が分かる。よく「元気な人が急に亡くなる」と言われるが間違いだ。必ず軽症から中等症、重症へと経過をたどる。」(中国新聞

ここで言及されているのがパルスオキシメーターによるチェック。指に挟むだけの簡単な装置で、患者になんの負担もなく血液中の酸素飽和度を測ることができる。これが下がっていれば、酸素交換がうまく出来ていないことを示している。つまり肺に異常があることがすぐにわかるのだ。急に亡くなる前に症状の進行を把握できる重要な武器だ。

そして、初期診療を受けることは大切だ。迅速抗原検査で新型コロナについてPCR検査よりも早く簡易に確かめられるし、パルスオキシメーターや血液検査(D-dimerなど)で症状の悪化の兆候がないかも確認できる。必要があればX線やCTで肺の異常所見がないかの検査・診断も。そして、持病などのリスク要因も加味した上で、パルスオキシメーターやバイタルサインなどで経過観察をしていけば、症状の進行があった際には適時に抗凝固薬やステロイドなどの対症療法を開始することができ、重症化や死亡を防げる。そういった手順が定まってきたことが今の死亡率の激減の大きな要因なのだ。

故人にはまさに重症化リスクとして挙げられている糖尿病、高脂血症、高血圧の持病がおありだったとのこと。

また、息苦しさなどの自覚症状がないまま、肺の異常が進む(「幸せな低酸素症」と呼ばれている)ことがあるのが新型コロナウィルス感染症の重症例の特徴の一つ。経過をみるとこれが起きていたのかも知れない。

今回の悲劇は、起こりえることがまさに起きてしまったものといえるだろう。

ここで是非申し上げておきたいのが、今回の残念な事態を「PCR検査をしなかったから」と短絡的に喧伝されるのは、再び同じ事態を招きかねない、ということだ。

既に煽り専門ともいえるワイドショーの某コメンテーターが実際に行っている(「人の死まで煽りに利用するコメンテーター」)ところ。しかし、経過をみると、PCR検査だけでは今回の死亡は防げなかった。

最初の発熱段階で「診察」をお受けになることによって初めて、前記のとおりPCR検査だけにとどまらず必要な検査(血液検査、血中酸素飽和度、X線など)が行われるからだ。そして、リスクに見合った経過観察(パルスオキシメーターによる経時的チェック)やより詳細なCT検査の結果によって標準的な治療(抗血栓薬、ステロイド)が行われれば、鳥取県知事が言われている通り重症に至る過程でそれを掴んで最悪の結果を遮断できたかもしれないのだ。

10月頃までとは違い、現在はどの地方自治体でも発熱外来が整備されていて、初期段階で誰でも医療にアクセス出来る態勢は整ってきている。

今回は、おそらく要職に就かれている国会議員ということもあり、受診に対する心理的バリアもあったのかもしれない。その点についても、社会が、もっといえばマスコミが、感染したというだけで大袈裟な報道をすることを控えれば取り除けるはず。

故人がお亡くなりになったばかりのタイミングで、経過について詳細に論じることは本当に申し訳なく思うところだが、同じ悲劇が起きないために、敢えて書かせていただいた。症状があれば、ためらうことなく発熱外来を受診していただきたいし、それを妨げる心理的バリアを取り除くよう、社会ー特にマスコミーは意識を強めるべきだ。

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