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【2020年の福島はいま】新型コロナ感染拡大に隠れる内堀県政の原発事故対応 年内最後の会見でも主体性欠く 「国には言うべき事言ってる」と仰天発言も

28日午前に福島県庁で開かれた内堀雅雄知事の定例会見は、毎年〝恒例〟だった「今年の漢字」は無し。新型コロナウイルスの感染拡大の危機感を身振り手振りで強調しながら県民に慎重な行動を求めた。

一方で、事故から丸10年を控える原発事故対応については、相変わらずの「国が国が…」に終始。除染無き避難指示解除も汚染水の海洋放出も自分の言葉で語らないまま、2020年を終えようとしている。「国には言うべき事を言っている」を胸を張る内堀知事はしかし、原発事故被害者切り捨てを粛々と進める。2020年最後の定例会見でも〝内堀節〟は健在だった。

【病床使用率は38・6%】

「今年は新型コロナウイルス感染症が世界各国で猛威を振るい、福島県においても県民の皆さんの命と生活を守るために感染症対応に総力を挙げて取り組んだ1年だった」

 「新型コロナウイルスに翻弄された1年だった。東京五輪の1年延期が急きょ決定されたのが3月24日。これは聖火リレーグランドスタートの1日半前だった。私自身はある意味、この日を境にして新型感染症との闘いに切り替わるタイミングだったととらえている」

 官公庁仕事納めの28日午前に開かれた内堀知事年内最後の定例会見は、やはり感染症問題が中心となった。毎年〝恒例〟だった「今年の漢字」も無し。県職員も地元記者も「それどころではない」と口を揃え、内堀知事が自ら「今年の漢字」を示す事も、記者クラブ側から尋ねる事も無かった。さすが予定調和で進んできた定例会見。一方で、「ああいうくだらない〝儀式〟はやらせたくなかった」と語気を強めた記者もいる点は救いだった。 

 感染症対応が喫緊の課題である事は間違いない。中でも福島市は、病院、飲食店、大学に加えて、デイサービス施設での集団感染も確認された。28日夕に会見した木幡浩市長は「混乱」、「多忙」という言葉を繰り返し口にした。県庁内の至る所にも「福島市新型コロナ緊急警報発令中」と書かれた赤いポスターが貼られている。成人式はオンライン開催が決定。市内の公共施設は急きょ、使用が中止された。

 定例会見で、内堀知事は「第3波の真っ只中にある」、「予断を許さない」と危機感を示した上で、「病院の入院患者の受け入れはひっ迫している。病床使用率は38・6%と極めて厳しい」、「福島市や県北地域の病院だけでは陽性者を受け入れる事が出来ず、郡山や会津若松、いわき、白河、相馬での受け入れを要請している。

いわき駅前のホテルでも十数名の受け入れを急きょ、お願いしている」として、県民に「出来る限り医療機関に負担をかけないよう、慎重に行動して欲しい」と呼びかけた。

福島県庁にも、至る所に「福島市新型コロナ緊急警報」を知らせる赤いポスターが貼られている。緊急警報は1月11日まで延長された

【「強い意向」あれば除染無し?】

間もなく原発事故発生から丸10年。今年も汚染水の海洋放出や汚染土の再利用、避難者切り捨てなど多くの動きがあったが、定例会見での内堀知事は相変わらずペーパーの棒読みに終始した。感染症問題では身振り手振りを交えて語ったのとは対照的に、いつものように自分の言葉では語らなかった。

 「県民の皆さんの懸命な御努力と国内外からの温かい御支援により、双葉町でや大熊町、富岡町の帰還困難区域の一部地域で避難指示が解除されたほか、JR常磐線が全線で運転を再開し、福島ロボットテストフィールドや東日本大震災・原子力災害伝承館等の新たな拠点施設が完成するなど、福島県の復興は着実に進展しております。一方で、今なお多くの方々がふるさとを離れ、年末年始を迎えようとしておられます」

 「福島県の復興は着実に進展している」というのは、もはや常套句。記者も「伝承館」の問題など、個々の発言には突っ込まない。毎日新聞記者は帰還困難区域の「除染無し避難指示解除」について質した。内堀知事は「地元自治体の強い意向」を強調したものの、自身の考えは示さなかった。

 「先日、国の原子力災害対策本部で決定された新たな避難指示解除の仕組みについては、土地活用を主な目的とし、地元自治体に強い意向がある場合に限り、特例的に適用されるものと考えている。今回の新しい措置は、県内のある自治体からの強い要請を受けて、特例的に対応が講じられたものと考えている」

 「町長や村長からは、これまでの原則通りしっかりと除染をし、生活インフラを再生しながら安心してふるさとに帰れる環境づくりを進めたうえで避難指示を解除して欲しい、という強い訴えを聴いている。これからも自治体の強い意向を尊重しながら、従来の原則を大事にして対応していく事を国に求めていく」

 汚した者が責任を持って原状回復するのが基本原則だろう。しかし、原発事故では「地元の強い意向」の名の下に、原状回復無き避難指示解除へ歩み始めた。それに対する内堀知事の言及は無かった。

開催が1年延期された東京五輪。新型感染症の拡大で五輪どころでは無いが、今なお中止決定には至っていない。福島県庁内でもカウントダウンが進んでいる

【「処理水、政府が慎重に模索」】

汚染水の海洋放出問題について質したのは河北新報記者。ここでも内堀知事は〝両論併記〟の答えに終始した。

 「トリチウム水の取り扱いについては、海洋放出に反対する意見、タンク保管継続を求める意見、風評に対する懸念などの意見が出されている。一方で、福島第一原発の立地町からは、保管継続による復興や住民帰還への影響を強く危惧する意見もある。

福島県民のみならず国民の理解が十分に深まるよう、国や東電において正確な情報発信に取り組む必要がある。最も重要なのは風評対策。処理水の取り扱いによって、福島県の農林水産業や観光業に影響を与える事の無いよう、万全の対策を講じる必要があると考えている」

 内堀知事の目には、政府が「慎重に」「模索」しているように映っているという。

 「様々な意見をふまえながら、国において慎重に対応方針を検討しておられるものと受け止めている」

 「様々な意見を全てピタッと解決するような正解というものをなかなか簡単に作り上げる事は出来ない。その中で政府自身が模索をして検討を深められているものと受け止めている」

 しかし、内堀知事の発言には主体性が無い。国の方針決定を待っているばかり。そこを記者が改めて問うと、こんな発言をして驚かせた。

 「福島県は震災前も含めて、原子力政策について、政府に対して言うべき事を言うという姿勢を貫いている。特に原発事故以降、処理水の問題も含め廃炉対策について、その時点時点で政府に対して意見を申し上げている。私自身、言うべき事を言って来た」

 「政府や東電に対して言うべき事を言って来た」のなら、なぜ原発避難者が切り捨てられなければならないのか。なぜ国や東電が各地の地裁判決を受け入れないのか。国家公務員宿舎に入居する〝自主避難者〟の親族宅にまで押しかけ、避難者追い出しに協力するよう迫っているのは県自身ではないか。

 感染症の問題は命に直結する大切な問題。しかし、原発事故対応も命の問題だ。コロナ禍に隠してはならない。

(了)

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