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「ママの合図で2階からドタバタと女性10人が…」最盛期の“ヤバい島”を体験した男が語った高揚感と恐怖 『売春島』外伝#1 - 高木 瑞穂

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「宴会で顔見せ、気に入ったらそのまま…」三重に実在する“ヤバい島”には消防団も警察も「慰安」に来ていた から続く

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 公然と売春が行われる“ヤバい島”として、タブー視されてきた三重県の離島・渡鹿野島。「売春島」と呼ばれているこの島の実態を描いたノンフィクションライター、高木瑞穂氏の『売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』(彩図社)が、9万部を超えるベストセラーとなっている。

 その後も取材を続ける高木氏が、最盛期に訪れた経験のある客たちの視点で、渡鹿野島の当時の状況に迫った。(全2回の1回目。#2へ続く)

渡鹿野島のメインストリート。旅館や置屋が建ち並んでいたが今は閉店した店も多い(著者提供)

◆ ◆ ◆

『売春島』で描ききれなかったこと

 拙著『売春島』の取材の際、僕には一つの心残りがあった。これまであまり語られてこなかった島の裏面史を紐解くことが本書執筆の主題であった分、島を訪れた客側の体験談についてあまり触れられなかったことだ。

 僕が渡鹿野島を初めて訪れたのは2009年のこと。名古屋から近鉄志摩線に乗り鵜方駅で下車。ここから海に向かい15分ほど車を走らせると渡鹿野渡船場が見えてくる。ポンポン船に乗り継ぎ(小型客船)、ものの3分もすれば「売春島」に到着する。

 そこで見たものは、スナックを隠れ蓑にした売春斡旋所である置屋だけでなく、ホテル、旅館、客引き、飲食店でもオンナを紹介・斡旋する現実だったが、一方で残された置屋が3軒、娼婦が20人しかいない“桃源郷”と呼ぶには程遠い寂れた実態だった。

まるで小さな新宿・歌舞伎町だった

「バブル期はプレイルームが足りず、自由恋愛を装うため女のコの部屋で売春するという建前を無視して、もうホテルの客室や置屋の奥でもやったりしてたわ。だから盆暮れや週末など繁忙期のメイン通りは、肩をぶつけずには歩けんほど人が溢れていた」

 渡鹿野島の置屋でチーママをしていた女性は、かつての繁盛ぶりをこう証言する。島の黎明期から現在までを知る置屋のママも、次のように語る。

「一番盛り上がっていたのは81年頃かな。“肩と肩がぶつかるほどの客で溢れかえっていた”というのも本当。当時はまだ、メイン通りにヌードスタジオ(小規模のストリップ劇場)が2軒あった。置屋も13軒あった。宴会が夜9時頃に終わると団体客が酔った勢いそのまま、一斉に外に繰り出してた」

 彼女らの証言などによって、売春島の最盛期は70年代半ばから90年までだと考えられる。

 人口わずか200人、周囲約7キロの小さな離島に、ホテルや置屋だけでなく、居酒屋、喫茶店、カラオケ、パチンコ、ヌードスタジオ、ゲーム喫茶、裏カジノまであった。まるで小さな新宿・歌舞伎町だったのだ。

船着場で客引きのオバさんが手ぐすねを引いていた

 そんなバブル崩壊前の売春島に思いを馳せ、当時を体験した男たちを追った。娼婦には、ヤクザやブローカーにより島流しにされた壮絶な舞台裏があったように、客側にも当時について思うことがあるだろう。

 大阪在住の前田さん(71歳、仮名)は1989年の夏、売春島に渡った。関西のソープや新地を遊び倒す好事家だったが、この島のことは耳に入っていなかったという。当時は、まだ知る人ぞ知る存在だったのだ。

 きっかけは訪問の数年前に目にした週刊誌のモノクロのグラビアページだった。小さなスペースに、「女護ヶ島(にょごがしま)」とのタイトルで、渡鹿野島が写真とともに紹介されていた。そこから得た情報は、その所在地と「売春で成り立っている島」という情報だけ。好奇心と恐怖心が交錯したという。

「さすがに怖いから、友達を誘って2人で行きました。対岸の船着場では、客引きのオバさんが数名、手ぐすねを引いて待っていましたね」

 島に降り立ち感じたのは、荒廃したホテルや旅館やアパートが醸し出す“ヤバさ”ではなく、バブル期の熱海のような煌びやかなネオンと欲望むき出しの男たちが発する熱気が相まった“桃源郷”と呼ぶに相応しい華やかさだ。

コンパニオンに扮した娼婦が宴会に入るのが定番

「『お兄さん、遊びは?』と声をかけられたけど、いきなりでは怖くて、『旅館をとってるから』と断り、予約していた宿へ行きました。泊まったのは、たしか島で一番デカい、ホテルAだったと思う。

 部屋には、ピンクコンパニオン(60分1万2000円)の案内チラシがあった。仲居さんにプレイ内容を尋ねても『楽しいことができるよ』と言うだけで、その中身については教えてくれない。まごついていると、『遊びは外でも(置屋でも)できるよ』と教えてくれましたね」(前田さん)

 コンパニオンに扮した娼婦が宴会に入り、本人を見てセックスの相手を選ばせるのが、この島の定番コースだった。たいていは娼婦で宴会客との頭数を合わせるが、時には女のコが足りず、島外の派遣会社から売春目的ではない一般のコンパニオンを借りることもあったという。

 そのため、派遣会社に所属するコンパニオンには、この島の宴会は極めて評判が悪かった。その当時にコンパニオンをしていた女性は話す。

「もう『渡鹿野』って言われただけでハズレ。客は買春目的だから、『延長』してくれないじゃないですか」

 他の観光地なら、コンパニオンは『延長料金』や『チップ』で数万円の実入りになることもある。一方、渡鹿野島の宴会はきっちり2時間で終わる。給与は5千円で、チップもナシ。置屋でのプレイ代を残さねばと、客の財布の紐が堅いからだ。

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