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政治にも侵食するセレブ文化 2021年、アメリカはどこへ向かうのか - 辰巳JUNK

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2020年アメリカのポピュラーカルチャーにおいて、最初の大事件は韓国映画『パラサイト 半地下の家族』のアカデミー賞受賞だった。韓国社会の経済格差を描くこの映画の快挙は、不穏にも一年の道筋を示していたのかもしれない。

新型コロナウイルス危機、ブラック・ライブズ・マター、そして大統領選挙レース……これらの共通項こそ、パラサイトのように社会に根づく格差だったのだから。

大衆文化を象徴するスターたちの言動から、アメリカ激動の一年を振り返りたい。

バッシングに見舞われたハリウッドスターたちの善意の『Imagine』

『ワンダーウーマン』シリーズで名を馳せたガル・ガドットの呼びかけでコロナ禍のアメリカに一騒動が=Getty Images

「私たちはみんな一緒!」。

映画『ワンダーウーマン』シリーズでハリウッドのトップスターとなったイスラエル出身のガル・ガドットが宣言したように、ある面では、2020年春の日米をふくむ世界各国の状況は似通っていたのかもしれない。

多くの国で新型コロナウイルス危機が本格化したことでWHO(世界保健機関)がパンデミック宣言を行い、アメリカの大都市でシャットダウンが始まった時分である。

そこで、ガルはInstagramで呼びかけた。「みんな一緒だと想像して、歌って」。

これを受け、ナタリー・ポートマンら総勢24名のトップスターたちがジョン・レノンの『Imagine』を歌いつなぐ豪華スター動画をシェアしたのである。

これが、春のポップカルチャーの一騒動となった。ハリウッドスターたちの善意の『Imagine』は、バッシングに見舞われたのである。あがった声の多くは「豪邸に住んでいるスターから“みんな一緒”なんて言われたくない」、そして「そんなことをやるなら寄附をしろ」というものだった。

セレブリティが経済格差の頂点に立っているという現実

AP

新型コロナウイルス危機は、衛生や医療、労働環境など、アメリカ社会の深刻な格差をあぶりだした。

5月、ニューヨーク市は相対的に低所得者が多く住む地域での感染者や死者が多くなっている状況を報告。エッセンシャルワーカー救援基金を立ち上げ、地元ヒューストンで物品支援を行った歌手ビヨンセが「このウイルスはブラックコミュニティに大惨事を巻き起こしている」と述べたように、人種間格差も浮き彫りになっていった。

ビヨンセの言葉が現実に=Getty Images

アメリカ疾病予防管理センターがまとめた11月30日時点のデータによると、非ヒスパニックの黒人およびアフリカ系アメリカ人、ヒスパニックおよびラテン系の死亡率は非ヒスパニックの白人の2.8倍に及んでいる。

こうした状況のもと、数十億円ものギャランティを貰っているハリウッドスターが「想像してみて/なにも所有していないと」とほがらかに歌う『Imagine』の合唱は、善意に基づいていたとはいえ、経済的に困窮し不安に包まれる人々の怒りを買ったのだ。

パンデミックは、人気セレブリティたちが経済格差の頂点に立っている事実をも鮮明にしたと言える。

米国史上最大規模の運動に発展したBLM運動

Getty Images

5月に入ると、建国前よりつづく格差と言える人種差別問題が噴きあがった。

黒人男性ジョージ・フロイド氏が「息ができない」と懇願していたにもかかわらず白人警官に8分間押さえつけられて死亡した事件を受けて、警察の暴力行為を筆頭とした人種差別に抗議するブラック・ライブズ・マター運動(以下「BLM」)が全国に広まっていったのだ。

セレブリティの賛同者やプロテスター(抗議者)も多く出た。リル・ベイビー『The Bigger Picture』やダ・ベイビー『ROCKSTAR BLM Remix』など、フロイド氏が受けたような警官の暴力は珍しくないと明かす若手黒人ラッパーたちのプロテストソングもヒットを記録。2020年のBLMは、裕福な白人層をも取り込み、米国史上最大級の運動と目される規模に発展していった。

Amazonなど大手の賛同企業に批判 「投稿するだけじゃなんの意味もない」

ラップに大企業へのメッセージをのせたジョーイ・バッドアス=Getty Images

これを受けてか、大企業間でも賛同を示すムーブメントが起こった。しかしながら、そうした企業群がプロテスターたちから諸手を挙げて迎え入れられたとは言い難い。

ラッパーのジョーイ・バッドアスに至っては「ただ(賛同を)投稿するだけじゃなんの意味もない」と言い切り「本当に変化を起こしたいなら労働環境を変えろ」と進言した。

こうした批判に晒された有名企業の筆頭にAmazonがある。2015年ピュージェットサウンドビジネスジャーナル調査によれば、同社の米国の黒人従業員の85%は単純労働に従事しており、同社幹部格110人のうち黒人幹部は1人に留まっている。

リル・ベイビーも決意を歌った=Getty Images

パンデミックにおいても注目されていた雇用と労働、経済の問題。そして、そこに潜む人種間格差は、当然、短期間で解決できる問題ではないだろう。それでも行動するプロテスターとして、前出リル・ベイビーは「The Bigger Picture」で決意をラップする。

一夜で状況は変わらない/でもどこかで始めなきゃいけない/それなら今ここで始めよう

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