2020年7月1日から、全国一律にレジ袋の有料化を始めました。コンビニでは7割超のお客さんが、レジ袋を断わるようになったそうです。予想していた以上の変化を感じています。
なお、世界ではすでに60カ国以上が、レジ袋に対して規制を行っています。
有料化に否定的な見方があることも受け止めています。国内で発生する年間900万トンのプラスチックごみのうち、レジ袋が占める割合は2、3%にすぎません。
削減できるのは微々たる量ですが、国民のみなさんに、プラスチックごみ問題に限らず、化石燃料に依存する経済社会は持続可能ではないことを伝えたい。そして、持続可能な新たな経済社会へとリデザイン(再設計)する必要性について考えるきっかけにして欲しいのです。
©文藝春秋
環境省では、環境への負荷が小さい「バイオプラスチック」の生産体制を強化するため、設備を新設する企業を支援すべく、2021年度予算の要求を行いました。バイオプラとは、「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」の総称です。まだ国内での供給量は少なく、輸入に頼っている状況ですが、需要の拡大が見込める分野でもあり、マーケットを世界でいち早く掴む必要もあります。
プラごみが引き起こす“海洋汚染”
そもそも、プラスチックごみが世界的な問題になっている理由は、海洋汚染が深刻だからです。海や浜辺に流れ出たレジ袋やペットボトルは、生態系に悪影響を及ぼし、漁業や観光業に打撃を与えます。2050年までに、海洋プラスチックごみの重量が、海にいるすべての魚の重量を超えるという予測まであります。
2019年のG20大阪サミットで、首脳宣言の中に「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」が盛り込まれました。「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す」という高い目標です。
日本が主導して世界共通のビジョンをまとめ上げた意義は、非常に大きい。そのあと私は、マドリードで開催されたCOP25(国連気候変動枠組条約第25回締約国会議)に出席し、G20の枠組みにとどまらず、もっと多くの国々に賛同してもらいたいと呼びかけました。その結果、世界のほぼ半数に当たる86の国と地域に、このビジョンが共有されるに至っています。
海は繋がっていますから、国際社会との連携は不可欠です。海洋プラスチックごみの最大の流出国と言われているのは中国、2番目がインドネシアです。
アジアからのプラごみは、日本の沿岸へ流れ着きます。そのため、中国、韓国とは「日中韓3カ国環境大臣会合(TEMM)」という枠組みでも、この対策を議題に含めてきました。他のアジアの国々とも、一緒に取り組んでいく必要があります。
プラスチックの原料は石油ですから、プラごみについて考えることは化石燃料に依存する社会のあり方を見直すことにも繋がります。日本でエネルギー政策の議論といえば、国民的な関心の高い原発が中心です。しかし世界の気候変動の文脈では、石炭です。石炭火力こそ、CO2を最も排出する電源だからです。
日本では2011年の福島第一原子力発電所の事故以降、石炭、石油、LNG(液化天然ガス)への依存度が上がっています。こうした化石燃料を輸入するため、年間で海外に約20兆円を払っているというデータもあります。