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RIZIN朝倉未来はなぜ「アンチ」も多いのか - 新田日明 (スポーツライター)

日本の格闘技熱は再び盛り上がって来たのか。今年の大みそかにさいたまスーパーアリーナで開催される総合格闘技大会「RIZIN 26」。入場チケットは追加発売となったアウトレット席を除いて完売するなどかなりヒートアップしている。

全16試合のカードが組まれた当日のメインマッチは王者・朝倉海と挑戦者・堀口恭二が対戦するRIZINバンタム級タイトルマッチ(RIZIN MMAルール、5分3ラウンド)。朝倉海が堀口にインパクト十分な1RKO勝利を飾って以来、実に1年4カ月ぶりの再戦となる。セミファイナルではRIZINキックボクシングルールで那須川天心も登場し、皇治と五味隆典によるパンチのみのスタンディングバウトなど異色対決も盛り込まれた一大イベントとして格闘技ファンのみならず一般層からも大きな話題を集めている。

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いろいろな見方があると思うが、第13試合に組まれた朝倉未来と弥益ドミネーター聡志との一戦はやはり要注目だろう。弟のバンタム級王者・海にメインを譲った格好だが、この試合はタイトルマッチ以上に戦前から多くの人たちの興味を引いている。11月21日の「RIZIN 25」(大阪城ホール)で朝倉は修斗出身・斎藤裕とのRIZINフェザー級王座決定戦に判定で敗れており、ドミネーターとの一戦は「絶対に負けられない戦い」となる。

ただ、朝倉のアンダードッグとして扱われがちなドミネーターも侮れない相手だ。筑波大学院卒で大手食品メーカーに勤務する傍ら総合格闘技団体「DEEP」に参戦し、第9代フェザー級王者に輝いた経歴も持つ実力者。こうした異色の経歴も加味すれば朝倉のさらに上を行く戦略家と見ることもできる上、容易ならざる難敵となりそうな予感も漂う。決して「安パイ」ではなく朝倉がKO負け、あるいはタップアウトで2連敗する悪夢の結果も荒唐無稽とは言い切れない。

しかしながらRIZINの主催者側としては、口にこそできないものの朝倉未来の「番狂わせ」は望んでいないだろう。朝倉は今やドル箱選手。少年院の収容歴がありながら前田日明氏主催の総合格闘技大会「THE OUTSIDER」で頭角を現し、今の地位を築き上げたシンデレラストーリーは現代の若者たちの心をとらえている。多くのフォロワーがいる朝倉の大会参戦、そして勝利はRIZINの大会存続の今後を占う上でも必要不可欠な要素となりつつあるのかもしれない。

それが証拠に2021年の朝倉に予想されるストーリーラインとして斎藤とのリターンマッチ、さらに同年2月28日にRIZINも全面協力で行われる格闘技イベント「MEGA2021」(東京ドーム)でフロイド・メイウェザー・ジュニアとの〝ドリームマッチ〟の実現もウワサされている。

最先端のニューノーマル

だが朝倉には「アンチ」が多いことも、また事実だ。特にネットユーザーや一部のコアな格闘技ファンは朝倉の言動を歓迎していないように見受けられる。その大きな要因はYouTuberとして大成功を収めているところが多分に関係していると言えるだろう。自身の公式YouTube「朝倉未来 Mikuru Asakura」のチャンネル登録者数は163万人、総再生回数も5億3000万回を突破し、猛烈に稼ぎまくっている。

「アンチ」の人たちからすれば、朝倉に〝副業〟で成功者になっていることへの妬みと「格闘技を片手間でやっているんじゃないか」「YouTuberでインフルエンサーを気取っている」などという思いが根底にあるようだ。朝倉が斎藤に敗れた直後、ネット上でも「アンチ」と思われる人たちが、まるで鬼の首を取ったようにほぼ同じ内容のコメントを書き込んでいたことからも、それは明らかだろう。

だが「アンチ」が多かろうが、朝倉のやり方は何も間違っていない。むしろ、これこそが現代において最先端のニューノーマルとなり得る手法と考えられる。プロの世界は強さに加え、ショーマンシップ的な要素も必要不可欠だ。客を集められなければ、いくら強くても興行は成り立たない。だからこそ朝倉は試合前、相手にトラッシュトークを仕掛けたり、ビッグマウスも連発したりする。この発言によって前出の「アンチ」の人たちに「ふざけたことを言いやがって」と思わせたり、ファン以外の一般層にも「何か危険なムードを漂わせる選手だな」と興味を引いてもらえたりすれば、その時点でもう朝倉はプロ選手として「成功」だ。

朝倉の事実上の恩師でもある総合格闘技の第一人者・前田日明氏に言わせれば「試合前に『はい、頑張ります』としか言えないような選手はプロじゃない」。これは、まさしくその通りだと思う。YouTuberとしてフォロワーを増やしながらMMA(総合格闘技)の〝市民権獲得〟にも間接的に尽力し、試合前の挑発や過激な言動でも注目を集める「朝倉式PR」は時代に見合った手法であり、RIZINが〝朝倉頼み〟にならざるを得ない流れの根幹ともなっている。

残念ながらRIZINが米国を拠点とする世界最大の総合格闘技大会「UFC」のようにスポーツライクなスタンスを徹底させ、本格的なルール整備によって競技化を図っても今の日本の土壌では受け入れられそうもなく、興行としてはおそらく成り立たない。コアな格闘技ファンの中には前出の朝倉の突飛な言動や異端児まがいの姿勢だけでなく、次の「RIZIN 26」にYouTuber兼プロレスラー、総合格闘家の〝ユーティリティー〟シバターの参戦が急遽決定した件などRIZINのサプライズ的演出に対して強いアレルギーを覚えている人もきっと多いだろう。

〝今後の逆襲〟

とはいえRIZINは放映権を持つ民放局「フジテレビ」を納得させられるコンテンツにならなければ、かつてのPRIDEのようにいとも簡単に見切りをつけられて大会は存続できなくなり、あっさりと崩壊する。理想論ばかり、繰り返していてもプロスポーツの興行は成り立たない。嫌なら四の五の言わず、もう見なければいいのだ。

無論、そんなRIZINも日本のプロ総合格闘技のフラッグシップ。プロの世界なのだから結果を出さなければ説得力を失う。次のドミネーター戦で朝倉は「アンチ」に地団駄を踏ませるぐらい、憎たらしいまでの圧勝劇が理想だ。

常に「人に見られる」ことも強く意識しながら戦うプロフェッショナル総合格闘家・朝倉未来の〝今後の逆襲〟に筆者は誰が何と言おうとも注目したい。

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