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私を「奥さん」と呼ばないで──呼称ハラスメント再考

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「奥さん」と呼びかけるのは正解?

 作家の甘糟りり子氏が、「ハラスメント社会」について考察するシリーズ。今回は、「奥さん」、「お母さん」、「おばさん」…といった呼びかけや「嫁」呼称問題について語る。

 * * *

 古い日本家屋で暮らしているので、修繕を含めた業者さんをよくお願いする。先日は、役所から派遣された三人のシニアがうちにやって来た。初めてお会いする方々だ。もちろん対応するのは私で、名前を名乗って挨拶をしたのだが、いきなりこういわれた。

「じゃあ奥さん、現場に案内してくれるかな?」

「もちろんです。でも、あのう、私、奥さんではないんですが」

「あ、そ」

 現場を見て、どうやって対処するかを話し合う。

「そいでね、奥さん。ここはまずやってみてからでないと」

 その人の言葉が終わり、私が話す番になった時、私はもう一度やんわりとこの家の奥さんではないと伝え、「甘糟です」といってから発言をした。それでも、三人はずーっと私のことを「奥さん」と呼び続けた。

 七十を超えているであろうシニアの方々に、それは立派なハラスメントだと指摘したところで事態が変わりそうでもないし、お互い多少の気まずさが残るだろう。仕方がないとあきらめた。けれど、私には結婚歴はないし、奥さんと呼ばれる筋合いはない。

 こうやってあきらめてしまうから、家にいる女の人は「奥さん」か「お母さん」で一括りにされてきたのだ。などと書くと、めんどうくさいと思う人がいるかもしれない。シニアの方たちと話している最中、よく見知った配達の方が別件でうちに来て、私が奥さんと呼ばれている場面に居合わせ、一瞬クスッとなってしまい、ハッとしてからすまなさそうに頭を下げていった。彼は何にも悪くないのに。あー、めんどくさ。そういいたいのはこっちのほうだ。

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