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なぜJ-POPは韓国に完敗した? 「10年代の音楽業界」が依存したAKB商法という“ドーピング” AKB48はなぜ凋落したのか #2 - 松谷 創一郎

紅白落選も必然だった…AKB48が急速に「オワコン化」してしまった4つの理由 から続く

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 11年連続出場していたAKB48の『NHK紅白歌合戦』落選。それが、この5年ほどに生じた4つの要因の結果であることは前編「紅白落選も必然だった…AKB48が急速に『オワコン化』してしまった4つの理由」で解説した。

 広く使われるようになったビルボードチャートは握手券など特典付きCD販売による“人気錬金術”=“AKB商法”を機能不全とし、指原莉乃などの主要メンバーは卒業・離脱、ファンがメンバーを襲うNGT48の不祥事が生じ、そして新型コロナの直撃によって“AKB商法”が吹っ飛んだ──それがAKB48凋落のプロセスだ。

 この後編では、そんなAKB48と日本の音楽業界の未来について考えていく。(全2回の2回目/前編を読む)


AKB48(2012年撮影) ©時事通信社

秋元康は何をハッキングしたのか?

 AKB48の前途は多難だ。

 オンライン握手会などをやっているグループもあるが、それがどれほど実際の握手会の代替となるかは見えない。たとえファンがそれで納得してCDを大量購入し続けたとしても、ビルボードチャートではそれが人気の証とはならない。“人気錬金術”はもはや機能せず、そのタネも明かされた。

 結局、秋元康がAKB48でやったのは、古いメディア(CD)から新しいメディア(インターネット)に切り替わりゆく過渡期に、機能不全となりゆく人気指標(オリコン)をハッキングし、その“人気錬金術”(AKB商法)でギョーカイ(音楽、テレビ、芸能界)を占拠したことだった。

 AKB48は劇場を基盤にインターネットを積極的に活用していたように見えたが、結局のところは従来のメディアが弱体化していく混乱期にその隙を突いたにすぎない。CDや地上波テレビなどのレガシーメディアが、完全にインターネットに相対化された現在においては、同じ手法は機能しない。

K-POPが人気を拡大しはじめた

 一方、こうした2010年代後半以降に人気を拡大させ続けてきたのがK-POPだ。ガールズグループでは、2017年からのTWICEとBLACKPINK、2019年からは秋元康も携わっているIZ*ONE、そして日本で生み出されて今年大ヒットしたNiziUがそうだ。

 なかでもNiziUは、メンバーのほとんどを日本出身者とし、オーディション番組でメンバー個々に親しみをもたせて、日本のマーケットに強く訴求した。加えて、日本のアイドルではほとんど見られない高いパフォーマンス能力を備え、楽曲もグローバル・スタンダードに近いダンスポップを日本で受け入れられる程度のハードルに設定して送り出してきた。

 AKB48がメンバーのパーソナリティに基盤を置いてファンに訴求しているのに対し、NiziUは両方の要素を兼ね備えているハイブリッドだ。人気が出るのは当然だ。

 K-POPがやってきたことはシンプルだ。インターネットにアジャストするのはもちろんのこと、もっとも重点を置いているのは、ちゃんと音楽を創り、しっかりとしたパフォーマンスができるメンバーを揃えることだ。BTSも含めK-POPが続けてきたのは、このシンプルかつ基本的な姿勢──“音楽をちゃんとやるアイドル”だ。

 AKB48やジャニーズなど、日本のアイドルは音楽やパフォーマンスを長らくおろそかにしてきた。オーディション番組『PRODUCE 48』のファイナリストでもあった高橋朱里(当時AKB48)は、筆者のインタビューに対して「『自分はAKB48でこれをやってきたから、これができる』ということは何もなかった」と話した(「『PRODUCE 48』最終回でデビューを逃した高橋朱里がいま思うこと」2019年1月21日『現代ビジネス』)。当事者が認めるほどに、その差は大きい。

日本の「アイドル戦国時代」は終わった

 松田聖子や中森明菜などが人気だった1980年代中期までは、アイドルにも十分な歌唱力が求められ、それによって人気も決まっていた。しかし80年代中期以降、右肩上がりに成長するドメスティックなマーケットに安住した結果、アイドルには音楽やパフォーマンスの質がさほど求められないようになっていく。しかも、その端緒となったのは秋元康が手掛けたおニャン子クラブだ。

 以降、長らくアイドルに必要とされたのは、メンバーたちのひととなりや、バラエティ番組でのトークの能力だった。1989年に『ザ・ベストテン』が終了した後、地上波のプライムタイムでは『ミュージックステーション』(テレビ朝日)や『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』(フジテレビ)のように、芸人がMCをし、トークにも重点が置かれた番組しか続かなかったのもそのためだ。

 しかし、平成とほぼ一致するその文脈がそろそろ終わろうとしている。K-POPという黒船が怒涛のように押し寄せているからだ。すでにTWICEやBLACKPINKの人気は、同じく女性ファンをターゲットとしていたフェアリーズとE-girlsを終焉に追い込んだ。さらにNiziUは、ドメスティックな空間で競い合っていた日本のアイドルシーンを一瞬で変貌させた。内戦状態だった日本の「アイドル戦国時代」は、韓国から来た黒船の大砲一発で吹き飛んでしまった。

 こうしてローカルな平成は終わり、グローバルな2020年代が幕を開けた──。

日韓で別々にプロデュースされているIZ*ONE

 K-POPの日本進出は、その存在自体がAKB48などにとっては新たな未来の示唆となる。答はすでに明示されている。グローバルマーケットに適応できる音楽をちゃんと創り、メンバーたちはしっかりとしたパフォーマンスをすること──これだけだ。ソリューションはもう見えている。

 もちろん、そのハードルはきわめて高い。K-POPが20年かけて培ってきたことを一朝一夕にはクリアできないだろう。しかし、現在の打開策はそれしかない。

 韓国と日本のアイドルの音楽における人気を考える際、非常にわかりやすい指標となるグループがある。同じメンバーで同一グループでありながらも、日韓でべつべつのプロデュースをされているIZ*ONEだ。2019年の日本デビュー以降、日本でのプロデュースを手掛けているのは秋元康だ。

 その目安となるのは、YouTubeにおけるIZ*ONEのミュージックビデオの再生回数だ。それは以下のようになる。

 発表時期が異なるので新しい曲ほど再生回数は少なくなるはずだが、表を見てわかるとおり韓国語曲が日本語曲を圧倒している。今月発表されたばかりの韓国語曲「Panorama」は、2年近く前に発表された日本語デビュー曲「好きと言わせたい」をすでに追い抜いた。

K-POPとの圧倒的な差を埋められるか?

 この再生回数に、繰り返し聴きたい(観たい)と思わせる楽曲(MV)の力が反映しているとシンプルに捉えれば、その差は歴然としている。

 日韓のこの違いは、IZ*ONEのメンバーにも顕れている。HKT48の活動を中断し、2年半の限定で韓国に渡った宮脇咲良は、7月に自身のラジオ番組で「腹筋ができた」と話した(bayfm『今夜、咲良の木の下で』2020年7月8日)。それまで7年間もHKT48で活動していたにもかかわらず、2年弱の韓国の活動で身体に変化が生じたのである。もちろんそれはダンスの質や日頃のトレーニングの結果だ。

 AKB48がNiziUやK-POPと音楽的に伍してやっていくには、楽曲の制作に加え、メンバーたちのトレーニングまでしっかりする体制を整えなければならない。こうしたことができるかどうかの勝負となる。それができないのであれば、これまでどおりパーソナリティを軸とし、ローカルアイドルとして小さく細く続けるしかない。もちろんそれでAKB48のような大所帯を今後も維持できるかは、わからないが。

“AKB商法”はドーピングでしかなかった

 K-POPの勢いは、AKB48だけでなく、他の日本の音楽系プロダクションにもダメージを与えつつある。

 LDHはE-girlsを解散し、90年代にSPEEDを生んだライジングのフェアリーズは活動停止となったことはすでに触れた。エイベックスは、3年前に竣工したばかりの自社ビルを売却し、多くの社員のリストラをする予定だ。嵐の活動休止を控え、他グループからも離脱が相次ぐジャニーズは、ネット対応したSixTONESとSnow Manが好調な滑り出しをしたことで、盛り返す兆しがやっと見えたあたりだ。

 握手会が当面できず、CDがいま以上に売れることがないなかで、音楽系プロダクションやレコード会社は業態の根本的な転換を求められている。しかし、AKB商法の反動はおそらくとても大きい。ビジネスモデルをなかなか転換できなかった音楽業界は、いまだに売上の7割ほどをCD・DVD販売(フィジカル)に依存している。音楽売上の半分以上をフィジカルが占めるのは、4年前からもはや日本だけだ。

 いつかは終わりを迎えるにもかかわらずCD販売に依存してきた日本の音楽業界にとって、握手券をつけてCDを延命させた“AKB商法”は結局のところドーピングでしかなかった。

 20年代の日本の音楽業界とは、10年代にキメ続けたドーピングの副作用と闘う時代だ。ソニーミュージックは坂道グループを手がけながらも、K-POP大手のJYPエンタとも手を組んでNiziUを大成功させつつある。吉本興業は、韓国大手の制作会社CJ ENM傘下のMnetと組んでJO1を成功させている。K-POPに助けてもらうレコード会社や制作会社こそが、20年代に生き残れるのかもしれない。

(松谷 創一郎)

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