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人口構造の変化が医療・介護提供体制に及ぼす影響 -その2(全2回)- - 川越雅弘

■はじめに

 前稿では、人口構造の今後の変化の特徴として、①生産年齢人口(15-64歳)が2011-2025年間に約1千万人減少する(特に、地方において)、②後期高齢者のうち、85歳以上人口の増加が今後顕著となる(特に、都市部において)などを整理した。今回は、年齢階級別にみた医療・介護需要を整理するとともに、今後の人口構造の変化が医療・介護サービス提供体制に及ぼす影響について考察する。

■年齢階級別にみた医療需要 (表1)

1. 医科外来患者数及び外来受療率

 調査日の医科外来患者総数は5,556千人で、これを年齢階級別にみると、「40-64歳」が1,542千人(27.8%)と最も多く、次いで「65-74歳」1,223千人(22.0%)、「75-84歳」1,094千人(19.7%)の順、外来受療率(=年齢階級別人口に占める年齢階級別外来患者数の割合)をみると、「75-84歳」が11.2%と最も高く、次いで「85歳以上」9.2%、「65-74歳」8.2%の順となっている。

2. 医科入院患者数及び入院受療率

 調査日の医科入院患者総数は1,392千人で、これを年齢階級別にみると、「75-84歳」が371千人(26.6%)と最も多く、次いで「40-64歳」326千人(23.4%)、「85歳以上」282千人(20.2%)の順、入院受療率をみると、「85歳以上」が8.1%と最も高く、次いで「75-84歳」3.8%、「65-74歳」1.9%の順となっている。

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■年齢階級別にみた介護需要

 2012年4月の介護サービス受給者総数は4,401千人で、これを年齢階級別にみると、「85歳以上」が2,097千人(47.6%)と最も多く、次いで「80-84歳」1,029千人(23.4%)、「75-79歳」638千人(14.5%)の順、介護サービス受給率(=年齢階級別人口に占める年齢階級別介護サービス受給者数の割合)をみると、「85歳以上」が49.5%と最も高く、次いで「80-84歳」22.6%、「75-79歳」10.3%の順となっている。

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■高齢者の人口変化の特徴 ―長期推計―

 2060年までの高齢者の人口の変化をみると、65-74歳は2015年頃、75-84歳は2025年頃をピークに減少局面へ入るが、85歳以上は2040年まで増加を続けた後やや減少するものの、2050年から再び増加に転じ、2060年にはこれら3区分の人口がほぼ同じになると見込まれている。

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■二次医療圏別にみた人口構造の変化の特徴 (福岡県の13二次医療圏の例)

 図2に、福岡県の各二次医療圏の、2010-2025年間の20-64歳人口の減少率と75歳以上人口の増加率の関係を示す。75歳以上人口が7割以上増加する「福岡・糸島」「筑紫」「粕屋」医療圏、75歳以上人口の増加率は低いが、勤労人口の減少率が高い「有明」「田川」「直方・鞍手」など、二次医療圏によって今後の人口構造が大きく異なる。

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■人口構造の変化が医療・介護サービス提供体制に与える影響とは

1.85歳以上人口の増加が医療・介護サービス提供体制に及ぼす影響とは

 85歳以上の外来受療率は75-84歳よりも低いが、これは、入院や入所リスクが高い、通院困難者が増加するためと考えられる。したがって、入院や入所を必要とする者、在宅医療を必要とする者は今後急増すると予想される(実際、入院受療率は、75歳を超えると急激に高まっている)。また、死亡者数の増加も見込まれている。

 これら医療・介護需要の変化に対応するためには、病床数や介護保険施設数を増やすといった選択肢も考えられるが、財政や高齢者の保険料負担を鑑みればこの施策は採りにくい。そのため、社会保障と税の一体改革では、病床数は現状維持レベルとし、平均在院日数を短縮することで入院需要に対応する方向が示されている。また、施設入所をできるだけ防ぐための24時間ケア提供体制の構築、高齢者の集住化の推進も展開されている。

 ただし、これら施策がどこまで機能するかは見えていない。今後の医療・介護需要にどのように応えていくのかの観点から、在宅医療・ケアの限界点の検証とその上での入所施設や療養病床の必要整の再検討(両者のバランスの再検討)が必要と考える。

2.医療計画/介護保険事業計画の重要性

 現在進められている国の施策は、「都市部における後期高齢者の急増対策」が中心である。この施策は大都市部や県庁所在地周辺地区への対策とは合致するが、それ以外の地方の実態にはそぐわない面が多い。

 二次医療圏毎の医療・介護需要にこたえるためには、人口構造や世帯動向を踏まえた上で、必要な医療・介護サービス提供体制のあり方を検討する「地域医療計画」や「介護保険事業計画」が重要となる。二次医療圏毎の各種データを整備し、地域が抱える課題を抽出し、その改善に向けた具体策を、これら計画の中で反映させて行くような取り組み・体制の構築が求められる。
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川越雅弘(国立社会保障・人口問題研究所)

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