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NYの救急救命士「私が生活費のためにヌード写真を公開した理由」

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ニューヨーク市でパンデミックと闘う23歳の救急救命士、ローレン・クウェイさん(Courtesy of Lauren Kwei)

12月12日、米ニューヨーク・タイムズ紙はニューヨーク市でCOVID-19のパンデミックと闘う23歳の救急救命士、ローレン・クウェイさんの記事を掲載した。

救命士の給料だけでは食べていくことができないので、日々の生計を立てるためにクウェイさんはセックスワーカーの間で人気のサブスクリプション型プラットフォーム「OnlyFans」にアカウントを立ち上げて、家計の足しにした。ニューヨーク・ポスト紙のディーン・バルサミニ記者とスーザン・エデルマン記者が書いた記事は、救命士としてフルタイムで働きながら裸の写真をSNSにアップするとはプロ精神に欠けるのではないか、という主旨だった。この記事のせいで自分の評判に傷がつき、解雇されるのではないかとクウェイさんは考えた。「穴があったら入りたい気分でした」と彼女はローリングストーン誌に語った。

だが実際はそうはならなかった。人気Podcastのファン専用Facebookページが彼女の弁護に回ると、ソーシャルメディア上では大勢がクウェイさんを支援し、ただ生活費を稼ごうとしている人を槍玉にあげたポスト紙を厳しく非難した(現在、彼女は勤め先のSeniorCareと面談を終え、仕事を続けられることになったそうだ)。アレクサンドリア・オカジオ=コルテス下院議員までもがTwitterでクウェイさんを支持し、その後直接電話までかけて団結の意を表明した。単にクウェイさんを辱めるために書かれたポスト紙の記事は期せずして、セックスワークと労働問題に関する現在進行形の議論の的となった。

「(2人の記者は)私の面目をつぶすためにあの記事を書きました」。5年前、18歳の時にウェストバージニア州からニューヨークに引っ越してきたクウェイさんはこう語る。「でも代わりに、ニューヨーク市の救急医療サービスのスタッフの給料が不十分で、大半の人が仕事を2つ3つ掛け持ちしたり副業したりして、世界一物価が高い街でなんとか暮らしている姿が明るみになりました。彼らは記事を書いたとき、私が売られた喧嘩を買うとは思っていなかったんでしょうね。私にも言い分があるとは思わなかったんでしょう。自分たちが相手にしているのか誰ないのか、わかっていなかったんです」

渦中のローレン・クウェイにインタビュー

ーまず、救命士になったいきさつを教えてください。

昔からずっとブロードウェイの舞台に立つのが夢でした。ずっとチーターガールズになりたいと思っていました。歌って踊って演技して、というのが夢だったんです。それでニューヨークシティに行って、アメリカン・ミュージカル&ドラマ・アカデミーに2年間通いました。ミュージカル舞台のプログラムを修了して、2017年からオーディションを受け始めたんですが、自分には向いてないと思いました。

求められることが高いわりには、見返りが少ないんです。早朝4時に起きて、見た目も声も自分そっくりの600人の子たちと一緒にオーディションを受けるんですよ。出番はたった20秒。後日連絡します、と言われるけれど、絶対連絡は来ません。そのくせ、オーディションにかかった時間の分のお給料は出ないし、運よく役をもらえたとしてもせいぜい1週間の夕食代ぐらいしかもらえない。

コネがすべて、愛想よくふるまうことがすべてなんです。私はそういうのには向いてないなと実感しました。でも何より大事なのは、自分が社会に十分還元できてないと思ったこと。父も母も医療従事者です。医療関係の家に育ったので、私にとっても自然の流れでした。2017年に救急医療技師の学校に入って、2018年には救急医療技師として実習を始めました。1年間はすごく楽しかったです。でも救命士のほうが給料もいいし、もっとすごい仕事ができるという話をを聞いて、救命士の学校に行くことにしました。

ー2020年2月に卒業して、いきなり救命士の仕事に就きましたね。パンデミック真っ只中のニューヨーク市で救命士としての仕事内容について、意外と知られていないことはどんな点ですか?

そうですね、救急医療の現場ではメンタルヘルスのことはあまり話題に上りませんね。蔑ろにされているわけではなく、なんとなく話題にしないという感じです。今年は3人、少なくとも3人、ニューヨーク市の救急医療スタッフが自殺していて、おそらくパンデミックの影響だと考えられています。1人は救急技師になりたての24歳の人で、消防署に勤務していましたが、働いて2~3カ月後には銃で自殺してしまいました。彼はいわゆる手も足も出ないと感じるところまで行ってしまって、必要な助けが得られず、結局死んでしまった。

私たちも知らないだけで、そういう話はたくさんあります。救命士は常に死や悲しみを目にしていますから。私たちに求められているのは、次の現場に向かって仕事をして、週に30〜40時間働くことだけ。毎日同じことを繰り返し、1日に数人の患者が目の前で亡くなることもあります。とにかく気持ちを切り替えて、仕事を続けることが求められていました。

パンデミック中にキャリアをスタート

ー勤務中に亡くなった最初の患者さんのことを覚えていますか?

私個人が経験した亡くなった患者さんの状況はぱっと思い出せませんが、ご自宅から搬送するときのことが頭に浮かびますね。家族は救急車に同乗することも、病院内に入ることも認められなかったんです。ご家族の皆さんが、顔を合わせられるのはこれが最後になるのだろうか、と互いに見つめあう様子を思い出します。

患者さんに「見舞客には会えません」と伝えたり、患者さんのご家族に「申し訳ないですが、病院までついていくことはできません」と伝える役を引き受けるのは、かなり堪えます。患者さんがその後どうなるか、私にはわからない。病院でどんな治療を受けるのかもわかりません。私が言えることは、私の救急車で、私の担架に横たわり、私がケアをしている間は、最善を尽くして患者さんを落ち着かせ、できる限り手を差し伸べることだけです。

ーそうした経験は、ご自身の精神状態にどんな影響を及ぼしましたか?

実は昔からずっとうつ病に悩まされていて、最近は不安症も抱えています。自分が元気じゃないと患者さんの世話をすることなどできないのは分かっています。だからすごく苦労しました。もともとすごく人に共感しやすい質なので、自分の救急車で人が亡くなるのを見るのは本当につらかった。

でも感染者数はひたすら急増するし、大勢が亡くなって、誰も手の施しようがなかった。当時はルームメイトと一緒に住んでいたんですが、ほとんど顔も知りませんでした。さんざん働いた後、誰もいないアパートに帰ってひたすら泣きました。すごく淋しくて。その日自分が目にしたことは誰にも話せない、という気分でした。自分が無力に感じました。人が死んでいくのを見守るしかできないんだ、と。

パンデミック中にキャリアをスタートできたのは、幸運とも言えるし、呪いとも言えます。でも個人的には、そのおかげで強くなれたと思います。どれだけつらかったか、自分でもよく分かります。孤独感や無力感のせいで、今年に入ってから何度も自殺願望に悩まされました。ふと気づくと、こんなに傷ついたり悲しい思いをしてまで、なぜこの世に生きてなくちゃいけないんだろう?と考えたり。ニューヨーク市は世間から忘れ去られてしまったんじゃないか、政府からも忘れ去られ、自分たちだけ取り残されたような気分でした。

OnlyFansを知ったきっかけ

ー2019年11月にOnlyFansのアカウントを立ち上げましたね。OnlyFansを知ったきっかけは?

たぶん女友達の誰かかしら? とにかくすごく流行ってて、副業として稼ぐにはいい方法だと思いました。最初は偽名とかを使って始めたんですが、ろくにフォロワーがいなかったのでコンテンツを買ってもらうのはとても苦労しました。その時はなんだか隠し事をしてるような気分になりました。もともと隠し事するのは好きじゃないんです。そしたら、もうどうにでもなれという感じになったんです。

影響があるかもしれないという事実も受け止めました。そういう可能性があるのは常にわかっていましたが、まさかここまでとは思ってもみませんでしたね。でも、仕事のほうに影響が出るとは思っていませんでしたし、けっこうなお小遣い稼ぎになっていたんです。本当にお金が必要な時には、助けられたこともあります。

ーヌード写真を投稿することに関して、乗り越えなくてはならないハードルはありましたか? OnlyFansを始める以前は、セックスワークについてどう考えていましたか?

ほぼ全てのことに関して、他人や自分を気ずついけない限り、好きなことをすればいい、というのが私の考えです。他人がとやかくいうことじゃない。同意の上で売春したいという人がいるなら、私も全面的に応援しますよ。最初のうちは、私もすごく神経質だったと思います――つまり正直なところ、お金のために身の安全や自分の体を危険にさらすことになると思うと、やっぱり落ち着来ませんでした。それに私はいつも慎重というか、もしかしたら、ということを気にするタイプでしたから。でもお金が必要だったし、どのみちポルノに走るような男性からお金をいただくには、これが手っ取り早い方法でした。

ー収入の足しにするという点では役に立ちました? 実際どのぐらい稼いでいたんですか?

ものすごく。具体的にいくら稼いでいたかを明かすのは気が引けますが、間違いなく助かった、と言っておきましょう。食費や家賃でお金が必要な時とか、家賃や光熱費などを払って銀行口座にお金が一銭も残ってないときとか。食費が足りなくなっても、ネットでヌード写真を売って稼いだ分で食費が賄えるんです。

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