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【117カ月目の浪江町はいま】卒業生有志の熱意に応えた? 町教委が4校で〝最後の〟校舎見学会開催へ 「もろ手を挙げて喜べない」複雑な想いも

浪江町立五校(大堀小、苅野小、幾世橋小、浪江小、浪江中)の校舎解体延期などを卒業生たちが町に求めている問題で、町教委が浪江小を除く4校で1月と2月に再び校舎見学会を開く事になった。「浪江町の各小中学校の解体を延期し、町民・卒業生にお別れの機会となる閉校式の開催を求める請願書」を町議会が不採択。吉田数博町長も解体延期に否定的な答弁をしていただけに、町側が一定の譲歩をした格好。卒業生たちの熱意が行政を動かしたが、一方で「国に解体延期を要請出来ない町のパフォーマンス」との声も。複雑な想いで「最後の校舎見学会」を迎える。


【浪江小は別途開催予定】

町教委によると、1月23~25日に幾世橋小と苅野小、2月6~8日に大堀小と浪江中の校舎見学会を実施する。23日午後、町のホームページに掲載された。町教委は「学校施設の敷地は、施設解体後に利活用が検討されております。そのため、今回の催しについては、延期等はできかねることをご了承いただきますようお願いいたします」として、本当の意味で「最後の校舎見学会」になると記している。

 吉田町長が議会答弁で「皆様方の想いは分かりますので、その中でどういった妥協点を見出すかという事に尽きます。ただ残念なのは、コロナ禍の終息が見通せない状況の中で、いつまでもこの問題を続けていく事は難しい。だから先ほど申し上げたように苦渋の選択をせざるを得ない。この事もご理解いただきたい」と述べており、今回の年度内に2回に分けて校舎見学会を開く事が、町としての「妥協点」だと思われる。

 今回、校舎見学会から除外された浪江小については「日程が決まり次第お知らせいたします」としている。

 7月23~25日にかけて実施された校舎見学会では5校で延べ2600人が参加したが、今回は冬の寒さが厳しい時期であり、福島県内の新型コロナウイルス陽性者数が夏より圧倒的に増えている状況で、どれだけの卒業生が参加するかは不透明。

 校舎内のトイレは使えず、暖房も無い。ホームページ上では「受付時の検温で体温が37・0度以上ある場合は入校をご遠慮いただく場合がある」、「新型コロナウイルス感染症の状況次第では見学会を中止する場合がある」とも書かれている。

 23日午後に町教委に取材を申し込んだが「担当者が打ち合せで離席している」との返答。「折り返し電話をさせる」との事だったが、同日18時までに電話はかかってこなかった。

浪江町のホームページに掲載された「浪江町立学校閉校に伴う学校施設内の見学のお知らせ」。「延期等はできかねる」と明記されており、これが本当に最後の機会となる

【議会は請願不採択】

 校舎解体を巡っては、浪江小などの卒業生有志が11月26日、町議会に対し「浪江町の各小中学校の解体を延期し、町民・卒業生にお別れの機会となる閉校式の開催を求める請願書」を提出していた。

 賛同する署名は4000筆近くに達したが、請願審査を附託された町議会文教・厚生常任委員会(渡邉泰彦委員長)は今月11日の委員会で「呼びかけ人および署名をいただいた方々の気持ちは理解するが、解体を延期する事による影響等を考慮し、また、既に町では閉校式の開催に向けて調整を進めている事から不採択とする」として不採択(委員5人のうち3人が採択に反対)。18日の本会議でも賛成少数(議員15人のうち賛成4人)で不採択とされた。

 請願採択に反対する議員からは「跡地に防災コミュニティセンター等を建設する計画がある。議会は町の防災計画に反対せず推進してきた。町と一緒に取り組んできたものを反転出来ない」などと、跡地利用策として計画されている防災コミュニティセンター建設への悪影響を反対理由に挙げた。

 また、吉田町長も今月8日の本会議で、馬場績町議の一般質問に対し「解体後の跡地利用計画がございます。今まで学校として利用する傍ら、避難場所としても利用して来ました。現在、どの学校も電気や水道が通っておりません。それに伴ってトイレが使えない。避難所として利用出来ない状況なのです。町に暮らしている方々から『防災コミュニティセンターの設置を急いで欲しい』という声もたくさん出ています。(卒業生の)皆さんの想いは非常に理解しますが、解体を延期するという事は、その後の事業に影響を及ぼすという事で、なかなか難しいのです」と答弁。

 年度内の閉校式開催には前向きな姿勢を示したものの、環境省に校舎解体時期の延期を求める事はしないと述べていた。

卒業生有志の願いは「感染症の問題が落ち着くまでの校舎解体延期と150年の歴史を閉じるにふさわしいお別れ会の開催」だったが、町も議会も拒否。厳寒の中での「最後の校舎見学会」が開かれる事になった

【「感染症への不安は残る」】

 校舎見学会が再び実施される事が決まり、署名呼びかけ人の1人は取材に対し、「防災コミュニティ建設を控えていて解体工事を延期出来ないという事情があり、新型コロナウイルスの感染拡大が終息しない中での校舎見学会になってしまったのは正直なところ不安もあります。しかし、私たちの署名活動を受けて、町がこの時期に最後の校舎見学会を開く事を決断してくれたので、少しでも心に残る機会にしたいです」とのコメントを寄せた。

 もちろん、卒業生有志の希望は感染症の問題が落ち着きまで解体工事を延期し、150年という長い歴史を持つ学校を閉じるにふさわしい閉校式の開催だ。前回は暑い最中の校舎見学会だったが、今回は厳寒の時期。わずか1カ月で感染症の問題が解決しているとは考えにくい。その意味ではもろ手を挙げては喜べない。一方、議会答弁でも頑なな姿勢を見せていた町側が一定の譲歩をした以上は歩み寄りも必要との見方もあり、想いは複雑だ。

 請願に賛成した町議の一人は「校舎見学会を開く事そのものは否定しない」と前置きした上で、次のように厳しい見方を示した。

 「議会に請願が出され、4000近い署名が集まった事で、町が『仕方ないからやるか』という事になったのだろう。やらないよりは良いが、やれば良いというものでも無い。『時期は早いかもしれないが、あなたたちの求めに応じて校舎見学会を開きましたよ』というパフォーマンスにすぎない。町は環境省に解体延期を要請する事は出来ないという姿勢だから、ここで校舎見学会をやれば解体工事には影響せず、卒業生にも示しがつく。そういう事なんだろう」

(了)

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