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【M-1グランプリ2020】強烈ナンセンス?マヂラブ“つり革触らない”優勝ネタ

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BLOGOS編集部

今年のM-1が終わった。その心中は煩悶としている。一年に一度のとくべつなコンテンツを見届けた達成感がありつつも、今年の「M-1」をこれまで見てきた「M-1」の棚に並べてしまい置くには、まだ早いと言うか、整理がつかないというか・・・そんな感じだ。

ひとまず、今自分の中にある「M-1グランプリ2020」から感じたことを書き出してみるが、今大会はいつにも増して「物語」が多かったのではという思いがある。

前回大会の失態を挽回 幕開けから「物語」

決勝ファーストラウンドのトップバッターになったのは敗者復活枠のインディアンス。彼らは前回大会の決勝でネタが飛ぶというレベル5の失態を犯していた。その「忘れもの」を取りに行く切符を土壇場でつかみ、ネタを飛ばすことなく本来のパフォーマンスを見せ切るリベンジを果たした。トップバッターの不利な宿命もあり上位には食い込めなかったが、失態を挽回する彼らの「物語」が今年のM-1の幕開けとなった。

2番手は初出場の東京ホテイソン。新しいフォーマットを作り出す異才。だが、4分間で並べた「なぞとき」のプログラミングに凝りすぎたのではないか。わかりやすさとセンスのせめぎ合いなのか。チューニング次第で彼らの「物語」は大きく変わる気がする。

3番手はニューヨーク。前回大会でトップバッターを務め、松本人志の辛評に対して屋敷が「最悪や!」とキレ受けした場面が記憶に残っている。松本に対して怖気づくことのない返し。ニューヨークはあのワンシーンで番組制作者に信頼を広げ、今年1年の多忙ぶりにつなげたと言える。その御礼参りのような決勝での松本との再会が「物語」だった。

4番手は見取り図。ファイナリストは3年連続で、3年という年月は着実に彼らを成長させ、もはやM-1番長の風格だった。ハズさない強さ。よしもと所属で(あるレベルの芸人が)劇場に出続けることで身につく図太さが彼らの「物語」だろうか。その図太さが見取り図を初のファイナルラウンドに導いた。

5番手はおいでやすこが。今大会に屈指の「物語」を引っさげてきた。語られ尽くされているが、R-1から新ルールで除外宣告もされ、行き場を失ったピン芸人同士による結成2年目のにわかコンビだ。その新鮮さを覗き込んだ観客をド直球すぎる「大声ツッコミ」がなぎ倒し、スタジオの空気が一気に爆ぜた。爆ぜてしまった。

M-1決勝は誰もが最強のベストネタをかけてくる。芸歴を積んだ漫才師たちのそれは発想も戦略も技術も高い。4分を使っていかに右肩上がりの曲線を描くか、そういうテクニカルなボクサーたちのリングとも言える。おいでやすこがは、それでは勝負にならないと、スタミナを浪費するストレートをぶんぶん振り回した。

うっすらとあった閉塞感や緊張感を、このパンチが突き破ったかのように高得点が叩き出された。笑いつつも、「これがこんなにハマるとは・・・今年のM-1はどうなるんだろう?」という戸惑いもよぎった。

上沼恵美子との因縁「どうしても笑わせたい人がいる」

BLOGOS編集部

6番手はマヂカルラブリー。彼らのというか、野田クリスタルが背負ってきたのは3年前の「M-12017」の大舞台で、ファイナリストとしてのプライドを木っ端みじんにされるような酷評を上沼恵美子から授かり最下位に終わった因縁の「物語」だ。

野田は以後、そのトラウマをツカみに換えて攻め続け、「キングオブコント2018」決勝進出、「R-1ぐらんぷり2020」優勝、そして今回「M-1」決勝に返り咲いた。オープニングゾーンでマイクを振られた野田は「どうしても笑わせたい人がいる男です」と言い放って笑わせた。それにしてもなんと男前な台詞なのか。あなたを笑わせたい、あなたの笑顔が見たい、あなたに認められたい、あなたの愛が欲しい、M-1史上初のラブストーリーだ。

そしてマヂカルラブリーがいよいよ決戦の舞台へ。煽りVTRには3年前の因縁が盛り込まれ、上沼恵美子が憤怒している表情が笑いを起こす。「物語」の展開に期待が高まる。出囃子前のファンファーレ(映画『トイ・ストーリー2』~Zurg‘s Planet)をBGMに彼らがせり上がってくると、野田クリスタルは土下座直前の姿勢で頭(こうべ)を垂れて両ひざをついて現れた。

もちろん上沼恵美子に対する謝罪である。M-1史上に残る大ヅカミは鳴り響く出囃子の中で爆笑を起こし、おいでやすこがの残響が完全に吹き飛ぶ。決勝の舞台でこんなパフォーマンスを見せてくれるとは、その大胆さに撃ち抜かれた。

披露したネタは「高級フレンチ」。十八番ネタは上出来で暫定2位の高得点を獲得する。そしてMCの今田耕司に振られて上沼が喋り出す。「待て、3年前? 何にも覚えてない!」。マヂカルラブリーがコケる。大御所は何枚もうわ手でこれがまた爆笑を呼んだ。3年越しのラブストーリーは韓流ドラマのごとく記憶喪失というプロットが発動された。

BLOGOS編集部

そして改めて上沼が感想を述べた、「あのね、あんたらアホやろ」。芸人が芸人を評する極上の誉め言葉だ。この返答でマヂカルラブリーと上沼恵美子は相思相愛となり、彼らの「物語」は結実した。

7番手はオズワルド。定型を微かに歪めた間合いと独特のワードセンス。2年連続のファイナリストだ。オズワルドは9年連続でファイナリストとなった「笑い飯」のように、M-1決勝の常連になるような「長い物語」を辿るかも・・・そんな空想が浮かぶ。最終的には王者を戴冠するだろうが、無冠を背負いながら芸の質を深めていく期間が長く続きそうな・・・。

8番手はアキナ。結果を残さなければ何も無かったのと同じ・・・「無」に終わる。そんな残酷さがあるのもM-1だ。そういう思いに打ちひしがれた漫才師は過去に数え切れない。アキナもこの「無」に吸い込まれた。この「無」を「有」に換えるため、次なるM-1を目指すのも彼らの「物語」だ。

9番手は錦鯉。史上最年長という49歳と42歳のコンビ。長すぎる苦節の上に果たした決勝進出は彼らの知名度を大きく浸透させた。一夜にして大多数の人々が彼らの顔と名前とキャラを覚える。優勝しなくても訪れるM-1ドリームだ。忙しくなるだろう。

ラストの10番手はウエストランド。彼らも順位としては馬群に埋もれる結果だったが、ひとつの強烈なセンテンスを刻んだ。「お笑いは今まで何もいいことのなかった奴の復讐劇なんだよ!」――この飛沫というか血沫まみれのパワーワードが彼らを次のステージに連れていきそうだ。

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