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焦点:大幅賃金低下でベネズエラ公務員が大量離職、社会機能まひ


[カラカス 16日 ロイター] - 経済危機のベネズエラでは税務署から人が消え、学校では教師が足りず、公共料金は徴収されないままになっている。公務員の給与が雀の涙ほどに下がり、何十万人もの欠勤や退職が相次いでいるからだ。

公務員は、ほとんど食べていけない額の給与収入など諦めて職場を離れる。スタッフが減った電力会社や電話会社は、停電や技術障害を放置することもしばしば。公務員数十人への取材によると、カラカスの地下鉄公社は運行数を制限し、国税当局は民間企業への厳しい監視をやめた。

2007年に国有化された電話会社Cantvの従業員で労働組合員でもあるイゴール・リラさんによると、公務員に通貨・ボリバルで支払われる給与は、ドル換算で月額6ドル前後。彼女は「これで何ができるというの」と話し、多くの従業員が退職し、残った者は「副業」に携わっていると説明した。

給与を抑えれば国庫は助かるが、忠誠心がむしばまれ、国家の機能は弱り、最終的には失業と慢性的な公共サービスの欠落を招く。ベネズエラの人口は数年前に約3000万人に達したが、ここ数年で何百万人もが国外に脱出した。

首都・カラカスの公共交通の要であるはずの地下鉄公社は、多くの従業員が休暇を取ったきり戻らないという。約30年間勤務していたが最近退職した57歳の元従業員が明らかにした。地下鉄公社はかつて、左派のマドゥロ大統領がバス運転手として働き、労組指導者を務めた職場。現在の従業員給与は月額約10ドル相当だ。

3年におよぶハイパーインフレに、新型コロナウイルス感染拡大に対応した経済制限措置の影響が重なり、公務員の「無気力さ」はさらにひどくなった。

やはり07年に国営化されたカラカス電力公社のある管理職は、出勤は週1回だけで、副業としてタクシー運転手をしている。数回の乗車勤務で公社の月給と同じ4ドル相当が稼げる。

<国会議員選>

今月実施された国会議員選では、政府が公務員に圧力をかけマドゥロ氏の政党連合を支持させることが難しくなっている様子が示された。国会議員選は野党のボイコットにより打撃を受けたが、政権を支持する地域でも投票率は低く、その結果、与党統一社会党(PSUV)の全国得票も前回選挙より下がった。

南部の都市、プエルト・オルダスの国営アルミ精錬所で働くロムロ・ムノスさんは今回、過去数十年間で初めて投票を棄権した。給与は月額10ドル相当前後で、政府が「CLAP」という制度に基づき毎月配給する食品ボックスに頼って暮らしている。

「投票しなかったのは、新政権への移行を速めたかったからだ。新政権になれば労働者に恩恵が及び、CLAPのボックスで生き延びる必要はなくなる」と話す。

調査会社・アノバによると、現在280万人に減った公務員の平均月給は13ドル相当で、民間セクター労働者の半分に満たない。

アノバを含む調査会社3社の推計では、昨年は少なくとも50万人の公務員が退職した。

アノバの試算によると、公務員の25%以上が月額1ドル未満相当に下がった最低賃金の水準でやりくりしている。インフレ率は4087%で、今年は1ドル相当で1キロの米粉かトウモロコシ粉しか買えない時もあった。

<欠勤も放置>

インタビューによると、公務員の多くは退職しないまま働くのをやめているため、離職者数の把握は難しい。さらに国営機関は今年、欠勤者への処罰をやめた。コロナ禍で出勤人数やシフト数を減らしているにもかかわらず、多くの者はそれでも姿を現さず、それで罰せられることもない。

労組幹部によると、週当たり20時間以上働く公立学校の教師は、ほとんどいないという。最も給料が良いのは兵士で、月約17ドル相当が支給される。

20年間にわたって体育教師として働いてきたビクトル・カリロさんは、最低限の生活費を賄うため、近所のアパートを修繕する副業をせざるを得ない。先月は街頭デモに参加した。

13年に就任したマドゥロ大統領は、ベネズエラの経済的苦境は米国の制裁が原因と主張してきたが、給与水準の低さが問題であることも認識している。マドゥロ氏は最近、「傷が開き、化膿しているが、われわれが治していく」と述べた。

政府は自国通貨・ボリバルで支払われる賃金を何度も引き上げているが、インフレ率に追い付いていない。

ベネズエラ社会紛争観測機関によると、同国で今年開かれたデモは544件で、その大半が公務員によるものだった。

国税当局SENIATはチャベス前政権下で企業への抜き打ち検査を積極的に行ったが、今はオフィスが閑散としている。従業員2人によると、12年の月給は最大700ドル相当だった。だが、今や約13ドル相当に減り、従業員の半分は離職した。

政府は石油生産の減少と米国による原油輸出への制裁もあり、税収の確保に苦心している。

国外に脱出する公務員もいれば、ただ離職する者もいる。郵便公社を退職して販売価格1ドル相当のココナッツの菓子を作る仕事に転じた女性は「ある日オフィスで、チーズも何もかかっていない、ただのパスタを食べ、仕事を辞めた。あんな生活ではやっていけない」と語った。

(記者:Mayela Armas、Corina Pons)

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