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コロナで変わるベトナム「ワニ」の対中取引環境 - 荒神衣美

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ホーチミン市のテーマパークSuoi Tienにて(2011年)。 同テーマパークではおよそ2万5000匹のワニが飼育されており、来訪者にワニ釣りなどの観光サービスを提供する一方で、ワニ農家への稚ワニの販売も行っている。(筆者撮影)

 中国はベトナム農産品の主要な輸出先である。国境貿易を中心に拡大してきた対中農産品輸出は、ベトナムの農産品輸出総額の30%弱を占めている。新型コロナの感染拡大防止策として2020年1月末からベトナム・中国国境ゲートが閉鎖されたことは、ベトナム農産品輸出に少なからず打撃を与えた。青果品、水産品、コショウ、ゴムなど数々の品目で、2020年第1四半期の輸出額は前年同期と比べて大幅に減少した。

 本稿で取り上げるワニも、コロナ禍で対中輸出が顕著に減少したことにより、行き場を失った「生もの」のひとつである。ワニ養殖は、世界的にみると、装飾品向けの皮革の原料となる皮の需要が高まった1960年代後半ごろから、アメリカ南部やアフリカ南部で広まり、その後、養殖業者が増えるにつれて、皮だけでなく肉の販売も拡大していった。

とくに中国では、ワニ肉が抗がん作用を持つ薬用食品と考えられていることもあり、好んで食されてきたという。ベトナムにおけるワニ養殖は、資料の制約から断言はできないものの、農業発展一般の動向に鑑みると、2000年代に入って拡大してきたものと推察される。以下では、ベトナムのワニ生産・輸出概況とコロナ禍による農家の苦境について、現地新聞報道等に基づき概観してみたい。

 ベトナムにおけるワニ養殖は、おもに南部地域で行われている。主要産地のおおよその飼育規模は、ドンナイ省が10万匹、カマウ省が30万匹、ホーチミン市とバクリュウ省がそれぞれ20万匹ほどである。養殖農家の大半は小規模だといわれる。バクリュウ省のワニ養殖農家数が約1400戸という情報から、農家あたりの平均的な飼育規模は140匹程度とみなせる。

 ワニは、生きた個体(親ワニおよび稚ワニ)、皮革(塩漬けした皮および鞣革)、肉、骨(薬用など)の形で販売されている。ホーチミン市人民委員会が2016年に公布した「2016~2020年のワニおよび野生動物の管理発展プログラム承認にかかる1955号決定」によると、2011~2015年のホーチミン市における各種ワニ製品の年平均生産額は、親ワニ537億ドン(1円=約220ドン)、稚ワニ93億ドン、鞣革6億6000万ドン、塩漬け皮2億4000万ドン、肉2億4000万ドン、骨2億9000万ドンとなっている。ワニ製品の総生産額に占める未加工品(すなわち生きた個体)のシェアの大きさが見て取れる。

 ワニ製品は、国内市場への販売も行われているものの、多くは輸出されている。主たる輸出先は中国、ヨーロッパ(イタリアやフランス)、日本、韓国などである。ワシントン条約事務局(CITES)のデータベースに基づいてまとめた表1から、ヨーロッパ、日本、韓国は、主として皮革製品の輸出市場であることがわかる。

一方、中国へは皮革製品のみならず、生きた個体や肉についても多く輸出されており、総じて、中国はベトナムのワニの最大の輸出市場とみなせる。とくに、ワニ製品の生産額の主たる源泉となっている「生きた個体」については、中国への輸出量が圧倒的に大きい。いくつかの報道からは、中国人ブローカーがベトナムまでワニの買い付けに来ていること、また取引のほとんどが契約を伴わない少額取引であることがうかがえる。

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