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ものづくりの技術を守れ

 コロナ禍の中で久しぶりに明るいニュースが続いた。一つは小惑星探査機はやぶさ2のカプセルが無事地球に帰還したこと。もう一つは日本の伝統建築技術が、ユネスコ無形文化遺産に登録されたことである。はやぶさ2の快挙に対しては、JAXAの研究者に総理大臣顕彰が贈られた。

 はやぶさ2の完璧な成功(津田プロジェクトマネジャーは1000%)は、迷走しながらも奇跡的に帰還した1号機の反省に立って、用意周到に準備したこと。またこのプロジェクトに携わる研究者達が、冷静沈着に超難問のミッションをコントロール出来たことが要因だろう。

 しかしもう一つの成功の元は、日本のものづくりの技術の素晴らしさであったことも忘れてはならない。何万点とも言われる部品の一つひとつを、ほぼ手作りで寸分の狂いもなく製造したという。大量生産では対応できない細かい技術が光る。

 「下町ロケット」ほどのドラマ性はないが、職人技の結晶であることは間違いない。一方、ユネスコ無形文化遺産に登録決定した「伝統建築工匠の技~木造建造物を受け継ぐための伝統技術~」の中心を成す宮大工や左官技術も、ものづくりにおいては相通じるものがある。

 ところで小惑星探査というミッションが何の役に立つのか、数百億円という国費を投入する意味があるのかという、率直な意見も聞く。それに対して私は、「生命の成り立ちや、宇宙の成り立ちの解明に、大きなヒントを与えるものであり、科学の進歩や知的好奇心を満足させるに十分ではないか」と述べたり、「ここで開発された高性能のイオンエンジンや、3億キロも離れた機器をリモートでコントロールする技術は、必ず生活の便利さに繋がるはずだ」と述べて来た。

 また少し荒唐無稽だが、今回のミッションが小惑星衝突を回避する技術に応用されるかもしれない。6500万年前に恐竜が絶滅した原因が、直径10kmの小惑星衝突であったことは確からしい。将来このようなことが起こりうるとしたら、我々は衝突の危険性のある小惑星を見つけ出し、そこに探査機をぶつけて軌道を変えて、衝突を避けることも可能になる。まさに人類の生存を守る重要な手段になるはずだ。

 話しが少し逸れたが、ものづくりは昨今のデジタル化やIOT、AIなどに隠れているが、今後とも我が国の科学技術や産業界の発展ににとって、なお不可欠な存在であり日本の強みでもある。ものづくりが決して廃れる事のないよう、政治がきちんと見ていかなければならない。

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