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「なぜ水商売のお会計は想像より高いのか」ホストクラブ経営者が解説するカラクリ

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なぜキャバクラやホストクラブでは「ぼったくり」が多いと言われるのか。歌舞伎町でホストクラブやバーなどを経営する手塚マキ氏は、「『ぼったくり』と言われる店の大体は『ぼったくり防止条例』をクリアしている。それにもかかわらずぼったくりと言われるのは、料金システムが非常に複雑だからだ」という——。

※本稿は、手塚マキ『新宿・歌舞伎町』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

1万円札
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GA161076

ぼったくりかどうかのポイントは「事実」

「ぼったくりとか怖くて歌舞伎町行かないんですよね~」「ぼったくりってどうやったら遭わないんですかね~」歌舞伎町で働いていると言うと、よくこんなことを言われる。私は先ずは聞き返す。「ぼったくりって、どういう意味ですか?」と。

大体の方が、本人が被害に遭った訳ではなく、テレビなどで見たイメージを話すことが多い。「テレビとかでよくやっているじゃないですか。女の子にキャッチされて○○円って言われて付いて行ったら、カウンターに強面の人がいて、雰囲気が怖いので、すぐにチェックをしたら会計が10万円だった、とか」

あまりにも抽象的な主観でまとめられた話が多い。そして実際に被害に遭った人の証言も酔っぱらっているし、客観性を欠いた話が多いのだ。では、ぼったくりとは法的にはどういうものなのか?

東京都では2000年に「性風俗営業等に係る不当な勧誘、料金の取立て等及び性関連禁止営業への場所の提供の規制に関する条例」が施行された。いわゆる「ぼったくり防止条例」だ。「当該営業に係る料金について、実際のものよりも著しく低廉であると誤認させるような事項を告げ、又は表示すること。(第四条一項一号)」簡単に言うと、店側が最初に提示したサービスと金額は、実際と異なってはいけないということ。

強面の人がいようが、お通しがしょぼかろうが、思ったようなサービスを受けられなかろうが、それは基本的に主観であって、それだけでは「ぼったくり」には該当しない。なぜなら、ポイントは「事実」なのだから。

実は大体のプチぼったくり店は争点をクリアしている

2015年頃の歌舞伎町は、ぼったくり被害がものすごく多いと言われていた。当時、東京弁護士会が週末になると街を巡回し、客引きや店側、通行人などにぼったくりに気をつけるように呼び掛けをしたり、「客引きには付いて行くな」と、聞きやすい著名人の声を使った街頭アナウンスを1日中繰り返していた。

しかしぼったくりの被害が減ることはなく、毎日のようにぼったくりに遭ったという客とお店の人間が連れ立って歌舞伎町交番に列をなし、交番の前は人だかりができていた。

争点は、事前に料金説明をし、目に入るところに料金表があったかどうか? 客が了承の上での料金であったか? 「料金システムを説明した」という店側の主張と、「聞いていない」という客の主張の食い違いだ。警察官も、それが「ぼったくり」に当たるのかどうかという議論に付き合わなければならず、大変だったと思う。なぜなら、事実と主観が入り混じることで、綺麗に線引きができず、みなが第三者として警察官を求めていたからだ。

2000年に「ぼったくり防止条例」が施行されたが、大体のプチぼったくりと言われているお店は、問題視されている点をクリアしていることが多い。店側は揉めることに慣れているのだ。

飲食店全般において、料理や飲み物はその都度注文して最後にお会計をすることの方が多い。そして会計が思ったより高い・安いというのは誰でも経験があることだろう。しかし、キャバクラやホストクラブにおける、その「思ったより高い」と思わせる要因は実は明確だ。なぜなら意図的にそうしている側面があるからだ。

シャンペンタワー
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Y_Hirosan

「料金の計算方法を複雑にする」という戦略

先ずは客引き、いわゆるキャッチに「○○円で遊べます。でもそれ以外は別料金です」という説明をさせる。例えばこんな感じだ。「1時間3000円でサービス料も消費税も込みで焼酎は飲み放題。ただし、1時間以降は通常セット料金に自動延長で、女の子のドリンク代、場内指名料などは別料金になります。そのすべての料金にはサービス料、消費税が掛かるという形になりまーす」

テレビやぼったくられ経験者の言う「ぼったくり」の原因はこの「ただし、」以降の部分。そう「サービス料」だ。サービス料とは、飲食店やホテルなどサービスを提供する施設で、チップの代わりに対価に上乗せされる金銭のことを言う。外国で言う「チップ」と似たものだが、チップはサービスを受けた側が払うか払わないか、いくら払うのかを決められる。しかし、サービス料は合計金額に上乗せされ、請求されるので客側には決定権がないのである。

水商売の業界では、小計と呼ばれるメニュー表に記載されている金額に、サービス料と消費税を加算したものが最終的に客に請求する会計になる。例えば、ホストクラブでは35%~50%、キャバクラでは20%~35%がサービス料の相場と言われており、そこに消費税を加算するのだ。

それだけ聞くと、そんな問題か? 高級レストランでも同じだろうと思うかもしれない。しかし、もう少しいろんな要素があるのが夜のお店なのだ。テーブルチャージ・指名・場内指名などなど……。例えば、図表1のような料金体系の店に20時に入店するとしよう。

料金体系
出所=『新宿・歌舞伎町』

提示されている記載通りなのに高いと感じるカラクリ

先ずは必ずつくセット料金7000円、そしておつまみなどお通し代のテーブルチャージ2000円が掛かる。飲み物はビール(1000円)を頼み、席に着いてくれる女の子もビール(1000円)を飲みたいというので注文する。しばらくして女の子が入れ替わりカクテル(1000円)を頼み、このままこの席で飲みたいというので、隣に居続けることができる権利の場内指名(3000円)を入れてあげる。ビールの追加注文を2杯(2000円)、女の子もお代わりを1回(1000円)頼む。

ここで会計をする。時間は21時30分になっていた。掛かった総額は、セット料金:7000円+テーブルチャージ:2000円+延長30分:4000円+飲み物代:6000円+場内指名料:3000円=2万2000円。それにサービス料20%を掛けると2万6400円、消費税を掛けて2万9040円となる(図表2)。

料金体系
出所=『新宿・歌舞伎町』

提示されている記載通りの会計はこうなる。決してぼったくっている訳ではないが、正直わかりづらい。酔っぱらった勢いで気持ちが大きくなってしまっている状態で、注文するたびにメニューに記載の料金にサービス料を掛けた計算ができるだろうか。そんな細かい計算は慣れないとなかなかできない。

ホストクラブでも、この慣例はずっとあって、会計時に「こんなに高いとは思わなかった」という揉め事を幾度となく見てきた。それを防ぐために、ホストたちは、お客様がお酒をオーダーするときに、わざわざ店の内勤者に、「○○をオーダーしたら会計はいくらになりますか?」と聞きに来る。お客様にも店舗にとっても手間なのだ。

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